暑い夏に自然とシルクロードが浮かんだので、陳舜臣著「シルクロード旅ノート」徳間書店(1991年)を紐解いてみた。シルクロードといえば駱駝が連想されるのだが、この本の記述ではさらに小生の発想より一段と飛躍した一文があった。
「駝峯熊掌(だほうゆうしょう)」とは、駱駝のこぶと熊のてのひらが、古来より贅沢なご馳走とされてきた。この「駝峯」については、杜甫の「麗人行」という詩に
「・・・むらさきの駱駝のこぶがみどりの釜からとり出され、水晶の大皿に白身の魚が盛り付けられる・・・」という情景を詠んでいる。
楊貴妃一門の奢侈をテーマにしたものだが、安禄山の大乱のひとつの引き金になったものに駱駝のこぶがあったとは、大変な驚きだった。
次のような[満足]と[幸福感]とは異なるという研究結果が古来より判っておれば、贅沢に起因する不幸や悪政や紛争・戦争等がいくらかでも防げたはずだったがと残念に思ったのであった。
2010年9月7日 読売新聞に、「高収入で満足は得られるが、幸せになれるとは限らない(年収630万円で幸福感は頭打ち)…米学者ら発表 」という記事があった。
記事詳細;
【ワシントン=山田哲朗】収入が上がるにつれ生活の満足度は上がるものの、必ずしも幸福感が増すとは限らないとする調査結果をダニエル・カーネマン米プリンストン大教授らがまとめ、米科学アカデミー紀要で7日発表する。「幸福は金で買えない」という通説を裏づける報告と言えそうだ。 カーネマン教授は、米国人45万人以上を対象に調査会社が実施した電話調査のデータを基に、年収と幸福の関係を統計的に分析した。暮らしに対する満足度を10段階で自己評価してもらう「生活評価」の数値は、年収が増えるにつれ一貫して上昇した。 しかし、「昨日笑ったか」「昨日悩んだか」などの質問で測る「感情的幸福」の度合いは、年収7万5000ドル(約630万円)前後で飽和、頭打ちになっていた。教授は「高収入で満足は得られるが、幸せになれるとは限らない」と結論している。