おわら風の盆の続編である。
胡弓の物悲しい調べに乗せて歌われるのは、
次のような歌詞である。
一読して驚いた、なんと切々たる恋の歌ではないか。
以前
{哀愁を帯びたこの踊りは、「陰」の踊りである、
ナイーブでデリケートな感じが何ともいえない哀愁がある。
きっちりとした上品な踊りである。
胡弓の切ない響きが、一層上品さを盛り上げている。}
と書いたが、熱い熱い恋歌とは、思いもよらなかった。
日本人固有の「静けさ・冷静さ」の中にある「激しさ」を見たような気がする。
それでは、踊用の歌詞の一部をご紹介する。
(長囃子・前囃子)
越中で立山 加賀では白山
駿河の富士山 三国一だよ
(囃子)
唄われよ わしゃ囃す
(中略)
(長囃子)
三千世界の 松の木ァ 枯れても
あんたと添わなきゃ 娑婆に出た甲斐がない
(囃子)
唄われよ わしゃ囃す
(歌)
竹になりたや 茶の湯座敷の
ひしゃくの柄の竹に いとし殿御に持たれて
汲まれて 一口 オワラ 呑まれたや
(囃子)
春風吹こうが 秋風吹こうが
おわらの恋風 身についてならない
(歌)
(春)
ゆらぐ釣橋 手に手をとりて
渡る井田川 オワラ 春の風
(夏)
富山あたりか あの灯火(ともしび)は
飛んで行きたや オワラ 灯(ひ)とり虫
(長囃子)
見送りましょうか 峠の茶屋まで
人目がなければ あなたのへやまで
(後略)