丹沢秘密倶楽部

日々の記録、思いついたこと、昔話など。最近は、俳句のこと。
俳句は読み中心で、なかなか詠めない。

思い出す

2020-12-20 16:52:38 | 俳句

 

「毎日のように歩く見慣れた町並みに、ある日ぽっかりと更地ができている。・・中略・・しかし、そこに何があったのか・・・どうしても思い出せない。

私たちの記憶とはそのようなものだ。・・・見慣れたと言いながら適当に忘れているのである。・・・俳句はそこに何があったかを思い出させてくれるきっかけになる言葉なのだと思う。」

小川軽舟「俳句と暮らす」(中公新書)

 

一つ咲く冬の椿を切りにけり             富安風生      千句選56

椿系統はみな同じようですが、花は咲いたが、数が少ないなと思って近寄ってみると、それぞれの花のまわりの枝につぼみがたくさんついています。

そのつぼみが一週間ぐらい経つと次々に咲き始めます。

「一番椿」、そんな言葉はないか。

 

山道の掃いてありたる初詣              富安風生      千句選57

 

酒もすき餅もすきなり今朝の春            高浜虚子      千句選58

「今朝の春」正月元旦です。

当方のような「駆け出し俳人」だと、

酒を飲み餅一つ食う今朝の春

 

 

電話ボックス冬の大三角形の中            今井 聖      千句選59

小さな公園の電話ボックスだけが明るい。「電話ボックス」いくつかは残すようです。

「大三角形」冬の星座だそうです。

 

返球の濡れてゐたりし鰯雲              今井 聖      千句選60

俗に言う、草野球ですね。その昔、早朝野球というものがありました。

外野に転がって朝露に濡れたボールが返ってきたのでしょうか。

 

枯芝に置きて再びピアノ運ぶ             今井 聖      千句選61

ピアノを家から出しているのか、入れようとしているのか、どっちかわかりませんが、

枯芝とピアノが妙にマッチしていますね。

 

トースターの熱線茫と霜の朝             今井 聖      千句選62

 

顎紐や春の鳥居を仰ぎゐる              今井 聖      千句選63

とある解説文に、「村の消防団が鎮守の森の鳥居前で訓練・・・」うんぬん、とありましたが、

それは、ちといただけない。

普通に読めば、「靖国神社」参拝を見た句だと思うのですが、さて。

 

 

苗代に満つ有線のビートルズ             今井 聖      千句選64

んーん、この景色、昭和末期にあったかなという感じですね。

 

蒲公英のサラダの話立子の忌             広渡敬雄      千句選65

「立子」高浜虚子の次女、星野立子

 

帽子屋に帽取棒や春深し               広渡敬雄      千句選66

たぶん、銀座に帽子屋があると思います。

当方の銀座は、三越のライオン、鳩居堂、日比谷公園、数寄屋橋公園ぐらいですね。それぞれ二、三回行ってみた程度ですが。

 

工女帰る浴衣に赤い帯しめて             富安風生      千句選67

工女、そうか、工場で働いているのか、可哀そうなどと読み違えてしまってはいけません。

それなりに選ばれた存在だったはずです。

何人かの少女が夏まつりの愉しみを終えて、寮に帰っていくのです。

作者は高級官僚として、全国各地に転勤生活を送っていたのです。昭和11年逓信省次官を退官。

現代は、「だれでも転勤」になってしまいましたが。

その昔の転勤はエリートのものだったのです。

 

 

近詠

大島も薄く見えたり冬ゴルフ         今日水

水割りの焼酎甘し日記買う          今日水

団栗も落葉も掃かれ土光る          今日水

買い物に付録の句帳十二月          今日水

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再び、混沌

2020-12-09 08:45:29 | 俳句

千両、赤い実が葉の上についている。葉の下につくのが万両だそうです。

 

また混沌としてきました。

コロナ新型肺炎の年も早や十二月となりました。

一年前は、にっぽん国中ノー天気でしたね。

結果論ですが、海外旅行にどんどん出かけ、帰国した人たちから国中にコロナが広まっていったわけですね。

無症状の感染者が多くいるとは、専門家も思わなかった、ということでしょうか。

来年の今ごろも、そう変わっていないような気がしますが。

 

 

近頃お気に入りの一句

 

暖房の扉をジャズとともに開け               坊城俊樹     千句選35

ジャズは扉の中にあるわけですが、ずいぶんと威勢のいい句です。

 

炉火赫し幼きころを見てをりぬ               坊城俊樹     千句選36

別荘の広い部屋の暖炉でしょうか。

室生犀星の「杏っ子」にこういう場面が出てきます。犀星は軽井沢に疎開していました。

当方の炉火は掘り炬燵の炭火ですが。

夏になると炬燵の掘りにふたをしましたね。

 

水銀灯とどかぬあたり落葉集む(つむ)           坊城俊樹     千句選37

夜の雪のはてに幾千本の杉                 坊城俊樹     千句選38

からまつの透く千本の時雨寒                鷲谷七菜子    千句選39

 

 

藤原暢子、現代若手俳人、これからますます活躍する人でしょう。

菰巻をなでてここらが松の腹                藤原暢子     千句選40

広い庭園でしょう。何人かがいると読めば、俳句です。

一人でなでていたら、川柳です。・・・ん・・変わらないか?

 

明るさが売れてゆくなり酉の市               藤原暢子     千句選41

酉の市、テレビの報道で見るだけですが、

ん万円もする豪華な熊手の売買、「金は天下の回り物」ということですね。

 

星冴ゆる夜道は長くあればいい               藤原暢子     千句選42

嚏する前の記憶の欠けてをり                藤原暢子     千句選43

嚏(くさめ)、くしゃみです。古語ですが、俳句ではよく使うようです。

 

大年の黒き鉄鍋鶏煮ゆる                  藤原暢子     千句選44

大年、大晦日です。

俳人は鶏が好きなようです。

鶏の声も聞こゆる山桜                   凡兆       千句選49

追い追わる鶏白きことが夏                 塩野谷仁     千句選50

永き日のにはとり柵を越えにけり              芝 不器男    千句選51

 

初日浴ぶ石ころひとつ持ちてくる              藤原暢子     千句選52

食堂の皆知り合うて年あらた                藤原暢子     千句選53

どこで初日を浴びたのでしょうか。海、山、川、

当方ならば、「石ころ」だから、山あいの温泉? なかなか行けませんが。

食堂はどこでしょうか。日本ではないかもしれません。作者は外国へよく行くらしいので。

 

人日の山より人の村を見る                 藤原暢子     千句選54

人日(じんじつ)、調べました。

『人日とは文字通り "人の日"という意味です。

古代中国では、元日は鶏、2日は狗(犬)、3日は猪、4日は羊、5日は牛、6日は馬、7日は人の日としてそれぞれの吉凶を占い大切に扱いました。

7種の若菜を入れた粥を食べ、無病息災や立身出世を願う風習がありました。』

七草、ですね。

この句も、外国かな、ですね。

 

知り合ふて別れてゆける春の山               藤原暢子     千句選55

そう、山の友だちとはそういうものです。下山しての日常生活では互いに「縁なき衆生」なのです。

 

近詠

遼くんもまだ二十代冬ゴルフ           今日水

実は、先月末、二年ぶりにゴルフをしてきました。スコアは、まぁひどいものでしたが。

遼くんは間違いなくスターです。どの世界でもスターが必要です。

そのむかしの、尾崎、中島、青木

ゴルフが上手いだけではなく、言動に華があるスターでしたね。

石川遼くんがアメリカに行っているあいだの、日本男子ゴルフ、言っちゃ悪いが、ゴルフの上手いお兄さんたち、という感じでしたね。

 

銭湯の暖簾を前に冬の月             今日水

銭湯をさがすのがたいへんですが。

 

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