ユダヤ教やイスラム教の宗教的儀礼とされ、男児の性器の包皮の一部を切り取る割礼をめぐり、ドイツが揺れている。昨年12月、連邦議会が宗教上の 理由で行う割礼を認める法案を可決した。法案化のきっかけはイスラム教徒の男児に対する手術ミスだった。司法が傷害罪との判断を下したのに対し、信教の自 由を侵すと両教徒が猛反発。両教徒を含め移民が増えるドイツの事情もあって、国内世論は真っ二つに分かれた。線引きの難しい2つの「権利」をめぐっては、 日本でも同様の問題が起きている。
(勝田康三)
「反目」する教徒による共闘
“事件”は2010年11月、ドイツ西部のケルンで起きた。イスラム教徒の両親を持つ当時4歳の男児が割礼を受けた際に手術ミスで大量出血し、病院に搬送された。
男児は助かったものの、地元検察は割礼を行ったイスラム教徒の医師を傷害罪で起訴した。裁判所は12年5月、医師を無罪としたが、「子供の体の健全性は親の権利よりも優先される」と指摘。宗教上の割礼でも傷害罪と見なされるとの判断を下した。
新イスラム事典(平凡社)によると、ユダヤ教では生後8日目、イスラム教は生後1週間から12歳ぐらいまでの男児が割礼を受けるとされる。この宗教的儀礼を禁止した判決に、イスラム教徒はもとより、ユダヤ教徒も猛反発した。
同年9月にはベルリンで、両教徒がそろって信教の自由を守るよう合同デモを行った。ユダヤ人とイスラム教を信仰するアラブ人といえば、激しく反目し合う間 柄。両教徒による合同デモは異例だが、宗教的価値観が脅かされるとの共通の「危機感」が、双方に日頃の宗教的対立の壁さえ乗り越えさせた。
両教徒による信教の自由を求める運動が広がる一方で、法的リスクを理由に手術を拒否する医師が急増。市民団体からは「子供も自分の体を守る権利がある」との主張もあがった。
専門技術を持つ聖職者?
ドイツ国内で信教の自由と医療行為をめぐる激しい論争は、定住のユダヤ人のほか、イスラム圏の諸国からの移民が増えているという国内事情も加わって、政府首脳に動揺を与えた。
「(判決は)ドイツを世界の笑い物にする危険にさらした。ユダヤ人らが宗教的儀式ができない世界で唯一の国になりたくない」
ロイター通信によると、メルケル独首相は同年7月、そう激しく非難したうえで、宗教的理由でも割礼が行えるよう法整備を進める考えを示した。
その結果、法案は昨年12月12日、医師や専門技術を持つ聖職者らが可能な限り苦痛を与えないことを条件として、連邦議会で可決された。
高い専門知識と技術を持ち、国家試験を通った医師だけが、人体にメスを入れられる-。これが当然の日本人からすれば「専門技術を持つ聖職者ら」に手術を認めるというのは驚く内容に違いない
日本で同様の手術を行う場合、少なくともユダヤ教徒かイスラム教徒でない限り、医学的措置としか考えられない。仮に「専門技術を持つ聖職者ら」が手術を行えば、確実に傷害罪が適用される。
日本でも起きる「輸血拒否」
日本でも宗教的理由により、患者が輸血を拒否するケースは起きている。輸血を拒否した患者に輸血し、執刀医らが家族から不法行為があったとして提訴された例もある。
後者の裁判では、最高裁が平成12年2月、医師らが輸血を必要とする事態が起こる可能性について患者に説明していなかった点をあげ、患者が意思決 定する権利を奪ったと指摘。「輸血を拒否すると明確な意思決定をする権利は人格権の一内容として尊重されなければならない」として、医師らの違法行為を認 める判断を示した。
こうした判例を受けて、宗教的な輸血を拒否する患者に対応したマニュアルや診療指針を策定した病院も出ている。
大阪府三島救命救急センター(高槻市)では21年12月、マニュアルを整備した。実際に無輸血治療を求める患者が現れたためだ。マニュアルでは「免責証明 書」の有無で無輸血治療を行うかを判断、家族の中に信者でない人がいた場合に判断が分かれるケースも想定し、緊急時にも対応できるようにしたという。
同センターによると、マニュアルの策定前後に宗教的理由で輸血治療を拒否した患者は計5人ほどだが、幸いにも輸血をせずに治療が行えたため、マニュアルの活用までに至っていない。
日本でのケースを、ドイツの法整備の例と一緒にはできない。ただ、信教の自由と医療行為の線引きをめぐる問題に関し、医者にかかる“負担”が増えているのも確かだ。同センターの担当者は複雑な胸の内をこう打ち明けた。
「医療に携わる人間として、救急搬送された患者を輸血せずに死亡させれば、本当に最善を施せたかと一生問い続けることになることだけは間違いない」
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