女ごころの機微を、阿久 悠は、巧みに描き、それに小林亜星は、ポップ調のメロディーをつけ、
都はるみが、これまでと違って「うなり」少なく、情緒たっぷりに唄った曲であると言えば、
第18回レコード大賞受賞曲(1975)、「北の宿から」である。
彼女が生涯の師匠と呼ぶのは、作曲家 市川昭介氏である。
この曲の作曲は、師匠市川氏ではなく、小林亜星氏である。
あるとき、TVでこの曲を歌ったあと、彼女のところに突然師匠の市川氏から電話があった。
アナタ カワリハナイデス「かー」の「か」の音がよくないというのである。
もっと情緒のある「かーー」に、「言葉の置き方」を考えて歌うように、延々と電話指導があった。
師匠も師匠なら、弟子も弟子である、他の作曲家の歌の指導を、別の師匠がしたのであった。
単なる師弟関係を超えた、都はるみの歌にかけた市川氏の姿が見えたような気がした。
都はるみ自らが語るこの話を、NHKのTVで見て、なんとプロの仕事は奥深いことかと感心した。
そんわけで急に、「都はるみ」に興味を持った。
丁度、四月に岡山公演があり、見物に出かけた。
以前見た川中美幸公演では、男性ファンが非常に少なかったが、これに比べると、男性が一段と多いのが特徴的だった。
ついつい懸命に見てしまったので、
前述の「かーー」の部分のことは、すっかり忘れてしまって聞き漏らしてしまった。