今朝。
仕事から帰ったゴンザがこう言った。
「erimaちゃん~、公園の桜がとっても綺麗だよ~。もしerimaちゃんさえ良ければ、俺、公園に桜を見に行ってもいいんじゃないの?」
よく聞くと変な言い方だが、これはゴンザの精一杯の気遣いだ。
「ううん、いいよー。だって、ゴンザ、仕事帰りで疲れてるだろうし、今から連れてってもらうなんて申し訳ないもん」
それでなくても、車で出勤したからと、帰りに市場に寄って美味しいマグロを持って帰ってくれたゴンザに、これ以上気を遣わせたり、色々してもらうのは申し訳ない。
確かに良いお天気で、気持ちの良い朝ではあるが.....
「俺、erimaちゃんが桜を見たいなら、全然疲れていないよ。今見ておかないと損するんじゃないの?見ておいたほうがいいと思うよ~」
おちゃらけながら、誘ってくれるゴンザの言葉に甘えて、公園まで車で行ってみることにする。
公園脇の道路には、たたまれた露天が並んでいるところを見ると、昼間は花見客で賑わうのだろう。
時間はまだ朝8時とあって、通勤客が足早に抜け道として使うその公園には、今はまだ、鳥の声と人々の靴音だけが静かに響いている。
「わあ、綺麗だねぇ!」
しばし桜に見とれ、行き交う散歩中の犬に気をとられつつ、春の朝を二人で楽しむ。
と、少し先に視線を落とすと、何かをついばむ山鳩くん。
あんまり後姿が綺麗なので、写真を撮らせてもらうことにする。
が、山鳩くんはマイペース。
私はカメラを手に、右往左往しながら
「あっ.....」
とか
「ちょっと待て!」
とか、ゴンザを尻目に山鳩くんの追っかけと化す。
プップッ!
「......ん?」
ふいに鳴らされたクラクション。
ふと山鳩くんから目線をはずし、クラクションの主である車を見れば、なんとそこにはゴンザの友人が。
「何してるの?」
そう聞かれ、言葉に詰まる。
「.....散歩」
山鳩相手にアホ面下げてカメラ片手に右往左往、そんなさまをモロに見られて動揺する私(笑)
出勤途中であるらしい彼は、ゴンザと二言三言言葉を交わし、笑いながら去っていった。
そこで、散歩の続きを始めた我々は池のほとりにある、見事な枝垂れ桜をしばし鑑賞する。
満開の花の蜜を吸いに来たのか、すずめとメジロがしきりに花を突いている。
しかし.....
しばらくその光景を眺めていた私は、なぜかすずめが突いた花だけが、クルクルと周りながら、一輪一輪落ちてくるのに気づく。
よく見れば、メジロがその細いくちばしを器用に桜の花の中心に差し込むのに対し、すずめはいちいち、一輪一輪花をちぎって取り、それから花の中心を吸っているらしい。
私は「へええ~」と、この新しい発見に(私にとっては)感心し、すずめが飛び移る枝の下に移動しては、クルクル落ちてくる花をキャッチする遊びにしばし興じた。
池に写った朝の桜がことのほか美しい。
世間様が活動を始める、時間が気忙しく働き始める朝のひととき。
贅沢にも、ゆったりと桜を見せて頂いた私たちは家路に着いた。
そして夕刻。
ゴンザの出勤時間に合わせて、ドラッグストアに買い物に出ることにした私は、先日お花見弁当を食べた河原の桜を再び愛でようと、一件先のお店まで歩いてゆく事に決めた。
がっ!
なんだか超寒~い。
ちょっと後悔.....
桜は確かに綺麗だけど、河原は春とは思えないような冷たい風が吹きぬけ、ほっぺと耳がちぎれそうだ。
(.....そこでシートを広げ、夜桜見物を始めるらしい君たち、君たちは根性があるよ)
ようやく目的地に着いたころには、あまりの寒さに涙が滲んでいた。
帰り道.....
身を切る寒さの中、夜桜越しの綺麗な夕焼けを見る。
なんだか雲もドラマチックで、薄い闇に染まり始めた桜も妖艶さを増す。
私は.....
あと何回桜を見られるのかな。
少し先を歩く、初老の夫婦らしき人影を見ながら、そう考える。
ゴンザ、今朝はありがとう。
仕事から帰ったゴンザがこう言った。
「erimaちゃん~、公園の桜がとっても綺麗だよ~。もしerimaちゃんさえ良ければ、俺、公園に桜を見に行ってもいいんじゃないの?」
よく聞くと変な言い方だが、これはゴンザの精一杯の気遣いだ。
「ううん、いいよー。だって、ゴンザ、仕事帰りで疲れてるだろうし、今から連れてってもらうなんて申し訳ないもん」
それでなくても、車で出勤したからと、帰りに市場に寄って美味しいマグロを持って帰ってくれたゴンザに、これ以上気を遣わせたり、色々してもらうのは申し訳ない。
確かに良いお天気で、気持ちの良い朝ではあるが.....
「俺、erimaちゃんが桜を見たいなら、全然疲れていないよ。今見ておかないと損するんじゃないの?見ておいたほうがいいと思うよ~」
おちゃらけながら、誘ってくれるゴンザの言葉に甘えて、公園まで車で行ってみることにする。
公園脇の道路には、たたまれた露天が並んでいるところを見ると、昼間は花見客で賑わうのだろう。
時間はまだ朝8時とあって、通勤客が足早に抜け道として使うその公園には、今はまだ、鳥の声と人々の靴音だけが静かに響いている。
「わあ、綺麗だねぇ!」
しばし桜に見とれ、行き交う散歩中の犬に気をとられつつ、春の朝を二人で楽しむ。
と、少し先に視線を落とすと、何かをついばむ山鳩くん。
あんまり後姿が綺麗なので、写真を撮らせてもらうことにする。
が、山鳩くんはマイペース。
私はカメラを手に、右往左往しながら
「あっ.....」
とか
「ちょっと待て!」
とか、ゴンザを尻目に山鳩くんの追っかけと化す。
プップッ!
「......ん?」
ふいに鳴らされたクラクション。
ふと山鳩くんから目線をはずし、クラクションの主である車を見れば、なんとそこにはゴンザの友人が。
「何してるの?」
そう聞かれ、言葉に詰まる。
「.....散歩」
山鳩相手にアホ面下げてカメラ片手に右往左往、そんなさまをモロに見られて動揺する私(笑)
出勤途中であるらしい彼は、ゴンザと二言三言言葉を交わし、笑いながら去っていった。
そこで、散歩の続きを始めた我々は池のほとりにある、見事な枝垂れ桜をしばし鑑賞する。
満開の花の蜜を吸いに来たのか、すずめとメジロがしきりに花を突いている。
しかし.....
しばらくその光景を眺めていた私は、なぜかすずめが突いた花だけが、クルクルと周りながら、一輪一輪落ちてくるのに気づく。
よく見れば、メジロがその細いくちばしを器用に桜の花の中心に差し込むのに対し、すずめはいちいち、一輪一輪花をちぎって取り、それから花の中心を吸っているらしい。
私は「へええ~」と、この新しい発見に(私にとっては)感心し、すずめが飛び移る枝の下に移動しては、クルクル落ちてくる花をキャッチする遊びにしばし興じた。
池に写った朝の桜がことのほか美しい。
世間様が活動を始める、時間が気忙しく働き始める朝のひととき。
贅沢にも、ゆったりと桜を見せて頂いた私たちは家路に着いた。
そして夕刻。
ゴンザの出勤時間に合わせて、ドラッグストアに買い物に出ることにした私は、先日お花見弁当を食べた河原の桜を再び愛でようと、一件先のお店まで歩いてゆく事に決めた。
がっ!
なんだか超寒~い。
ちょっと後悔.....
桜は確かに綺麗だけど、河原は春とは思えないような冷たい風が吹きぬけ、ほっぺと耳がちぎれそうだ。
(.....そこでシートを広げ、夜桜見物を始めるらしい君たち、君たちは根性があるよ)
ようやく目的地に着いたころには、あまりの寒さに涙が滲んでいた。
帰り道.....
身を切る寒さの中、夜桜越しの綺麗な夕焼けを見る。
なんだか雲もドラマチックで、薄い闇に染まり始めた桜も妖艶さを増す。
私は.....
あと何回桜を見られるのかな。
少し先を歩く、初老の夫婦らしき人影を見ながら、そう考える。
ゴンザ、今朝はありがとう。