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「君が代」不起立処分大阪府・市人事委員会不服申立ならびに裁判提訴当該15名によるブログです。

再任用拒否国賠訴訟証人尋問:原告陳述書

2020-09-11 05:31:00 | 裁判

 

 

陳述書

2020616

 梅原 聡

私は府立高校の教員として36年間勤務し、20173月末に定年を迎え、再任用を希望しましたが、府教委はこれを拒否しました。府教委が私の再任用希望を拒否する理由は、総合的判断とはいうものの、「君が代」に関する私の思想良心を強制的に回答させるよう意向確認に私が応じなかったことのみを理由とするものであり、明らかに不当なものです。この裁判では私の再任用が拒否された過程を、嘘偽りのない形で検証し、事実に基づく公正な結論が導かれることを望みます。

私は20123月の卒業式の「君が代」斉唱時に起立しなかったために戒告処分を受けました。さらに、20143月の卒業式でも同様の戒告処分を受けています。2014年の処分では、「君が代」の起立斉唱をしたくないと考えていた同年の卒業生から相談されていたこともあって、同年7月に同僚・元生徒・保護者と共に大阪弁護士会に人権救済申立を行いました。これについては、20163月に、教員に対する職務命令や機械的な処分が、教員や生徒の思想良心の自由を侵すことになることを認めて、府教委に対して起立斉唱の職務命令やそれに違反したことに対する処分をやめるように勧告書が出されました。

2014年の戒告処分のおよそ2年後の201618日、この処分についての研修を121日の朝、授業前に受けるように命じられました。処分から2年も経ったこの時期に、また、授業準備にも支障をきたすような日時を指定して、研修を命じられたことに抗議し、説明を求めました。時間が経過したことについては2年間にわたって研修のための準備をしていたという冗談のような説明で、研修を行うこと自体が非常に恣意的に行われている印象を強く受けました。また、なぜこの時期かということについては、次の卒業式に同様のことが起こらないようにと答えたので、ではなぜ昨年行わなかったかと聞きましたが、答えはありませんでした。授業の時間が近づいたので、納得がいかないまま、研修に臨まざるを得ませんでした。


研修の内容は、前半は公務員の服務について、後半は国旗・国歌の問題について、学校教育法や指導要領・国旗国歌条例などの条文を読み上げるような内容でした。当日は講義を行うだけで質問は受けないとのことでしたが、それでは意味がないと、質問したところ、若干の応答がありました。その中で、命令の内容に疑義があっても従うべきであるというような説明があったので、疑問を呈すると、「明らかに違法なものでなければ、権威ある機関などによって取り消されるまで命令には従わなければならないと法律は解釈される」という返答がありましたが、「これについては、根拠などについて説明する準備ができていない」と付け加えられました。


研修の後、文書名も宛名もなく「今後、入学式や卒業式等における国歌斉唱時の起立斉唱を含む上司の職務命令には従います」とだけ印刷され、署名捺印をする形式の書面(甲第24号証参照])を渡され、署名捺印をして提出するように府教委の職員に言われました。私が確認すると、「提出は任意である」「書き換えてもいい」ということは認めました。誰が何のために書かせるのかと聞くと「教員力向上支援グループが研修結果の確認のために書いてもらう」と答えていましたが、さらに、再任用等の判断材料になるのではないかと問うと、「意向を確認するためのものということしか言えない」と答えた後に、「いったん、提出していただいたものは行政の内部でどのように使おうと自由だ」という内容の言葉が付け加えられ、唖然としてしまいました。


この書面については、命令に疑問を感じる場合の対応が十分に説明されなかったことや、不服申立てのような制度があるはずなのにそれについても説明されなかったことなどから、「憲法などの上位法規に触れると判断する場合は留保する」ということと、「担当グループが研修結果の確認をするため以外の目的に使わないこと」を書き加えて提出しました。(甲第11号証)

定年を迎えるにあたって、2016年末の再任用希望調査には、フルタイムでの再任用を希望しました。年が明けて、2017124日の朝、○○校長から校長室に呼ばれました。「再任用に関連してお聞きします」と言われ、これまでの君が代不起立による戒告処分の履歴を確認された後、「今後、入学式や卒業式等における国歌斉唱時の起立斉唱を含む上司の職務命令に従いますか? はいか、いいえで答えて下さい」と言われました。


これまでに他の方に同様の質問がなされたことは聞いていましたが、こんな質問を本当に教育委員会が聞くのかという思いが強く沸き起こりました。私たちは生徒の就職指導にあたって、採用の面接で思想・信条に関わるような質問をされたら「そのような質問にはお答えしないように学校で指導されています」と返すように教えています。愛読書や尊敬する人物など、一見問題がなさそうな質問でも思想信条に関わる可能性があるので、同様の説明をして答えないように指導しています。これは厚労省の「公正な採用選考の基本」に沿って府教委自身が指導させているものです。その府教委がこんなことを聞くのか、答えないよう生徒に指導している私たちが、これに答えられるはずがないではないか、と強い憤りを憶えました。


また、「はい」という答え以外は認めない=再任用はさせないという聞き方にも心が震える思いがしましたが、「これが再任用に関わる質問であるということなら、生徒の就職の面接でも、このような質問には答えないように指導しているので、答えることはできません」と返答しました。○○校長は「意向確認はできなかったことになるがよいか」と言うので、私は「今の回答でそうなると判断するというのなら仕方がないが、なぜ答えないかと言うことをきちんと伝えて下さい」と念を押しました。


2日後の26日に、「なぜ答えないかということをきちんと伝えたか」ということを校長に確かめ、「思想・信条に関わる質問を再任用に関連して聞くことは不適切ではないか」という点を府教委に確認するように依頼しました。すると、翌27日に校長から「こちらからこの件に関して答えることはない」という全く誠意のない府教委からの回答を伝達されたのです。校長は意向確認に答えない理由を伝えたと言っていましたが、最終的な校長の報告書には「意向が確認できなかった」ことだけが記されていました。(甲第25号証)この内容は府教委からの指示によるものであると校長から聞いています。私の再任用を拒否することを正当化するために、あえて私が答えない理由を記載させなかったのだと思います。


「意向確認」の内容は、厚労省が示し、府でも企業などを指導している公正採用の基本に反するものであることは明らかなので、2月1日に私も加わっている市民グループ(「日の丸・君が代」強制反対!不起立処分撤回を求める大阪ネットワーク)から、大阪府の商工労働部労政課に対して相談と府教委に対する指導の要請を行いました。翌2日には私自身も労政課の○○氏らと面談をさせてもらいました。その席では「意向確認」が研修の一環として行われることについては、担当としてものを言う立場にはないが、再任用であれ、採用に関わって質問されているのであれば、厚労省の示す14項目に触れるものであるから、質問すべきではないという認識をお聞きすることができました。後日、私たちからの相談を受けて商工労働部の○○氏らが府教委の教職員人事課の亀甲氏や石村氏と面談し、「意向確認」が公正な採用選考に関する14項目のうち「思想・信条に関わるもの」に該当するので十分注意するように、との改善要請を行ったことを聞いています(甲第1号証の1、2)。府教委は、この時点で意向確認の内容に問題があることが確認できたのですから、当然、非を認めて意向確認をやり直し、私の再任用を認めることができたのに、これを怠ったのです。

教員力向上支援グループが労政課との面談の結果をどう受け止めているのかを、府教委に出向いて確認を求めたところ、○○氏がこれに対応しました。その中で、124日の「意向確認」が研修の一環として行われたと始めは答えているのに、さらに確認すると再任用審査会の際に聞かれて答えられるようにするためと答え方を変えたことに不信感を憶えました。労政課との面談で再任用の審査に使うために聞くのはまずいと指摘されたからではないかと思いました。労政課との面談で「意向確認」がまずいと指摘されたことで困っている状況がありありと感じられ、思想信条に関する質問で、厚労省の示す14項目に触れるのではないかと問いただしても、結局はっきりと答えないままでした。しかし、「意向確認」の内容に思想良心に関わる文言が入っているから「答えられない」、と対応をせざるを得ないので、その文言を除くように求めても、あくまで必要なことと考えていると答えていました。その後、私たちが○○氏らと持った数度の話し合いの中でも「意向確認」の中の「…国歌斉唱時の起立斉唱の…」という部分は不要ではないかと再三指摘しましたが、一貫して必要な文言であると修正を拒んできました。ですから、その数ヶ月後の入学式での不起立処分者に対する研修に用いられた意向確認の書面の文言が「今後、上司の職務命令に従います」だけに変更されていたことを知ったときには、開いた口がふさがりませんでした。(甲第14号証)それならば、私にも同じ聞き方ができたはずではないか… と考えてしまいました。


また、「意向確認」に示される「意向」を勤務実績として審査会に報告するという説明には非常に強い違和感を憶えました。どんなことを考えているかという私の内心を勤務実績として評価することは、思想良心の自由・沈黙の自由を侵すことにもなり、絶対に許されないことだと思いました。 

2017217日、校長より「総合的に判断して再任用結果を否とします」と口頭で連絡を受けました。その理由については任命権者から知らされている決定事項を伝えているだけなのでわからないとのことであったので、人事課の教員力向上支援グループに聞いたところ、総合的判断であるという以上のことは説明されませんでした。本当に総合的判断で再任用を「否」とされたのであれば、この年に再任用を希望した数百人の教員の中で、私が最低の教員であるという烙印を押されたということになります。そんな屈辱的な評価を受け入れることはとてもできません。しかし 、後に開示請求によって明らかになった再任用審査会の議事録(甲第2号証の2)によれば、不起立による処分をうけたことと、意向確認ができなかったこと以外は全く話題にのぼっておらず、また、校長の再任用に関する内申も4項目すべてが「適」とされている(甲第2号証の3)ことからも、国歌斉唱時の起立斉唱に関する意向確認に答えなかったことのみを問題として再任用を拒否したことは明らかです。それを総合的判断などとごまかすのはなぜでしょうか。


府教委は総務省の通知を尊重するといいながら、事実上無視して、私の再任用を拒否し、実質的に首斬りを行いました。これは、私の教員としての経歴を全面的に否定するもので、絶対に許すことはできません。これによって私は20174月から年金の支給が開始されるまで収入を失いました。私と同じ年に同様の理由で再任用を拒否された○○氏は、非常勤講師としての採用がいったん決まり、使用する教科書まで受け取っていたのに、府教委からの横やりが入り、非常勤講師の採用を取り消されました。(甲第21号証:今年の弁護士会勧告)このような中で、貯金を切り崩して生活することを余儀なくされ、現在は年金の支給を一部受けていますが、全額が支給されているわけではないので、今も大変苦しい生活を続けています。


府教委は、私の再任用に関してとった対応と、再任用を拒否した結果について、過ちを認め、請求通りの賠償を行うよう強く求めます。

      

以上


 

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大阪ネット通信(20年9月9日号)

2020-09-09 19:12:00 | 大阪ネット
大阪ネット通信(20年9月9日号) 「日の丸・君が代」強制反対・大阪ネット

〔安倍辞任!アベ政治・「戦争する国」・「都構想」との闘いは続く〕

 コロナ危機の下でより露わになった新自由主義による医療・社会保障の切り縮めや格差・貧困の拡大。その場しのぎの対策も的外れ、危機を利用しての権力維持もさすがに通用せず、支持率低下の中で安倍は病気を理由に辞任しました。
 しかし政権内の様々な思惑の中で、アベ政治の維持を標榜する菅政権への移行へ。また一方で、失政への「批判」と「やってる感」の演出で、あくまでオリンピック開催をめざす小池やカジノ・万博と「都構想」に邁進する維新等の同じ穴のムジナの面々も蠢いています。
 この間のアベ・自民党の支持率の回復は、まだアベノミクスへの幻想が根強くあることを示しています。また財界・大企業も、現政策のもとで自らの利益を維持できると判断しています。しかし新自由主義政策の根本的な転換抜きには、命と生活を守れないと気づいた多くの市民の意識と行動は確実に変化してきています。
 教育においても、一斉休校指示にもみられた「不当な支配」のあり方やこれまでの教育条件(過密教室等)や教職員の労働条件の異常性を浮き彫りにしました。これらを競争教育やICT化、さらに民営化の推進への根本的な批判へと結びつけていかなければなりません。

〔コロナ禍での「君が代」強制反対等の対府教委要請行動・裁判闘争〕

 大阪ネットとして、下記の概略ような府教委への質問・要請書を提出、現在、回答と交渉を要求しています。またまだ継続している人事委や裁判闘争を、現在の情勢を踏まえて新たな提訴も含めて、今後も闘いを継続していきます。また10月~11月にかけては、アベ・維新政治との対決の重要な局面(「都構想」住民投票・衆院選も?)を迎えます。「日の丸・君が代」強制反対の闘いと結びながら、ともに闘いの前進へご支援をよろしく。

〔予定〕

9/10(木)D‐TaC総会・桜井智恵子さん講演会(18時半~エル)コロナ問題等
  12(土)ZAZA連続講座〔平井美津子さん第1回〕(14時~エル大会議室)
  18(金)19時~大阪ネット会議(19時~エル)
  21~22(休)「アジアから問われる日本の戦争」展(10時~20・18時、エル)
  27(日)反森友デモ(11時~野田中央公園)
10/10(土)第2回領土教育研究会(14時~エル)
11/7(土)大阪ネット総会(14時~エル)予定


コロナ禍での卒・入学式での「君が代」斉唱強制、豊中高校ビラ配布妨害や、府立学校の人権教育への介入、CEART勧告についての府教委への質問・要請書の概略(2020年8月20日)

(1)4月3日付けで「コロナウィルスへの感染防止のため入学式での『君が代』斉唱中止の緊急要請書」を提出。しかし、5月29
   日に、府教委は「学校の再開に係るQ&A」において、「入学式の実施にあたり、国歌については斉唱するものとし」と指
   示。そして6月11日の交渉でも、教育委員会は、「君が代」斉唱の実施をすべきと回答。
  ①東京都・大阪市をはじめ、全国の教育委員会では少なくとも「君が代」の斉唱はしないとの対応がされました(さらには8
   月15日の全国戦没者追悼式においてすらも「君が代」斉唱はされませんでした)が、なぜ貴委員会は感染の危険を最大限避
   けるという対応を取られなかったのか?
  ②学校との話し合いのうえでも、感染の不安から式に出席しなかった生徒については欠席扱いとしないという対応を取ること
   は文科省や府の対策会議でも是とされているにもかかわらず、そうされていないのはなぜか?
  ➂今後の卒業式等でも今回と同様の指示がされるならば、貴委員会は生徒・教職員の安心・安全よりも「君が代」斉唱を優先
   していると言わざるを得ない。私たちはそのような命と人権無視の指示を撤回することを要求します。

(2)豊中高校での卒業式ビラ配布妨害について
 ①今回の平野校長の不法不当な対応についての貴委員会の見解をお示しください。
 ②貴委員会として、公道でのビラ配布は、思想・表現の自由という憲法で保障された基本的人権であることを明らかにし、今
  後、これを侵すような行動を校長が取らないように指導して下さい。

(3)アニメ「めぐみ」・映画「めぐみ」の活用状況に関するアンケート調査について
 ①②(アンケートの目的は何か等)
 ③人権問題としての「拉致問題」に関する指導は、各学校の実情に基づく指導方針を尊重すること。またこのアンケートへの全
  府立校の回答の依頼は、実質的にこうした形態での人権教育の実施を強制することになると考えます。依頼を撤回して下さ
  い。

(4)2019年にILO/ユネスコ教職員勧告適用合同専門家委員会が採択した日本政府に対する国旗国歌強制の是正を求める勧告
    (CEART勧告)について
  特に以下の(a)・(b)についての貴委員会の見解と対応を明らかにして下さい。
  (a)愛国的な式典に関する規則に関して教員団体と対話する機会を設けること。このような対話は、そのような式典に関する教
  員の義務について合意することを目的とし、また国旗掲揚および国歌斉唱に参加したくない教員にも対応できるようなものに
  する。
  (b)消極的で混乱をもたらさない不服従の行為に対する懲罰を避ける目的で、懲戒手続について教員団体と対話する機会を設け
  ること。
  これに合致しない条例や懲戒処分を改めるために「教員団体と対話する」すること。
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9月9日再任用拒否国賠訴訟いよいよ証人尋問:傍聴支援のお願い

2020-09-07 23:01:00 | 裁判

ZAZAの梅原です。

 

次回裁判が目前に迫りました。

9月9日(水)1:30~ 大阪地裁809号法廷です。

裁判も最終盤を迎え、今回は原告本人(梅原)と府教委の元人事課管理主事(現香里丘高校校長)の石村氏

の証人尋問が行われます。およそ2時間程度の予定です。

コロナ感染防止のために傍聴人数が限られ、一度に多くの方に法廷に入っていただくことができませんが、

お時間の許す方は、傍聴していただければと思います。

よろしくお願いします。

 

まだ、場所が確保できていないのですが、可能であれば、裁判後、報告集会を開きたいと思っています。

 

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