意向確認とは…
大阪府では、卒業式などで「君が代」斉唱の際の起立斉唱の職務命令に従わず懲戒処分を受けた教員らに対して、研修を受けることを義務付けています。内容は、関係する法令や条例の条文を読み上げることが中心で、30分程度の非常に形式的なものですが、この研修の最後に「今後、入学式や卒業式等における国歌斉唱時の起立斉唱を含む上司の職務命令には従います。」とだけ書かれた文書を渡され、署名押印を求められます。
最初、私達は、このタイトルも宛名もない文書を怪文書などと呼んでいたのですが、府教委の内部で「意向確認書」と呼ばれていることがわかりました。「意向確認書」は文面を書き直すことも、提出するかどうかも、任意とされ、担当する教員力向上要支援グループは、研修の結果を確認するためのものと説明していました。研修後に「意向確認書」を提出しなかったり、文言を修正して提出したりしても、とがめられたりすることはありません。退職してしまえば、そんなものがあったことはどこに影響することもないのです。
ところが、「意向確認書」を提出しなかったり、書き換えて提出したりした者が、定年時に再任用を申請した場合、再任用の可否を決める直前に校長から呼び出しを受けます。そして、その書面と同じ文言で「今後、入学式や卒業式等における国歌斉唱時の起立斉唱を含む上司の職務命令には従いますか?」とだけ尋ねられるのです。これに「Yes」と答えれば再任用が認められますが、それ以外の答えなら再任用が拒否され、事実上のクビがきまるのです。これが、私達が「現代の踏み絵」と批判してきた「意向確認」です。
違反質問とは…
厚労省は公正な採用選考のための基本的な考え方を示していて、応募者の基本的人権を尊重することと、応募者の能力・適性のみを基準として行うことが、その二本柱になっています。これに従って、採用選考時に面接・作文等で把握してはいけないこととして、本来自由であるべき事項(思想・信条など)や本人に責任によらない事項(本籍や家庭環境など)などの14項目をあげていますが、これを面接等で尋ねようとするのがいわゆる違反質問です。例えば、「尊敬する人物」や「愛読書」を尋ねるような質問も応募者の思想的背景につながる違反質問として、面接時の質問などについてはかなり厳しく制限をしています。大阪府教委は、就職指導で違反質問を受けた場合には「学校で答えないように指導されている」と返すように指導させています。私達の再任用の審査に当たって質問された「意向確認」は、もろにこの違反質問にあたるもので、生徒に答えないように指導している私達が答えられるわけがありません。こんな質問を堂々とする府教委は、どうかしているとしか言いようがありません。