(7)東京地裁須藤決定直後の7月27日に行われた当時の再発防止研修では、「地方公務員法を中心とする解説がなされたに過ぎず」、「『受講報告書』は、受けた研修の内容及びその所感について記載させるものに過ぎず、原告らが主張するような『反省の実質を有する文書』でもない」(研修命令取消訴訟における都教委代理人の主張)として、須藤決定の範囲に留まることを意識したような内容で行われ、以降このやり方が継承されていた。
しかし、2012年3月の通知から変更された「再発防止研修」の現在のやり方は、実施時期・回数とその研修内容において「合理的に許容されている範囲を超えるもの」となっている。実施期間が半年の長きに及び実施回数も大幅増したのみならず、内容において「地方公務員法違反」の処分事案にも関わらず、「学習指導要領国旗国歌条項」を持ち出して起立斉唱を強要するやり方は、「起立斉唱命令」が「思想及び良心の自由についての間接的な制約となる面がある」と判示した『最高裁判決』(2011/6/6)にも明らかに抵触するものである。自らの歴史観ないし世界観および教育的信念に基づく不起立者に対して、その行為を禁止したり反省を迫ったり変更を強いるような研修は、思想転向強要の実質を有する憲法違反の人権侵害と言わなければならない。
(8)東京都教育委員会が教育に支配介入し、「10.23通達」を発出して、「君が代」起立を拒否する教職員を処分すること、全教職員が起立する姿を見せることによって、子どもたちに「日の丸・君が代」の尊重を刷り込むことは、「個人の尊厳を重んじ、真理と正義を希求する人間の育成」を目的とする教育条理に反し到底許されるものではない。都教委による教育支配介入が国際社会に通用するものではないことは自明の理である。