連休三日目。
お天気がよかったので、谷中歩きをしてきました。
「子供の頃は、こういう感じの家に住んでいたのになぁ」
「今や、それを『あら懐かしい!』『今どき珍しい』と、
写真に収める立場になったなんて」と、遠く振り返る。
記憶の中にある、その格子戸の木造平屋建ては、
住んでみれば、じめじめと薄暗く、
頭のおかしい祖父の思い出と入り混じって、
ひとつもいいことはなかったような気もするが。
はるか遠くなってみれば、
薄暗い庭の柿の木や、その足元にびっしりと生えたフキやみょうが、
一斗缶で熾した焚火、粗末な物置が、
なんともいえない郷愁を持って、鼻の奥を突く。
「くーだーさーいーなー」
お醤油の焦げたいい香り。
ぼりぼり、パリパリ、おいしい。
町角に響く豆腐屋さんのラッパも。
あの、器をもって買いに走らされた記憶と共に、
これほどまでに胸に迫るのは.....。
決して幸せではなかった私の子供時代にも、
やはり無邪気な何かが存在していたということか。
大人の誰しも、
短い間に、失ったものが多すぎて。
瓦と土を交互に重ねた築地(ついじ)塀。
居間が丸見えな駄菓子屋の店頭も、
そこでそばをすすりながら、
駄菓子を物色する子供の仕草をたしなめるおばさんの姿も。
ありふれていた、あの日々には。
切ないまでに帰りたい思いと、帰りたくない思いの、
二つが存在するのだろう。
谷中銀座のはずれにある...
夕やけだんだん。
TVなんかにも、よく登場しますね。
その足元では鞍馬天狗の紙芝居が。
じっと見入るのは、ほとんどが、かつて子供だった大人。
「清潔」で「便利」で「豊か」な暮らしを覚えた人々は、
ほんの束の間、その町に来て、あの日々を懐かしむ。
形の他には。
私たちの中で、何が変わったのだろう...?
谷中ぎんざは人でいっぱい!
出来たて惣菜を買い食いしたり、あちこちきょろきょろ、そぞろ歩いたり。
私たちも、ソースせんべいを買ってかじりながら。
くねくね、『へび道』をずんずん歩きます。
ときにのろのろ、きょろきょろ笑いあい、
ときにしっかり、きっぱり、前を向いて。
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