スルガ銀、創業家経営120年に幕 攻め過ぎの源流は?
「中興の祖」不適切融資で引責辞任へ
- 2018/8/28 6:48
- 日本経済新聞 電子版
スルガ銀行の岡野光喜会長が辞任する意向を固めたことが27日、明らかになった。岡野家は1895年のスルガ銀設立以来、一貫して経営トップを輩出してきた。岡野会長は1985年に頭取に就任し、個人向け融資を主軸にしたユニークな戦略を主導した「中興の祖」。だが、投資用不動産への不適切な融資の責任を取り、120年あまり続いた創業家経営に幕をおろす。重しを失うスルガ銀はどこに向かうか。
静岡県沼津市。沼津駅から北に車で20分ほど走ると、沼津青野支店がみえてくる。スルガ銀の創業の地。近隣の岡野公園には、創業者・岡野喜太郎氏の像が建っている。1895年発足当時の資本金は1万円。規模は全国で最も小さかった。創業者の岡野喜太郎氏は1965年に101歳で逝去するまで経営に関わり、62年間頭取を務めた。スルガ銀のトップは世襲が慣行になった。
喜太郎氏は関東大震災時に政府の支払猶予令に従わずに預金を無制限で払い出したり、戦後に財政危機に陥った神奈川県に融資したり、積極的にリスクを取った経営に辣腕を振るった。第2次大戦中には「一県一行主義」に基づき、大蔵省が静岡銀行との合併を迫った。当時、国の方針は絶対だったのに、喜太郎氏は「勝手に決めるな」と拒絶した。
時代はくだった1985年、そんな遺伝子を引き継いだ岡野光喜氏が頭取に就任した。創業者の死去から20年。当時は静岡銀行と横浜銀行という地銀の雄に東西を挟まれ、厳しい競争に苦しんでいた。岡野氏は個人金融取引を軸にしたウェルズ・ファーゴといった米銀行の隆盛を見てきた。米国の銀行をモデルに経営改革を重ね、2000年前後にようやく花が開いた。
勤務年数といった住宅ローンの審査基準を緩めた「スーパーホームローンワイド」を手始めに、当時は住宅ローンの融資対象とはされなかった単身の女性や自営業者らに融資する商品が大ヒットした。住宅ローンの残高は2003年3月期に1兆円を突破。01年3月期と比べると3000億円弱も増やした。「地銀界の異端児」――。岡野会長はこう呼ばれ、社内で絶大な発言力を握った。創業家の威光は絶対になった。
ところが、創業家に主導された先進的な経営は次第に色あせ、徐々に変質していく。「民業圧迫」の象徴として地銀業界が慎重だった、ゆうちょ銀行との提携に踏み切ったが、実績は思うように伸びなかった。スルガ銀が得意とした柔軟な融資条件の住宅ローンも他行に追い付かれてきた。00年代後半には、ワンルームマンション投資への融資実績を伸ばしていった。
この10年は1件あたり1億円前後、利率は3~4%という収益への貢献が大きい不動産投資ローンに傾斜し、数量を追い求めた。「安定した収入の会社員であれば、年収の20~30倍は簡単に融資してくれた」。都内の不動産営業マンはこう証言した。シェアハウスにとどまらず、アパートやマンションといった投資用不動産への融資全般で、改ざんされた審査資料などに基づいた不適切な融資が横行した。
15年当時、岡野会長の実弟で番頭役の副社長だった岡野喜之助氏は急拡大していたシェアハウスへの融資を止めるよう指示したが止められなかった。その直後の16年、岡野副社長は急逝した。営業マンらは供給過剰による低い入居率や相場からかけ離れた高い売買価格の実態を知り得たのに融資を重ねた。経営陣は17年になるまで異常に気付かなかったという。増収増益をけん引する営業部門が強い力を持ったスルガ銀では、ガバナンス(企業統治)が次第に失われ、営業マンの暴走を抑えられなかった。岡野会長の退任は、創業家経営の光と闇を示している。
スルガ銀行の芋づる式不祥事、「不正融資ではない」から「不適切融資1兆円」に拡大
スルガ銀行の伝説
— たなかたかゆき(パピコ) (@papico_chupa) 2018年8月15日
・通帳コピー偽装等を気付きつつシェアハウス融資で不良債権の山を築く
・暴力団関係者に融資していた
・次々とダミー会社を使いシェアハウス関連融資を続行
・顧客の定期預金を勝手に解約して浮貸し
・東京スター銀行を欺いて融資金を全て焦げ付かせる ←New!
シェアハウス融資にからむスルガ銀の不適切融資が1兆円規模に上ることが分かりました。融資総額3兆円強の3分の1に相当する金額です。
— 日本経済新聞 電子版 (@nikkei) 2018年8月21日
https://t.co/tbgVsSi7mL
かぼちゃの馬車オーナーが抗議活動、スルガ銀行に無理筋の白紙撤回を要求
リーマン大家は自分は不動産投資だと勘違いしていたが、実態は「消費者金融(サラ金)」としてスルガ銀行は貸し出していた。不動産担保付きの消費者金融と考えれば金利も納得。
— yumi-yumi (@yumiyumiboon) 2018年8月17日
このビジネスモデル自体はそれなりにありだが、今回は暴走を止められなかった。自業自得