令和3年度
新市民会館「みんなの劇場」整備
課題解決型実践事業
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22世紀を見る君たちへ
平田オリザ氏講演会
これからを生きるための
文化芸術と劇場のあり方とは?
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講師:平田オリザ氏
日時:2022 年 2月 18日(金)
19:00〜20:45
会場:ひまわりセンター4階
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昨年に続き、今年も丸亀市で
平田オリザさんの講演会。
新しい市民会館に向けて、
何を大切にしていけばよいのか
改めて考える場になった。
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●若者の人口減少
出会いの場が減ったからでは?
雇用があれば戻ってくるのか?
それだけでは戻ってこない。
広い意味での文化の
重要性を考える。
戻ってこない理由は何か?
Uターン・Jターンを
阻むものは何か?
雇用、教育、医療、文化
若者が自治体を選ぶとき
教育や文化が重要と考えられている。
●社会における芸術の役割
・芸術そのものの役割
・コミュニティ形成や維持のための役割
・社会に役立つ役割
(教育、観光、経済、福祉、医療)
例えば…海外などでは予防医療にも
アートで人との繋がりを作る
●新しい広場が必要
経済活動の中ではムダな存在と
見られがちなものの中にも
必要なものがあった。
郊外型のショッピングモール、
安くて良いものが手に入る
ネット通販など、
利便性や経済的なことを
重視してきた結果
社会にとって必要なものを失った。
昔の床屋や銭湯、駄菓子屋のような
コミュニケーションの場がなくなり
若者の居場所が固定化、
閉塞化している。
成功の筋道は、
地方のほうが限られている。
ドロップアウトや不登校
などの問題。
選択肢の少ない地方の方が
ひきこもり率が上がる傾向にある。
失ったものの代わりに
補完するものが必要。
新しいセーフティネットとしての
新しい広場のような場所。
●大学入試改革にも影響
大学入試も変わってきている。
従来の学力試験
知識の量を量る試験だけでなく
学ぶ仲間を選ぶ試験へ。
これまでは
知識が土台として必要で、
そこから上へとピラミッド型に
積み上げるようなものと
考えられていた?
③思考力・判断力・表現力
②主体性・多様性・協働性
①基礎的・基本的な知識・技能
でも実は反対ではないか?
③基礎的・基本的な知識・技能
②思考力・判断力・表現力
①主体性・多様性・協働性
主体性・多様性・協働性が
土台になければ、という考え。
新しい学びの共同体は
「何を学ぶか?」より
「誰と学ぶか?」へ
多様な人の集まりでないと
多様な発想やディスカッションが
できない。
そういうことから
大学も多様な人を求めている。
学力を始め、性別、人種、
家庭環境…
多様な人たちでの話し合いが大事。
では
大学入試改革はどうなる?
受験準備のできない問題を
作るのが難しい。
↓
受験指導・進路指導ができなくなる。
↓
一、二年の受験勉強では対応できない入試。
↓
身体的文化資本が問われる
●身体的文化資本とは?
「文化資本」という概念は
フランスの社会学者
ピエール・ブルデュー(※1)によって提唱された。
その中の、
身体化された形態の文化資本は、 例えば
センス、マナー、コミュケーション能力や美的感覚など。
身体的文化資本は
本物に触れたり
生で見たりすることで
二十歳までに体で覚える。
そうなると
体験できるかどうかという問題が。
経済格差、教育格差以上に
発見しにくいのが
文化の地域間格差。
これが広がれば
大学入試にも
影響してくるのではないか。
………………
多様性を確保しなければ
↓
身体的文化資本が大事になる
↓
地方が不利
行政の力が必要になる
○成功例:奈義町
自然とアートのまちづくり
出生率2.81達成
教育改革
・きめ細かい子育て支援と教育
・子ども歌舞伎
・現代美術館、図書館
人口1万人以下の自治体は
小回りがきくという利点もある。
…………
●一つのことをやり遂げた経験が
学力を後押しする
・「SES」
子どもの学力と
家庭の社会経済的背景(SES)は
密接に結びついている
という研究がある。
(SES…家庭の所得や親の学力などに関係する)
SESが高いほど
学力が高い傾向がある。
・「非認知スキル」
学力テスト等で計れる認知できる
能力のように数値化できない。
知識や思考力を獲得するために
必要だと思われる能力全般。
集中力、忍耐心、やり遂げる力、
協調性など
広範囲にわたる。
SESが高くても低くても
非認知スキルが高ければ
学力を一定程度押し上げる
可能性があるという研究がある。
非認知スキル
例えばこんな力………
異なる意見に折り合いつけて
まとめることができる。
ほかの人と協力して何かをやりとげて嬉しかったことがある。 など
↓
それが、
学ぶ力や学ぶ意欲
自尊感情などに繋がるのではないか。
勉強しなさい!は逆効果?
やりたくない気持ちでは進まない。
知的好奇心を刺激することが良いらしい。
面白い、美しい、悲しい…など
自分の心が動くことが
学ぶ意欲に繋がる。
そのようなことが
教育統計で分かってきたこと。
学力は学ぶ力である。
自分で学べる力。
幼稚園の頃から進めていけば
教育格差はできにくくなるかもしれない。
一番の土台、
主体性を大事にしなければ。
遊びの中で試行錯誤したり
人間関係を築いたり。
これは学校など
対面でしかできないもの。
そのために芸術教育を。
最終的に
基礎学力に繋がっていく。
●新しい広場をつくる
強固な共同体から
緩やかなネットワーク社会へ
自分の興味のあるものを通して
繋がれるように。
孤立は様々な問題を生む。
社会のリスクとコストを
減らすためにも
孤立させない、
繋がりをつくることが大事。
それが社会全体のためにもなる。
そのためにも
新しい広場をつくることが必要。
●文化による社会包摂
○成功例:八戸市の「hacchi」
小さな劇場と
ワークショップなどが出来る
小さな部屋の集合体
文化施設か商店街に貢献
経済の原理だけでは
大型商業施設に敵わない
楽しいものに誘客
来る理由があれば人は来る
小回りがきく
多様なものを用意
小さいものをたくさん
その中に興味あるものが
ひとつあれば来てくれる。
循環が生まれる公共施設
○成功例:富良野 ラベンダー畑
演劇コースの学校
農家こそクリエイティブでなければ
という親の意識(親世代の成功体験から)
文化の自己決定能力が必要
自分たちで考え選ぶことが
今後の存続にも関わってくる。
宮沢賢治
『農民芸術概論綱要』より
曾つてわれらの師父たちは
乏しいながら可成楽しく生きてゐた
そこには芸術も宗教もあった
いまわれらにはただ労働が
生存があるばかりである
宗教は疲れて近代科学に置換され
然も科学は冷く暗い
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■質疑応答より
アートマネジメントにおいて
届けたいところに届かないジレンマ
公教育で裾野を広げる
そこからステップアップ
社会的なシステムをつくる
行政が何をしてくれるか
市に対して何かできるか
行政を使って何をできるか
という視点
私たちが何をしたいか、
気持ちや考えを持っておくことが
必要だと思った。
自分たちだけでできない時
他から手伝ってもらうためにも
大事なことだと。
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▼ピエール・ブルデュー(※1)
NHK 100分de名著
でも放送されていた!
『ディスタンクシオン』ブルデュー
“プロデューサーAのこぼれ話”も
ぐっとくる!
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