「家」 @ 鎌倉七里ガ浜 + 時々八ヶ岳

湘南七里ガ浜(七里ヶ浜とも)から発信。自分の生活をダラダラと書きとめるブログ。食べ物、飲み物、犬の話題が多い。

7軒の家(12)逗子市沼間

2007-12-08 11:07:18 | 家の遍歴

先日コメントを下さった青葉さん、「念ずれば通ず」でがんばって下さい。コメント有難うざいました。

さて相模湖の家が売れたので、私は逗子市沼間の家の建築に取り掛かった。近くに仮住まいをしたので、新しい家の工事の進行具合を逐一見ることが出来た。近接するところと工事について若干のトラブルがあったが、まあ、よくあること。なんとか片付いた。いわゆる「輸入住宅」がツーバイフォーの構法で立ち上がって行く。ドアの金具も真鍮でピカピカ。オークの床材がキラキラ輝くように見えた。階段の手すりが描く曲線が優美だ。大量の輸入部材がまばゆかった。床面積もグッと広くなった。家は1997年の暮れに完成した。

建物内外のデザインや配色も凝りに凝った(つもりだった)。しかし竣工後すぐにそれを反省することになった。「良い家にしたい」と力が入り過ぎたのである。「これぞ私の理想の住まいだ」と。だから設計段階であれこれやたらといじってしまう。しかしいじればいじる程、その建築が全体的に統一感をとって成功する確率が低くなるのである。いじり過ぎたことによる失敗。建物の美的完成度を高めるには、シンプリシティーを極めるのが一番楽な道だと悟った。

選んだ住宅地についても少し後になって反省した。ひとつひとつの区画が狭いのである。それは開発されたタイミングが生んだ悲劇とも言える。そこは大手商社が中心的ディベロッパーになり開発して、80年代後半のバブル経済が崩壊する前後に分譲開始された住宅地であった。その頃の地価は非常に高く、ひとつひとつの区画にそんなに大きな面積を与えられなかったのである。初期の建売分譲は、50坪強の土地に35坪ほどの家を建てて1億4000~5000万円ほどで売り出された(今ではそれを5000万円を超えて売りに出そうとすると、売却はあまりスムーズに行かないようだ)。私がそこに土地を買ったのは1996年で、すでに地価は暴落していたが・・・。駐車場が2台分なんて家もあり、加えて必要な、敷地入口から玄関ドアまでのアプローチや階段などを除くと、庭などほとんど望めないのである。「湘南」と呼ぶにはあまりに山奥の、逗子市沼間3丁目の山をスパッと切って作った500戸を上回る開発事業である。今ならおそらく許されない開発であろう。

クルマで住宅地に入るには谷(かなり大きな調整池)を越えるので、長い橋を渡らなければならない。橋げたはものすごい長さである。その橋に何かあると、丘の上の住宅地は孤立する。逗子駅からのバスは夜は便数が少ない。しかも住宅地内にはバスは入らない。バス停からせっせと山を登らないと家には帰れない。丘の上からは周囲の横浜横須賀道路(横横)、逗葉新道、横横のインターチェンジ、横須賀から逗子に抜ける幹線道路(県道)、JR横須賀線等が見える。大きな住宅地の中なのに、どこにいても連続的なクルマの走行音が聞こえる。隣接して巨大な空き地があり、すでに巨大病院が建設されることが決まっているらしい。それが出来れば、住宅地内に入って来るクルマと、その路上駐車も現れ、住民にとってかなりのストレスになろう。

山の上の起伏をならした土地である。場所によってはかなりの高低差があった。垂直に近い擁壁が立ち上がり、階段をどんどん上って入る家も多い。川を堰き止めるダムにも見えるコンクリートの巨大な擁壁。工事も大変で、それだけコストもかかることであろう。しかし地価が高いとそれも価格に含んで十分取引が成立するのである。巨大で垂直な擁壁と、その上の小さな土地。そこに目一杯に建つ家。庭らしき庭はない。擁壁は、小さな家の下でそれを支える巨大なコンクリート要塞の様相だ。私の家もそんな家だった。地価が高いといろいろなことが起こる。地価が高いゆえの悲しい風景だと思った。
コメント (6)
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