ロッキングチェアに揺られて

再発乳がんとともに、心穏やかに潔く、精一杯生きる

2012.5.4 先月来の通院日に読んだ本―その2

2012-05-04 22:26:49 | 読書
 せっかくの連休、先月来読んだ本をまとめてご紹介するいい機会だ。何やら宿題を背負っているようでずっと気になっていたので。

 1冊目は手塚眞さんの「父・手塚治の素顔」(新潮文庫)。
 漫画の神様、手塚治虫の息子さんである眞さんの著。比ぶるべくもないが、奇しくも天才は1928年生まれで、私の父と、作者は1961 年生まれで、私と、それぞれ同い年である。
 裏表紙には「すべてを犠牲にして、漫画を描き続けていた。でも父は、どんな状況でも、なんとか家族旅行には参加しようとしてくれた-。息子として、長じては同じ表現者として、手塚治虫とともに生きてきた手塚眞が、転載の実像を描く。国民的な人気を誇りながら、自邸を手放さなければならなかったわけ。限界を超えてしまうほど、原稿が遅れてしまった理由。秘話の数々が、ここに明かされる。」とある。
 それにしても、天才の子として生まれるとはなんとも大変なことである。凡人の娘で良かった・・・としみじみ思ったりする。
 手塚治虫さんが転移がんのため60歳という若さで亡くなった時、なんと早い・・・と思ったのを覚えている。が、著者が書いている通り、これ以上もっとやれというのは酷というもの。引退はもちろん、ゆっくり静養しながらのんびりと作品を作っていくなど、性格上あり得なかっただろう、と。これだけ働いて密度の濃い人生を送られたのだから、ほとほと人生は長さではなく、濃さ、だからこそ天才が生まれ、宿命は変えられないのだ、と思う。
 ちなみに父は60歳で定年退職をし、今も健在で、今月無事84歳の誕生日を迎える。定年後の約四半世紀、長かったのではないか、と思う。
 ラストに記載されていた親子対談、父から息子への手紙には何度も胸が熱くなった。

 2冊目はよしもとばななさんの「だれもの人生の中でとても大切な1年」(新潮文庫)。
 公式サイトyoshimotobanana.com発、シリーズ最終で10年目にあたる。ネットで更新されていた日記の文庫化だが、実際にはネットで読むことはなく、毎年購入しては1年分まとめて読んでいた。一粒種のチビちゃんの成長、ご両親との関係等に、いつも心動かされた。
 先日亡くなった吉本隆明さんは、ご存知のとおりばななさんのお父様だ。
 最終章の「ありがとうございました」で、「いつまでもは続けられないからいつやめようかな、と思うたびに心に浮かぶことがあった。それは『両親の死はできれば日記に書かず、自分の中で静かに味わいたいな。書くとしてもそのことを思う連続した日々を書くのではなく、さらっと書きたいな』ということ。だから書いている間に両親がギリギリ生きていてくれてほんとうによかった、と思っている。」と書いておられた。もちろん私生活の全部ではなく、一部とはいえこうして公にすることはやはり精神的にとても厳しいことだろう、と思う。
 私ごときもこうして毎日ブログを書きながら、我が家の恥を晒していることについて、幾ばくかの不安がある。日々登場してネタにされている夫や息子に対しても、申し訳ない気持ちがしないわけではない。このブログをいつまでこのペースで書き続けられるかわからないけれど、記事を書いて頂いたコメントに返信しながら、どうも八方美人のような気がして自己嫌悪に陥ることもある。
 それでもばななさんのメッセージ「同じ時代を生き抜きましょう。そしていい一年をそれぞれの場所で創りましょう」を胸に、これからも細々と書き続けていきたい、と思う。

 3冊目は桐野夏生さんの「I’m sorry,mama.」(集英社文庫)。
 それにしても、桐野さんの本を読み出すと、止まらない。どうしてこんなにどれもこれも面白いのだろう、と首をひねる。
 表紙にはくたびれてひしゃげた箱に入った、薄汚れてカビが生えたような白い靴の絵。これがどういう意味を持つのか、読み終わった最後にもう一度見て、納得した。
 児童福祉施設の保育士だった美佐江が、自宅アパートで25歳年下の夫と焼死。その背景に浮かび上がる女の姿。盗み、殺し、放火する「アイ子」。その目的は何か。繰り返される悪行の数々。次第に明らかにされる過去。救いようのない怒りと憎しみとに溢れた女は、どこからやって来たのか、邪悪で残酷な女の生を、痛快なまでに描き切った問題作、と裏表紙にあるとおり、息も出来ないほどのめり込んで読んだ。
 解説で島田雅彦さんも書いておられるが、「アイ子のごときモンスターにさえも憑依できる桐野夏生はテレビで人気の巫女などよりもはるかに強い霊能力を持っているのではないか?普通、マイナスオーラを吸い過ぎると、病気になるものだが、彼女は平然と、女たちの怨嗟と欲望を解き放ち続けている。それでいて、魅力的なレディーでいられるということはやはり、元々モンスターだからなのか?謎は深まるばかりである。」まさに同感。

 さて、体調。ステロイドを服用していないせいか、昨夜も割とすんなり眠れた。今朝はいつも目覚ましをかけている時間に目が覚めたが、気持ちが悪く、ベッドでもぞもぞしているうちにまたウトウトと眠ってしまった。気づけばすっかり朝寝坊。夫に朝食の準備をさせてしまい、食欲のない中、赤いヨーグルトと果物と紅茶だけ頂いてイメンド80㎎、ロキソニン、マグラックス、ナゼアを飲む。
 ようやく晴れた、とクリーニングを出しに行って帰宅すると、黒雲が出てきたと洗濯物を取り入れるや否や土砂降りの雨。この天気の中、出かけることにすっかり気をそがれる。夫と息子は映画を観に行ったが、私は一人で留守番を決め込む。本を読んでいるつもりがいつの間にかこれまたウトウト。いつもは働いているはずなのに、何ともウトウトばかりの休息日となった。
 最後のロキソニンを飲み、処方された吐き気止めの服用もとりあえず今日まで。明日は具合が良ければ薬から解放される日になる。
コメント (2)
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