不埒な天国 ~Il paradiso irragionevole

道理だけでは進めない世界で、じたばたした生き様を晒すのも一興

San Givanni Battista

2007-06-26 07:38:41 | アート・文化

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San Giovanni Battista(サン・ジョヴァンニ・バッティスタ)は
福音書の重要な人物であり、イエス・キリストの先駆者。
Zaccaria(ザッカリア)とElizabetta(エリザベッタ)の間に
晩年に授かった息子で、イエス・キリストとは血縁。
彼の生誕はArcangelo Gabriele(大天使ガブリエル)によって
エリザベッタの従姉妹である聖母マリアにも告知され、
これによりキリストを身篭ったマリアは
年長の従姉妹であるエリザベッタを訪問しています。
サン・ジョヴァンニはイエス・キリストよりも
ちょうど6ヶ月早く生まれ(6月24日生まれ)、
早くからキリストを救世主として認識しています。

幼少期より神の声に従い、
荒涼の地を放浪して贖罪と祈りに生き、
駱駝の革の衣服を纏い、
バッタや蜜を食べて暮らしたといわれています。
このため芸術作品では、彼は荒野の果てで独り、
粗末な革を一枚に見纏った姿で描かれることが多いのです。
ユダヤ教の「浄化の儀式」であった「洗礼」に
「改宗」の意味合いを持たせたのも彼自身で、
熱心に改心・改宗を訴えて洗礼を授けています。
その中でもヨルダン川でイエス・キリストに求められ
彼に洗礼を授けるシーンは
数々の芸術作品のテーマとして扱われています。
イエス・キリストへの洗礼行為は
旧約聖書と新約聖書を結びつけるためにも
非常に重要な意味合いをもっています。

しかし熱心な改心・説教が彼の死を招きます。
当時の領主であったErode Antipa
(エロデ・アンティーパ「ヘロデ・アンティパス」)の
結婚を非難して捕らえられ投獄の末、斬首となりました。
Erodiade(エロディアデ)は自分の夫を捨てて
義理の兄であるエロデ・アンティーパの元で暮らすようになり
サン・ジョヴァンニ・バッティスタは
この不義理を非難したのです。
エロディアデの娘であるSalome(サロメ)は饗宴で踊りを披露し
エロデはこの美しい娘に、
その踊りの褒美としてなにがほしいかと尋ねます。
母であるエロディアデから言い聞かせられたサロメは
迷わず「洗礼者ヨハネの首」を望み、
元は斬首する気のなかったエロデもサロメの望みを聞き入れ、
斬首刑としたのです。

芸術品の中では聖人を認識するために
しばしば使われるシンボルがありますが
洗礼者ヨハネを認識するシンボルは多岐に亘っています。
旅行者が持つ長い杖、特に十字架が上部につき
「Ecce Agnus Dei」とかかれた布や紙が巻かれているもの。
駱駝の革の衣服。殉教者の赤いマント。
彼の誕生を信じない父ザッカリアから言葉を奪った天使。

古くから洗礼者ヨハネ信仰は非常に根強く、
現在でも守護聖人としてあちこちで祀られています。
駱駝の革を自分でなめして縫製して衣類としたことから
「仕立て屋」「革なめし職人」の守護聖人。
またキリストを「神の子羊(Ecce Agnus Dei)」と称したことから
彼のシンボルとして描かれることも多いヒツジから
「羊毛梳き職人」の守護聖人。
最期をもたらしたエロデの饗宴でのエピソードから
「ホテル経営者」の守護聖人。
殉教の刀から「ナイフ職人」「ハサミ職人」などの守護聖人。

フィレンツェの守護聖人でもあるサン・ジョヴァンニ・バッティスタ。
この聖人をテーマに扱ったルネッサンス期の作品は多数あり、
最近ではGiuliano Vangi(ジュリアーノ・ヴァンジ)作のブロンズ像も。

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1996年作のヴァンジの作品は
アルノ川をはさんでウフィツィの対岸に立っています。

Vangi02
なんとなく「放浪の人」の雰囲気。
あまり注目されずいつも寂しげな気がするのは私だけ?

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