不埒な天国 ~Il paradiso irragionevole

道理だけでは進めない世界で、じたばたした生き様を晒すのも一興

Palazzo Per non Dormire

2007-06-05 00:57:00 | アート・文化

サンタ・トリニタ広場に建つ
Baccio d'Agnolo(バッチョ・ダーニョロ)の
設計・建築によるPalazzo Bartolini-Salimbeni
(バルトリーニ・サリンベーニ宮殿)。
ルネッサンス建築の最終段階のモデルとしても知られ、
ラファエロの建築物の影響を受けたクラシックでエレガントな宮殿。

Per_non_dormire_esterno

この宮殿のあちこちに刻まれるサリンベーニ家のモットーが
「Per Non Dormire(ペル・ノン・ドルミーレ)」。
このモットーとともに3本づつ括られた
ケシの花茎も刻まれています。

Per_non_dormire_porta

このモットーの起源は
バルトリーニ家が経済的に成長を始めた1500年代に遡ります。
フィレンツェで商人層が力をもち、
フィレンツェ全体の活力源となり
それぞれが美しい宮殿を競って建てた時代。

Per_non_dormire_cortile

バルトリーニ家は羊毛を商う一族として知られており、
一家のメンバーが他の羊毛組合のメンバーと共に
ヴェネツィアに向かって出かけたことがありました。
それ以前のヴェネツィア出張で
既に大まかな部分はまとまり
最終的な商談調整のための出張だったといわれています。
どの一族が最終契約を勝ち取るかのかかった
重要な商談でもありました。
そんな重要なヴェネツィア出張のある晩の夕食会で、
バルトリーニは自分のライバルとなる
羊毛組合のメンバーのグラスに眠り薬を注入。
知らずに飲み続けたライバルたちは
みな眠気に襲われて自室に引き揚げ
食卓に残ったのはヴェネツィア商人とバルトリーニのみ。
こうして莫大な金銭の動く契約を
バルトリーニ家が難なくものにしてしまったのです。

この契約のおかげで、フィレンツェに戻ってまもなく
バルトリーニ家は一気に富裕の階段を駆け上がり
市内でも屈指の金持ちとなったのです。

一族の生活を根底から変えることとなった
このエピソードを記念して
1520年から1523年にかけて
バッチョ・ダーニョロの設計で建てられた宮殿に
一家のモットー「眠るべからず」と
眠り薬の素となったケシの実を
刻み込んだといわれています。

Per_non_dormire_finestra

1800年代初頭まで一族が暮らした宮殿は
その後、外国人夫婦に賃貸され、
彼らがここにホテル「Hotel du Nord」を
1839年にオープンさせました。
フィレンツェを訪問する著名人が宿泊したといわれています。
Non dormireとあちこちにかかれる宮殿を
ホテルにするというのもなんとも皮肉な話ではありますが。
1961年に完全に修復されて
現在は個人所有となっています。

Per_non_dormire_graffiti

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