愛媛の伝承文化

大本敬久。民俗学・日本文化論。災害史・災害伝承。地域と文化、人間と社会。愛媛、四国を出発点に考えています。

被災地の文化活動の助成事業 芸術文化振興基金

2011年09月15日 | 災害の歴史・伝承
東日本大震災で被災した地域の文化復興、振興に活用できるかもしれないと思い紹介しておきます。


独立行政法人日本芸術文化振興会が設置している「芸術文化振興基金」(芸文基金)という助成事業があります。

これは、地域文化の振興を目的として行う活動や、文化団体が文化振興、普及を図る活動を支援するものです。

http://www.ntj.jac.go.jp/kikin.html


毎年11月上旬に募集締め切りですが、募集要項の発表も毎年10月上旬で、約1ヶ月で書類作成、提出しないといけません。

この助成手続きの説明会は東京、大阪、北九州で9月下旬から10月上旬に行われますが、この説明会に出席しないと応募できないというわけではありません。

そして、直接、日本芸術文化振興基金に申し込み書類を提出するのではなく、各券教育委員会経由で書類を出すことになります。



助成の内容は様々ですが、被災地の文化振興に活用できそうな項目は以下の通りです、

1 地域の文化の振興を目的として行う活動
 文化会館、美術館等の地域の文化施設において行う公演、展示その他の活動
 歴史的集落・町並み、文化的景観のセミナー、資料収集・作成、普及啓発による保存・活用活動
 民俗文化財の公開、広域的交流、復活・復元伝承、記録作成による保存・活用活動

2 文化に関する団体が行う、文化の振興・普及を図るための活動
 アマチュア等の文化団体が行う公演、展示その他の文化活動
 伝統工芸技術、文化財保存技術の保存・伝承・公開・記録作成、及び伝統工芸技術の復元による保存・活用活動


被災した文化財の修理、修繕に対しての直接助成というのは、対象ではありませんが、
保存、継承のための人材育成や公演などのイベント開催、記録作成活動というハードではなくソフト面に対しての助成事業という傾向があります。


これまでの助成実績も、ホームページに紹介されています、
http://www.ntj.jac.go.jp/kikin/results.html


なお、助成の対象者は、芸術家及び、芸術・文化に係る活動を、自ら行う団体で、文化庁の補助金や請負費等が支出される活動でないことが条件です。


そして助成額ですが、これは100パーセント補助事業ではありません。申請する事業の総予算のおおむね3分の1以内です。
たとえば予算150万の事業を応募する場合には、最高50万が助成金額として決定されます。


地域の文化振興のためにイベントを開催するケースや、
被災した民俗芸能の復興のために記録作成や新たな人材育成をするケース、
そして地元博物館、美術館などで展示を開催するケース。

こういったケースは、芸術文化振興基金の活用が可能かもしれません。
この類の助成事業は、事業の内容確定や見積金額の確定等、その準備には労力、時間がかかりますが、
応募要項の発表から提出まで約1ヶ月という短い期間となっています。

応募を検討する場合には、昨年度までの要項を参考にしながら、今から準備しておいた方がいいのかもしれない。
そう思ったので、来年度の応募要項が発表されていない段階ですが、芸文基金を紹介しておきます。


http://www.ntj.jac.go.jp/kikin.html












企画展「がんばろう福島 生きる力・美の力~福島の美術館から~」

2011年09月14日 | 災害の歴史・伝承
9月10日から、福島県立美術館(福島市)にて、

企画展「がんばろう福島 生きる力・美の力~福島の美術館から~」が始まっています。

http://www.art-museum.fks.ed.jp/menu_j.html


10月16日まで。

この企画展は、福島県内の6つの美術館のコレクションを持ち寄っての展覧会です。

参加している美術館は、以下の通りです。

いわき市立美術館(いわき市)
郡山市立美術館(郡山市)
喜多方市美術館(喜多方市)
CCGA現代グラフィックアートセンター(須賀川市)
諸橋近代美術館(北塩原村)
福島県立美術館(福島市)



福島県立美術館は、4月26日に震災被害に伴う臨時休館から再オープンしています。

8月上旬に行われた第35回全国高等学校総合文化祭の 美術・工芸部門の会場にもなり、

そして今回、「がんばろう福島」展の開催。

また、7月からは新たに美術館ブログを開設し、日々の活動が情報発信されています。

福島県立美術館ブログ
http://d.hatena.ne.jp/artmuseum_fukushima/




福島県立美術館
福島市森合字西養山1
http://www.art-museum.fks.ed.jp/menu_j.html



郡山市立美術館 ルドゥーテ展・歌川国芳展

2011年09月13日 | 災害の歴史・伝承
福島県郡山市の郡山市立美術館。

http://www.city.koriyama.fukushima.jp/bijyutukan/index.html


充実した美術展を数多く開催している美術館。

震災後、休館していましたが、7月16日から再オープンしています。



9月3日から企画展「花の画家 ルドゥーテ」展がはじまっています。

「花のラファエロ」、「バラの画家」と絶賛されたフランスの宮廷画家ルドゥーテの植物画の展覧会。10月23日まで。

11月12日からは、浮世絵師の歌川国芳展。国芳没後150年ということで開催。相馬内裏図など妖怪好きにはたまらない展示ですね。


郡山市美術館
福島県郡山市安原町字大谷地130-2
http://www.city.koriyama.fukushima.jp/bijyutukan/index.html







「にゃんよ」 南予観光振興ゆるキャラ

2011年09月12日 | 日々雑記
先月の五反田柱祭りに某テレビ局が取材に来ていましたが、

そのレポーターは「にゃんよ」でした。


しかし!

あの、いつも見慣れた着ぐるみのにゃんよではなく、

片手で持つ事のできるサイズのぬいぐるみの小にゃんよ。


聞くと、

着ぐるみの予定が合わないときや、

着ぐるみでは行けないところには、

この小にゃんよが出演するらしい。


確かに、柱祭り。着ぐるみが来てたら、

火のついた松明が飛んできても逃げ切れず、燃えてしまうかもしれない。

小にゃんよで正解。


この小にゃんよ。大量生産して、販売すれば買うのに・・・。

非売品とのことでした。ほしい・・・。

テレビ局さま。取材のお邪魔しました。


あと、

10月2日に、宇和島市に彦根のひこにゃんが来る予定なのだが、

世紀の猫キャラ対決。共演が実現するのだろうか?











みちのく怪談コンテスト2011 募集要項

2011年09月11日 | 日々雑記
第二回目の「みちのく怪談コンテスト」の募集要項が発表されました。その要項を抜粋転載します。

http://d.hatena.ne.jp/michikwai/


【募集要項】
〈みちのく〉をテーマとした未発表のオリジナル怪談作品(商業誌・商業サイトに発表済みの作品は不可)。本文800字以内(タイトルは含めず、行アケは1行で換算。スペース、句読点も1文字として数えます。また、文字化けを防ぐため半角文字は使用しないでください。1字でも字数オーバーすると審査対象外になりますのでお気をつけください)。創作・実話は問いません。

【ご投稿は下記アドレスまで】
michikwai@gmail.com
※本コンテストはメールのみの投稿受付となります。

募集開始 2011年9月11日(日)午後1時より
募集締切 2011年12月11日(日)午前10時30分まで
結果発表 2012年2月予定(詳細日時は決定次第、発表いたします)

選考委員 高橋克彦/赤坂憲雄/東雅夫
賞品 大賞1作と優秀賞2作には〈みちのく〉にちなんだ賞品を準備中です。
また、大賞・優秀賞をはじめ、優れた作品を収録した作品集を〈荒蝦夷〉より出版予定です。

【選考委員からのメッセージ】

ほんとうにおもしろいのはここからだ 高橋克彦(小説家)

〈みちのく怪談コンテスト〉第2回の開催である。このようなコンテストは、回を重ねるごとにおもしろくなってくる。第1回は、主催者にしても投稿者にしても、どのようなコンテストになるか、どのような結果になるか、わからないままに手探りで進まざるを得ない。そこがまた新しい試みのおもしろさではあるのだが、第1回を終えるとコンテストの道筋が、性格が見えるようになる。ほんとうにおもしろいのはここからなのだ。その意味で、今回はどのような作品が寄せられるのか、期待している。それだけ選考の楽しみも大きい。さらに、東日本大震災を経ての第2回である。もちろんコンテストそのものは大震災をテーマとして実施されるものではない。昨年と同様、広く「みちのく」をテーマとしたコンテストである。それにしても、今回の場合、この「みちのく」と東日本大震災のイメージは被ってしまうところが大きいかもしれない。大震災をテーマとした作品も寄せられることだろう。800字と短いなかで大震災の悲劇をどのように料理してくれるのか。また、東北人ばかりではない書き手のみなさんが、今回の大震災をどのように捉えたのかも興味深い。楽しみに待っている。


新たなる〈みちのく〉への道行きを 赤坂憲雄(学習院大学教授)

〈3・11〉を経て、みちのく/東北のイメージは大きく変わった。地震により、津波により、そして原発事故により、暴力的に変化を余儀なくされた。この変化はこれからも続くだろう。着地点は、いまはまだ見えない。悲劇と苦悩を刻印された果てに、みちのく/東北はどのようなイメージを抱え込むことになるのか。誰にもわかりはしない。みちのく/東北には、恐山信仰や出羽三山信仰など、現世と来世がきわどくせめぎあう宗教的民俗知がある。あるいは『遠野物語』的な、あの世とこの世のあわいを認める民俗知がある。「みちのく怪談」にこと寄せれば、怪異と交感する知恵とでもいえようか。ここにひとつの道があるのではないか。そんな予感を覚えている。もちろん、昨年もここで触れたように「みちのく」は単に地域の呼称ではない。「みちのく」は遍く在る。災厄の年の、それぞれの内なる「みちのく」が見たい。このコンテストが、新たなる「みちのく」への道行きとならんことを。


「感じたるまま」の怪談を 東雅夫(アンソロジスト・文芸評論家)

 震災から一夜明けた3月12日の夜半、荒蝦夷の土方正志代表から、私の携帯に着信があった。仙台の事務所も、スタッフの自宅も、惨憺たるありさま、寝泊まりする場所にも事欠く現状だという。あまりのことに、ただただ相槌を打つばかりの私に向かって、どこか吹っ切れたような口調で、土方氏は力強く宣言した。「こうなったらね、みちのく怪談コンテスト、意地でも今年、第2回をやりますよ。鎮魂のためにも、やらなくちゃ!」
 意気に感ずるとは、このことだ。一も二もなく全面的に賛同して、為し得るかぎりの協力を約束した。あれから、ちょうど半年を経て、いよいよ第2回の募集が始まる。
 2011年の現在、怪談という立脚点から〈みちのく〉について何かを考え、書き表わそうとするとき、それぞれの書き手が、それぞれの置かれた立場で、今回の震災と真摯に向き合うことは不可避だろう。とはいえ、だからといって、直接的に震災とか鎮魂に関わるモチーフに、こだわる必要はまったくない。今このときだからこそ視えてくる〈みちのく〉の〈怪談〉を「感じたるまま」(柳田國男『遠野物語』序文より)に書いて欲しいと切望する次第である。



みちのく怪談コンテストのホームページはこちらです。

http://d.hatena.ne.jp/michikwai/




台風12号 被災文化財や歴史資料の相談先 愛媛県内の場合

2011年09月10日 | 日々雑記
先に紹介した歴史資料ネットワーク(史料ネット)は、神戸に事務局があります。

愛媛県の場合は、「愛媛資料ネット」があります。正式には「芸予地震被災資料救出ネットワーク愛媛(愛媛資料ネット)」。

サイトはこちら。

愛媛での被災資料、文化財がありましたら、相談先は、こちらと、愛媛県歴史文化博物館(西予市)、愛媛県教育委員会文化財保護課、各市町教育委員会があります。

http://www.lit.kobe-u.ac.jp/~macchan/ehime_net.htm

今回の台風では、東予地方の被害が大きかったので、紹介しておきます。



文化財赤十字プロジェクト―東日本大震災被災文化財修復支援事業

2011年09月09日 | 災害の歴史・伝承
日本サムスンと文化財保護・芸術研究助成財団が東日本大震災で被災した文化財修復助成事業「平山郁夫・文化財赤十字プロジェクト―東日本大震災被災文化財修復支援事業」を立ち上げ。5年で寄付や財団からの拠出で1億円を目指し、約100件の文化財修復を予定とのこと。国境を越えて文化財を将来に伝えようとする故平山郁夫の「文化財赤十字構想」に基づき発足。

日本経済新聞WEB刊9月9日より。




「ほたる」の歴史

2011年09月06日 | 自然と文化
先月開催された卯之町ライトアップ行事「卯のほたる」。その打ち上げが8月26日に行われ、その際に「ほたる」の歴史について少し講話したので、内容を紹介しておきます。


1.古代からホタルと呼ばれていた
『日本書紀』二、神代に「螢火光神(ホタルヒノカヽヤクカミ)」とあり、古代史料に「螢」は出てくる。現在は「蛍」と表記するが、もとは「螢」である。火(実際は光)にまつわる虫であることから成り立った漢字である。この漢字を「ホタル」と呼んでいたことを示すのは平安時代の『和名類聚抄』十九である。「螢 (二行割註)胡丁反 一名熠燿 (二行割註)上一入反、和名保太流」とあり、同じ平安時代の『新撰字鏡』にも「●(虫へんに粦)(二行割註)力人反、螢、保太留」とあり、和名として「ホタル」は定着していた。


2.ほたるの語源
「ほたる」の語源には諸説ある。江戸時代中期の語源辞典である『日本釈名』には「螢 ほは火也、たるは垂也、垂は下へさがりたるヽ也」とあり、「火垂」が語源だとする説があり、『和句解』、『滑稽雑談所引和訓義解』、『重訂本草綱目啓蒙』、『大言海』がこれと同様の解釈である。しかし新井白石『東雅』には「ホは火也、タルは炤(テル)也」とあり、こちらは「火炤」説を採用している。『和訓栞』もこの解釈をとっている。また、『俚諺集覧』では「火照」説であり、『日本国語大辞典』では他にも諸説掲載されているが、これらが主説といえるだろう。上に紹介したようにほたるは古語であるため、これが正しい説と断定するのは難しい。


3.ゲンジボタル
ほたるには比較的大きいゲンジボタルと小さいヘイケボタルの2種類の名前が有名である。一般には源平合戦で源氏が勝ったので大きいのはゲンジボタル、負けた側の平家が小さいヘイケボタルとなったと思われているようである。しかし、柳田國男は、ゲンジボタルは「験師螢」の義であり、験師とは山伏、修験者であり、大形のほたるに一種の力を感じたものではないかと主張する。実際、ほたるの方言で「ヤマブシ」という地域が日本各地にある(出典要確認)。

ゲンジボタルの名前の初出は江戸時代末期の『虫譜図説』であるとされ、ここに「源氏螢(オオホタル)」、「平家螢(ヒメホタル)」と記されている。案外、ゲンジボタルの呼称は新しいもののようである。新しいがゆえに、源氏、平家の源平合戦や、類例で平家に敗れた源頼政の霊がほたるとなったという説もある。また、源氏物語の光源氏に由来するという話もあるが、言葉自体が新しいので、後(比較的新しい時代)に語られるようになった説明ではないだろうか。


4.唱歌「蛍の光」
蛍に関する歌といえば「蛍の光」を思い浮かべてしまう。「蛍の光、窓の雪・・・・」まさに蛍雪の功である。蛍雪の功は中国の晋の時代(3~4世紀)の故事で、夏の夜にほたるを何十匹も絹の袋に入れて、冬は窓辺に積もった雪、その明かりで勉学に励み高級官吏となったという故事である。これが明治14年に尋常小学校の唱歌の歌詞として採用されている。曲はもとはスコットランドの民謡であった。ロバート=バーンズが1794年に発表した「オールドラングサイン」の歌詞のものが英米で送別歌として普及し、明治初期に日本に入ってきた。当初は題名は「蛍の光」ではなく「蛍」であった。この作詞者は稲垣千頴(ちかい)、作曲者は不詳である。

「蛍の光、窓の雪、書読む月日、重ねつつ、何時しか年も、すぎの戸を、開けてぞ今朝は、別れ行く」


林原美術館

2011年09月04日 | 日々雑記
今日これから岡山経由で姫路に所用があって、途中に岡山駅を通るわけだが、岡山市の林原美術館がやはり気になる。会社更生手続き中の「林原」が林原美術館を運営しており、その所蔵品が散逸すると懸念されているからである。再建を支援するスポンサー企業は決まったとのことだが、美術館の存続についてはまだ紆余曲折がありそうだ。

最近の新聞記事では、次のように出ている。

msn産経ニュース
http://sankei.jp.msn.com/economy/news/110804/biz11080423230037-n2.htm

「林原が力を入れてきた美術館などのメセナ(文化支援活動)については『社会的な意義は理解できるが、本業とあまり関係ないことを続ける文化はない』として、将来の売却を念頭に置いている。」


なお、林原美術館のホームページはこちらです。
http://www.hayashibara-museumofart.jp/



文化遺産復興助成事業 日本ナショナルトラスト

2011年09月03日 | 災害の歴史・伝承
日本ナショナルトラストが、

東日本大震災で被災した文化遺産の修理、復旧の助成事業を

「東日本大震災 自然・文化遺産復興支援プロジェクト」と銘打って

5月から募金を集めていましたが、10月から助成事業が本格的に開始されます。



助成対象となるのは、



有形文化財(建築物)の修理

記念物(遺跡、名勝地、天然記念物)の復旧

被災により継承が困難となった民俗文化財や無形文化財の修理・復旧



ただし、国の補助対象となるものは対象外です。

10月から支援助成事業を公募するとのことです。


日本ナショナルトラストのホームページは、こちらです。

http://www.national-trust.or.jp/