佐賀県伊万里市では「トンテントン」という秋祭りが行われる。伊万里供日(くんち)とも呼ばれるものだが、毎年10月22~24日に行われる伊万里神社の神幸祭のことである。この伊万里神社は昭和40年に香橘神社と戸渡島神社が合祀したもので、祭りでは荒神輿と団車(ダンジリ)の鉢合わせが有名である。団車の形状は、1メートル四方の櫓の上に青、黄、赤、白、黒の五色の布団屋根をのせ、中央に太鼓を据えるという典型的な布団太鼓である。祭りの名前の「トンテントン」は、団車の打ち込み鳴らす太鼓の音から来ているといわれる。
この太鼓の音については、愛媛県内の新居浜太鼓台の音が「ドンデンドン」と表記され、伊万里の「トンテントン」と類似している。また、山口県熊毛郡の上関町の布団太鼓は、太鼓の音から「ドンデン」という名称で知られている。各地の布団太鼓の音の表記が類似しているのは、布団太鼓の伝播と関係しているのかもしれない。西日本各地に分布する布団太鼓について、この太鼓の音の表記を丹念に調べてみると、伝播の諸相が見えてくるのではないか。
なお、伊万里のトンテントンの祭礼日程は、10月22日が宵宮で、神輿と団車が神社を出て市内を巡行し、2カ所で鉢合わせをする。23,24日は終日市内巡行。そして24日の夕方に伊万里川で神輿、団車が川落とし合戦をし、双方組み合ったまま川に落ちる。早く陸上に引き上げたほうの勝ちという。この行事が終了して宮入りとなる。
2000年09月22日