【復活可能性都市へ】(4)小学校再開、島に元気
人口約90人の離島に、希望の波が寄せている。
奄美群島南部の小さな島の一つ、請島(うけじま)(鹿児島県瀬戸内町)。島唯一の小学校の池地(いけじ)小は昨春、児童2人がそれぞれの家族と移住して3年ぶりに再開し、子どもたちの声が校舎に響く。
「島の伝統は何ですか」「豊年祭や八月踊りです」。3年生の野崎凰(こう)(9)は、担任の脇園康人(25)と2人だけの授業で、1年生の三ノ京楓花(さんのきょうふうか)(6)と一緒に体験した島の風習を、大きな声で答えた。
学校再開は、島民を元気づけた。希少な花「ウケユリ」の保護活動をしている勝哲弘(75)は、学校行事の観察会で2人を案内した。島を挙げた運動会で披露する八月踊りを指導した福原栄子(78)は、今年の練習を指折り数えて待つ。
作品を載せた「学校だより」は島の全62戸に配られた。誰もがわが子のように喜んだ。
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畜産や農業が中心の請島には小さな食料品店はあるが、コンビニも駐在所も病院もない。奄美大島から1時間かかる定期便は1日1便。自営業以外に働き口は少なく、子どもたちは池地小併設の池地中(2014年から休校)を卒業すると、ほとんどが島を離れる。
楓花の父、三ノ京浩人(ひろひと)(53)も島で生まれ、15歳で島を出た。時折、実家に戻るたびに空き家が増えていくのが、たまらなく寂しかった。「島を守りたい」との思いが募り、奄美大島から移住した。今は建設業アルバイト、妻順子(42)は池地小用務員として働く。
母が請島出身の野崎真奈美(37)は、凰と長男の竜翔(りゅうしょう)(5)とともに同じ奄美大島から移住。現在は島の郵便局に勤めている。
島唯一の診療所に常駐する看護師の請畑美由紀(40)は、健康チェックで巡回する高齢者から、運動会など学校の話題をよく聞くようになった。「子どもたちの声や懸命に頑張る姿が、住民の力になっている」
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三ノ京は帰郷後、島の区長になった。お年寄りたちが米やガソリンを奄美大島の店に電話注文し、船で港に届くと、一輪車や、荷台を積んだ耕運機で自宅まで運んでいる姿が気になった。東京での会社勤めから請島に昨春帰郷した益岡一富(64)らと高齢者の暮らしを支える「請島うけゆり会」をつくり、荷物を車で運び、島内の送迎なども無償で始めた。お年寄りの孤立を防ごうと、海岸や墓の清掃、花植えを集落総出で行う日も設けた。
益岡は、通学路沿いの実家が代々営んできた商店を再開させた。夕暮れ時には、店を吹き抜ける浜風に住民たちの笑い声が重なる。
学校再開は、集落に少しずつ「化学反応」を起こしている。
三ノ京は、請島のホームページを作成し、澄んだ海や池地小の活動記録といった島の魅力を発信しようと計画を練る。「うもーれ請島(島の方言で、いらっしゃいの意味)」。タイトルは浮かんでいる。 =敬称略
=2018/01/11付 西日本新聞朝刊=
13歳漁師、島守る 入学、中学校5年ぶり復活 長崎・江島の柏木さん
長崎県五島灘に浮かぶ江島(えのしま)(同県西海市)で5年間休校状態だった中学校に7日、1人の新入生が入学した。2010年に和歌山県から移住し漁師になった柏木世次(せいじ)さん(52)の長男聖矢さん(13)。既に父と漁に出る一人の漁師でもある。「この島で一人前になってずっと生きていきたい」。小さな島に暮らすことを決意し、どんな荒波も乗り越えていくつもりだ。
江戸時代から捕鯨基地として栄えた江島は、西海市中心部から30キロの五島灘に浮かぶ離島。昭和30年代には約1300人が暮らしたが現在はその1割にまで減った。唯一の学校の江島小中学校は2010年度に中学生1人が卒業した後、柏木さん方の3兄弟が小学校に通うだけだった。
聖矢さんは小学4年から父の漁を手伝う。初めは船の上で立つのがやっと。最近は船酔いもしなくなり、父と沖に出て1日で伊勢エビ30キロを水揚げしたこともある。入学式前日の6日、漁港近くの作業小屋で破れた網を器用に補修しながら「まだまだですねえ」と照れ笑いした。
学校には同級生も先輩もいないが、寂しさはないという。島ぐるみで大人たちが家族のように関わってくれるからだ。7日の入学式には島民ら24人が駆け付けた。柳堂圭章校長が「島の皆さんが望んでいた入学。大きく成長しましょう」と語り掛けると、聖矢さんは「勉強に部活動、漁の仕事を頑張る。将来は父を超えるすごい漁師になりたい」と夢を語った。
入学式では言わなかったが、聖矢さんにはもう一つの夢がある。それは「大将になる」こと。過疎化が進む島を自分の力で引っ張りたい、との思いが次第に強くなってきた。「周りに同世代がいない分、僕が地域の先頭に立たないといけませんから」。家族や島民に見守られ、13歳の挑戦が始まった。
=2016/04/08付 西日本新聞朝刊=
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