真明座の長岡歴博公演「嫗山姥二段目」の後半「時行切腹の場」で八重桐を操った川野名座長は、まさに鬼人の如しでした。文楽では、「ガブ」という仕掛けで、頭の表情を瞬時に変えて見せますが、文弥人形にはそんな仕掛けはありません。八重桐の頭を瞬時に山姥に挿げ替えるその迫力に、場内は騒然となりました。ほんとに凄い。まさに金時が宿ったという感じです。この感じは、文弥人形以外では出ないと思います。
切腹した夫坂田時行の魂が宿った八重桐
『三十二相の容顔(かんばせ)も、怒れる眼、もの凄く』
『島田解けて、逆様に』
『たちまち、夜叉の鬼瓦』
現在の頭(八重桐)を宙に放り捨て、瞬時に山姥の頭に入れ替えました。これは、言う程簡単な事ではありません。古浄瑠璃の絡繰りというのは、この様に単純かつ明快であるべきであろうというお手本みたいな舞台でした。真明座の皆さんご苦労様でした。有り難う御座いました。