不埒な天国 ~Il paradiso irragionevole

道理だけでは進めない世界で、じたばたした生き様を晒すのも一興

Il Ponte Santa Trinita

2008-03-04 07:31:30 | アート・文化

イタリア国内でも最も美しい橋の一つとして挙げられる
フィレンツェのアルノ川にかかるサンタ・トリニタ橋。
Santa_trinita
サンタ・トリニタ広場とフレスコバルディ広場を繋ぐこの橋は
フレスコバルディ家(Frescobaldi)の
全面的な経済支援を受けて1252年に作られ
近くにある教会(Chiesa di Santa Trinita)の名を冠しました。
当時は木製で、
1259年にアルノ川で行われたショーを観賞する人々が押しかけ
その重みに耐え切れず崩壊。
その後石造りですぐに再建されましたが、1333年の洪水により崩壊。
この洪水の時には上流のPonte alle Grazie以外は
すべての橋が流されています。
この洪水後の再建には時間がかかり、
1356年から1415年まで製作が続けられ再建。
再び1557年には洪水による被害で崩壊し、
その再建時に現在見られる形での建設となります。

コジモ1世の命により開始された
サンタ・トリニタ橋再建プロジェクトは
バルトロメオ・アンマンナーティ(Bartolomeo Ammannati)が
中心となって1567年から1571年まで進められますが、
デザイン部分ではミケランジェロのアイデアと
アドバイスが取り入れられています。
3つのアーチに使われている楕円をベースにした曲線は
ミケランジェロが手がけた
メディチ礼拝堂内にある墓碑彫刻のベース部分や
ラウレンツィアーナ図書館入り口の大階段に使われている
曲線と同じカーブを描いています。
重たい鎖を二点から吊るしたときにできる放物線を
逆転したような曲線で
この優雅なカーブは
フィレンツェのバロック様式のさきがけとなるもので
芸術的な意味合いも強いものですが、
懸垂線アーチと呼ばれる曲線を利用していて
耐久性が高いデザインでもあり
架橋技術面からも非常に重要な要素として捉えられています。

ボボリ庭園の裏山などから切り出されていた
黄土色のピエトラ・フォルテを使って建設された橋は
再び洪水の被害に遭わないために
流木などを振り分けるように工夫された鋭角の3つの橋脚をもち、
対照的な優雅な曲線との美的調和を保っています。
アーチの部分には白い装飾プレートがつけられ、
橋の4つの角には四季を象徴する彫刻がおかれて
デコラティブになっています。

この四季のアレゴリー彫刻は1608年に加えられたもので
ピエトロ・フランカヴィッラ(Pietro Francavilla)による春と冬、
ジョヴァンニ・カッチーニ(Giovanni Caccini)による夏と秋。
もともとはトスカーナ大公コジモ2世とオーストリアのマッダレーナとの
婚礼祝福のために製作されたものです。

Primavera Primavera

Estate estate

Autunno Autunno

Inverno Inverno

第二次世界大戦終戦間際の
1944年8月4日に撤退するドイツ軍によって爆破され
1958年5月16日に元通りに再現されていますが、
当時既にボボリ庭園裏の採石場は閉鎖されており、
この橋の再現のためだけに
採石場が開けられ必要な採石を行いました。
アルノ川に沈んでいた四季のアレゴリー彫刻も回収されましたが
春の頭部だけはなかなか見つからず、
ようやくすべて回収されて元通りになったのは1961年。