ロッキングチェアに揺られて

再発乳がんとともに、心穏やかに潔く、精一杯生きる

2014.9.24 情報リテラシーについて考える

2014-09-24 21:18:07 | 日記
 現代は情報が溢れんばかりの世の中だ。ちょっとネットに足を踏み入れて、検索しようものなら、とても読み切れないほどの活字が猛然と迫ってくる。
 そして、それらは当然のことながら玉石混交。たまたま最初にヒットしたものをすんなり信じてしまうようなことはないだろう。けれど、情報を取捨選択する力がないと、翻弄された揚句、酷い目に遭いそうである。もちろん修復可能なちょっとした痛い目位ならよいけれど、取り返しがつかないことにでもなったら、泣くに泣けない。
 だからこそ、私たちがん患者に限らず、情報リテラシー(正しい情報を自己の目的に適合するように使用できる能力)は今の世の中を生き延びていく中で、人として必須な能力だと思う。

 そんなことを考えていたら、たまたま愛読する朝日新聞静岡版の渡辺先生のコラムが2週連続で情報の壁、情報リテラシーについて取り上げておられたので、以下、長くなるのだが、2回分を転載させて頂く。

※   ※   ※(転載開始)

がん内科医の独り言(2014.9.13)
抗がん剤
 ■患者惑わせる情報の壁 
 「医薬品とは情報を伴った化学物質である」と大学の講義で習いました。当時はぴんとこなかったこの名言も、今、多くの患者に抗がん剤を処方する立場となり、その意味を痛感しています。
 また、薬に対する先入観や間違った風評に阻まれ、正しい情報を伝えることができない壁のようなものが、世間にはあるとも感じています。
 乳がんが肺に転移したNさんにティーエスワンという飲み薬の抗がん剤を処方した時のことです。
 がんが進むとせきなどが出てつらくなるから、そうならないように飲みましょうと薬の目的を説明しました。副作用としては、皮膚の色が黒くなるかもしれない、ちょっと下痢するかもしれないといった薬の情報をまとめた文書を渡しました。Nさんは薬剤師の説明も聞いて帰宅しました。
 1週間後の外来で、「抗がん剤はやっぱり怖い。夫もやめたほうがいいと言うので」と一錠も内服していないことがわかりました。「薬はなるべく飲まない方がいい」という壁です。
 では少し様子を見ましょうと、1カ月半ぐらいお休みしましたが、せきが出始めたため、ご主人にも来ていただき、もう一度説明しました。ティーエスワンの内服を始め、目立った副作用もなくせきも治まり、治療を続けています。
 「抗がん剤は正常の細胞も破壊する」というのもさらに厚い壁です。
 どんな薬でも効果と副作用があります。確かに抗がん剤は睡眠剤や血圧の薬など一般の薬に比べると副作用は強いです。
 しかし、症状を予防する、あるいは今ある痛みやせきなどの症状を軽減させることはできるので、抗がん剤を使うのです。
 もっと分厚い壁は、「抗がん剤は寿命を縮める」というものです。明らかに間違いです。どんなデータを見ても、抗がん剤によって寿命が延びることはあっても寿命が縮むということはありません。
 間違った情報に惑わされ、薬の恩恵を受けられないのは残念です。(浜松オンコロジーセンター・渡辺亨)

(転載終了)※   ※   ※

 “薬はなるべく飲まない方がいい”という壁は、がん患者になる前の私も実践(!?)していた。風邪薬も頭痛薬も、なるべくなら先延ばしで我慢出来なくなってから・・・というスタンスだった。(今、冷静に考えれば、何の自慢にもならないただのおバカさんだ。鎮痛剤は、痛みが出そうになった時に飲むのが一番少量で済んで効果的。痛みが酷くなってからだと、1回飲んだだけでは効かないから、結果的に痛みが長引くことになる。)
 けれど、がん患者になって、薬が命に直結してくればそうもいかなくなった。実際に症状があれば、もう観念して飲むしかない。逆に処方されたものを勝手な判断で飲まずにいて、それまで出ていなかった症状が出たり、酷くなったりしたら、主治医もお手上げだろう。
 この点、点滴は通院時に有無を言わさず身体に入れられてしまうけれど、内服薬は自分で調整出来てしまうのが楽であると同時に、大きな落とし穴になりうるのだな、と思う。

 そして、“抗がん剤は正常細胞も破壊する”という壁について。これはもう身をもって実感している。脱毛も爪や皮膚の異常も手足の痺れもどれもこれも、抗がん剤の副作用であることは間違いない。実際にこれらが酷くなると、がんそのものの症状が出ていなければより一層、治療しているのか体調を悪くしているのか判らなくなることもあり、非常に悩ましい。
 私は抗がん剤を含めてホルモン剤や分子標的薬の治療をエンドレスで続けており、無治療期間はない。だから、抗がん剤だけが寿命を縮めているのかどうかは比較しようがないけれど、腫瘍が小さくなっていたり、増悪していなかったことは何度もあったので、これらの薬を全く使わずに放置していたら、今生きていたかどうかも定かではない。だから薬の恩恵をしっかり受けて今に至っている、と感謝している。

 とはいえ、冷静に考えると、終末期を迎え、抗がん剤の効用よりもダメージの方が大きくなるという分岐点は絶対存在するだろう、とも思っている。その時を迎えることになったら、自分の身体の声にきちんと耳を傾けつつ、主治医が見極めてくれるタイミングを大切にしたい、と思っている。

 そして最新号が、情報リテラシーについての回である。

※   ※   ※(転載開始)

がん内科医の独り言(2014.9.20)
情報活用する力必要
 ■患者のリテラシー
 最近、耳にする「リテラシー」をインターネットで調べると、「与えられた材料から必要な情報を引き出し活用する能力」とあります。多くの人は、自分や身内ががんにかかって初めてがん情報に接します。
 しかし、十分なリテラシーがないとそれに振り回され、不安が増したり、友達を失ったり、体調を壊したりすることになりかねません。
 患者を対象とした市民講座の開始前、聴衆にまぎれて客席にいると、後ろの列から「冷房強いね。体を冷やすとがんは再発しやすいことを知らないのかしら」「ひょっとして私たちがん患者を殺す気?」という会話が聞こえてきました。
 私はそっと席を立ち、寒いと感じている参加者がいることを会場係に伝えましたが、体を冷やすとがんが再発しやすい、と思っているからではありません。
 50代の女性が乳房にしこりがあると外来を受診されました。3センチほどの腫瘍(しゅよう)で針生検の結果、ホルモン療法が効きやすい乳がんと診断。まず1年程度ホルモン療法をして、しこりが小さくなったところで手術を、と提案しました。
 翌日、本人から、友達に勧められ、海藻由来のフコイダンを飲むので、ホルモン療法は受けませんと一方的な電話がありました。
 半年後、夫に付き添われて受診した時には、乳がんは野球ボールぐらいに大きくなり、皮膚も真っ赤に腫れていました。
 また、分子標的薬剤が効いている大腸がん再発の患者が、顔色がすぐれず元気がありません。血液中のアルブミンというたんぱくが減っています。付き添いの姉に聞くと、患者の夫が動物性たんぱく、糖分、塩分は取るな、というので3カ月間、そうしているとのことでした。
 我々は根気よく説明し、患者は肉も野菜も牛乳も、バランスよく食べるようになりました。患者の栄養状態が改善し、明るい笑顔が戻りました。(浜松オンコロジーセンター・渡辺亨)

 (転載終了)※   ※   ※

 冷房で身体を冷やしすぎることは、がん患者だけでなく、遍く健康な人にもよろしくないことだと思う。足湯やホットヨガで身体の中から温めて、しっかり汗をかくことが出来るようになった。私はそれまで低体温気味で、冷え症でいつも手先が冷たく、夏でも殆ど汗をかかない(かけない)体質だったが、それが変わって汗腺が開いて代謝が上がり、体調が良くなっていると感じている。

 高価なだけで訳の分からない(と言っては信じておられる方に大変失礼かもしれないが)サプリ等については、今の私にとってノーサンキューなものである。けれど、これも私の身体のことを考えて、良かれと思って勧めてくださっていると思うと、お断りするのがとても難しい。いろいろ説明するのも心苦しいので、とりあえず御礼を言ってスルーするに限ると思っている。せっかくのお心遣い、本当に申し訳ありません。

 これからは食欲の秋である。何より、食べたいものを我慢しないで美味しく頂き、あまり極端なことはしない。何事もバランスよく、が笑顔への一番の道であると思っている。

 さて、家族の近況。今日は夫が5日目(最後)の夏休みを取って、息子を新幹線停車駅まで送って行くことになっていた。私は出勤したが、昼休みに駅前まで出向いて、2人と一緒に急いでランチを済ませた。帰途、夫は職場の宴会へ向かう予定だったのだが、風邪気味で断念し、そのまま帰宅した。

 私は夕食の支度不要ということで、仕事を終えてからヨガベーシックのクラスに立ち寄った。息子はご機嫌で「新幹線50周年記念弁当」を車内で食し、先ほど無事下宿に到着した模様。
 前期の成績は明日届くというのだから、本人の目の前で開封、とはいかなくなった。なんとも悪運の強い方である。
コメント (2)
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