2019年 夏
熱帯夜テレビの音や路地裏に New
家の蜘蛛コバエも捕らずや飼っており
甜瓜母の言葉の訛りかな
蝸牛葉を這うごとき睡魔かな
後半戦いかに暮らすか半夏生
月も無くテレビ遠くに夕涼み
雨やみて梅雨空光り鳥の声
昼顔のはびこる街路土埃
雨を呼び威張り立つや鬼薊
父の日やうわさもなきに夕まぐれ
朝の風梅雨の晴れ間や湿る土
紫陽花の雫は光り薄日さす
琵琶の汁腕を伝いて窓の雨
心太黙りてすする雨の夕
梅雨入りや街灯暗し雨の音
立ち尽くす夜明けの雨や梅雨葵
十薬の暗き雨降る静けさや
紫陽花や世間話に空曇り
夏服の疲れし肩や午後の陽
孑孑の文字を眺めて窓の風
朝の風ニチニチソウの苗は揺れ
蛞蝓や枯れしビオラの残り花
蟻を見て内弁慶やあとずさり
雨に濡れ濡れても薄し樟若葉
雲母虫トイレの紙も好き好きか
無造作に鋏を入れし初夏の庭
赤紫蘇の束を重ねし八百屋過ぎ
飯食えば鳥はさえずり初夏の朝
日は暑し花屋の棚や衣替え
小虫湧く初夏の風花風もなく
薄日さす若葉は影も柔らかし
サンダル履きのゴミ出しに朝の風
起き掛けに素足さらりと雲眺め
霧雨に満天星躑躅夏に入る
アジサイの花芽のごとき雨の粒