「乗り換えませんか?」
「お安くなります」
「提携を...」
「集客upが!」
「宣伝しましょう!」
「買って下さい」
...うるせえ!!
用があったらこっちからかけるわ!
「乗り換えませんか?」
「お安くなります」
「提携を...」
「集客upが!」
「宣伝しましょう!」
「買って下さい」
...うるせえ!!
用があったらこっちからかけるわ!
「ここ。『何がやりたい店なんだかさっぱりわかんない」ってさ。みんな言ってるよ」
...店を始めたばかりの頃。
とあるお客様が鼻で笑いながら、そう言ってきたのを覚えている。
なぜ、その人が、
わざわざ客として金を払ってまで、
そんなことを言いに来たのかは、今でもわからないが。
とにかく、新参である我々に対して好意的でないのは、
明らかに伝わってきた。
飲み屋街として、
勢いが落ちつつはあっても、歴史のある町で。
新店が出来れば、
すぐに情報が伝わる頃であったのも、
そんな洗礼を受けた理由のひとつだったのかもしれないが...
対するゴンザの『答え』があまりに意外だったので、
相手もどうしていいのかわからない様子になった。
曰く、
「何がやりたいのかなんて、僕にだってわからないんだから、
他人にわかるわけがないじゃないですか」
と。
...あれから10年。
『何がやりたい店なんだかさっぱりわからない』
と我々を指して言っていた人々が、
今どうしているかはわからないが、
実は、我々自身も未だ、
ある意味、何がやりたいかわからずにいる。
やりたいことは毎日変わり、
新しい日々は勉強で、
その時々にやれること、やらなければならないこと、
求められることは違ってくると、
やればやるほど思うからだ。
もし、
「これです!」
「これでいい」
と、答えを出してしまったら、
我々はきっと、大切なものを失うだろう。
ただ、来て下さる皆様に楽しんで頂くための原動力と、
自分たち自身への疑問を。
一年。
また一年。
...そして十年。
店を守るために、ある意味図々しくなり、
時に敵を作ることもあるが。
これからも『やりたいこと』を追い求めて、
楽しく仕事が出来たらと思う。
ちなみにここ数日、
ゴンザが目指しているのは、
『自分で育てた天然酵母で完璧なカンパーニュを焼くこと』である様子。
...まあ頑張れ(笑)
お花やお祝いを贈って下さった皆様。
お客様、そして応援して下さるすべての皆様に。
本当にありがとうございました!
「何で野毛なの!?」
「何で今なの!?」
10年前。
店を始める時には、色々な人からそう言われた。
東横線の桜木町駅が廃止され、
ちょうど、
『野毛の飲み客が減少しつつある』
と、言われていた頃だ。
ただ、若い経営者の店はチラホラ出てきていて。
それは前述した理由や、
時の流れによる世代交代から、
『家賃も安く、物件が借りやすかった』
という事情も関係したと思われるが、
とにかく、立ち飲みバルの先駆者ともいえる、ある店が、
連日、超満員であることは知られていた。
我々はといえば。
前の職場を辞めたゴンザの、独立を考えたはいいが、
はて、どうしていいか、右も左もわからず。
周囲の皆さんの力を借りながら、試行錯誤の状態であった。
そして、そんな中、不動産屋が見つけてくれたのが、
今の場所だったのであるが、
当時のそこは、
隣はビデオ屋、逆サイドはラーメン屋、
二階はマッサージ店...
さらに、その他の周囲も、
古く、営業しているかどうかもわからないような店舗が多数だった。
実際、我々が紹介を受けた物件も、
トイレは古く、客席は狭く。
だが、逆にそれが、二人で始めるには、ちょうど良くも思えた。
何より資金も少なかったし、
時間もなかったし、で、
手の届く範囲であったその場所に、
ほぼ即決。
急ぎ開店することになり。
一度動き始めれば、あれよあれよと工事は進んで店は完成。
(これは、工事にあたってくれた友人知人のおかげに他ならないが)
『店に立つ』という意味で『ズブの素人』であった私も、
気持ちの準備もへったくれもないまま、
右往左往しつつ、
ひたすら、突き進むことになったのである。
ただ、
「こんなに助けて頂いたのだから、意地でも潰さないように頑張ろう」と。
...そして10年。
何で野毛だったか。
何であの時だったか。
今になってもわからないし、
ひとつ挙げるのなら、運命だったとしか言い様がない。
10年前には、
その数年後に『野毛ブーム』が起こる事も、
店が乱立することも、
そのために家賃の高騰が起こることも、
我々は、まったく予想していなかったのだから。
...さらに今。
あと何年、この店を続けられるかもわからない。
これからどう進んでゆくかも。
ただ、10年続けられた事には、ひたすら感謝だけがあって、
それだけは大きく大きく、さらに確かになってゆく、と。
お世話になったたくさんの方。
足を運んで下さるお客様。
親切に接して下さる、ご近所の方々。
遠くで、近くで、見守って下さる方。
...初めは何もなく、
何も、わからないまま始めた店。
だが、『意地でも潰せない』のには、
その向こうに、
たくさんの方々の顔が見えるから、
という確かな理由があるのだけは、
揺るぎのない事実なのである。
「あいつが悪い!」
「こいつが悪い!」
『得体の知れないウィルスだから、
みんなで協力し合って何とかしましょう』
って話なのに『犯人探しに余念がない』種の人々にはウンザリする。
「いやもうそれ、コロナ関係ないやん!」
と、思わずツッコミたくなるようなコトもチラホラ。