不埒な天国 ~Il paradiso irragionevole

道理だけでは進めない世界で、じたばたした生き様を晒すのも一興

L’arte di leggere il tempo con la luce

2007-06-19 07:09:35 | アート・文化

Meridiana_peylon
フィエゾレのVilla Peylonにある日時計

人類は昔から「日時計」を使い、
太陽と地球の関係に関心を持ってきました。
春分から秋分までの期間
こうした日時計を中心に集めた展覧会が
Museo di Storia della Scienza(科学史博物館)で開催中。

夏至に当たる6月21日には
上記博物館前の広場(piazza dei Giudici)に
大きな新しい日時計が設置されます。

太陽に向けて立てられた指針(gnomone:グノモン)が
作り出す影で時を計るシンプルな時計。
その影の長さとアーチの描き方で
時間や季節を知る人類の知恵。

Meridiana_01
Borgo PintiにあるPalazzo Ximenes Panciatichi
(キシメネス・パンチャティキ宮殿)の中庭にある日時計。

イタリアには著名な宮殿や修道院、教会などの
壁や庭に現在もいくつも残っています。
現在正面ファサード修復中のため見ることができませんが
コジモ一世(Cosimo I de Medici)に仕えた
天文学者Egnazio Danti(エグナツィオ・ダンティ)が設置した
サンタ・マリア・ノヴェッラ教会正面ファサードの
環状日時計などはその一例です。

復活祭などの移動休日の多いカトリックの世界では
宗教的な暦を作る上でも、
きちんとした時間の流れを把握する必要があったために
各時代にさまざまな天文学的研究が行われ、
日時計や機械時計も改良されました。
そんないきさつの名残が
サン・ロレンツォ教会の旧聖具室の
天井に描かれた天空図であったり
サンタ・クローチェ教会のパッツィ家礼拝堂の天井画だったり。

フィレンツェのドゥオーモのクーポラを設計した
ブルネッレスキ(Brunelleschi)は
クーポラ建設にあたり、
数学者であるPaolo Dal Pozzo Toscanelli
(パオロ・ダル・ポッツォ・トスカネッリ)の協力を要請しています。
フィレンツェ生まれでパドヴァ大学で学んだ
この優秀な数学家は、クーポラ建築に携わり
建築そのもの以外にも偉大な功績を残しています。
それがドゥオーモに仕掛けられた壮大な日時計。
約90メートルの高さにある指針の作り出す影は
ドゥオーモの床に反映される仕組みになっています。

同じような仕組みの日時計は
既に1000年ごろには
フィレンツェのサン・ジョヴァンニ洗礼堂にも設置されていましたが
残念ながら現在は
光の通り道である小孔は塞がれてしまっています。

1475年にトスカネッリはブロンズの直方体の針を仕込み
太陽光線の通り道となる直径4センチの小孔をあけて日時計を完成。
この小孔の直径と指針の置かれる高さを
緻密に計算して実現したものです。
その当時のこうした日時計の
最も重要な役割は正確な至を計ること。
つまりそれを正確に知ることによって
一年という周期をきちんと把握することができたわけです。
この結果1510年には、ドゥオーモの右後陣にある
デッラ・クローチェ礼拝堂(cappella Della Croce)の
大理石の床に反映される影を証拠に
当時の教皇グレゴリオ13世(Gregorio XIII)を説得して
暦の再編成を要請したのは有名なエピソードです。
これによって現在のグレゴリオ暦が1582年に完成となったのです。

その後新しい装置の開発により
トスカネッリのドゥオーモの日時計はすっかり廃れてしまいましたが、
現在でも毎年6月21日の11時には
大理石に映る影を観察する習慣が残っています。
(サマータイム中なので実際の正午は現行時間の11時)
2005年、2006年はドゥオーモ南サイドのランターンに
足場がかけられていたため
光の通り道を遮断していて見られなかった現象ですが
天気が良ければ今年は見られそうです。

La linea del sole. Le grandi meridiane fiorentine
Santa dell'Amore non amato
会場:Istituto e Museo di Storia della Scienza
   Piazza dei Giudici 1 Firenze
会期:2007年4月23日から2007年9月23日
開館時間:月曜から土曜9:30-17:00
     火曜9:30-13:00
入場料:7,50ユーロ

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