夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『サイの季節』

2015年08月02日 | 映画(さ行)
『サイの季節』(原題:Fasle Kargadan)
監督:バフマン・ゴバディ
出演:ベヘルーズ・ヴォスギー,モニカ・ベルッチ,イルマズ・アルドアン,
   カネル・シンドルク,ベレン・サート他

先々週の金曜日、「女は生理があがると最強」とおっしゃるお姉様方と女子会。
別に休みを取らなくても間に合う時間に宴会開始でしたが、
どうせ梅田に出るならば映画を観たくなって、午後に休みを取りました。

シネ・リーブル梅田で2本ハシゴすることにして、本作はその1本目。
イラン出身のクルド人監督によるイラク/トルコ作品です。
アッバス・キアロスタミ監督の作品に助監督や俳優として参加していた人で、
波瀾万丈の人生を歩まれているようです。
イラン国内でスパイ容疑で拘束されていた時期もあり、
現在は国外亡命を続けていらっしゃるのだとか。

本作は実在のクルド系イラン人の詩人サデッグ・キャマンガールの体験に基づく。
イタリアの至宝モニカ・ベルッチはやはり脱ぎっぷり良し。

1970年代の終わり、イランで成功を収めた詩人サヘルは、
大佐の娘であるミナと大恋愛中。

一方、大佐宅の運転手アクバルは、そんなふたりを送迎しながら、
叶うはずもないミナへの恋心を抑えることができない。
あるときついに心のうちをミナに打ち明けてしまい、
ミナの父親から身のほど知らずと怒りを買う。

やがてイラン・イスラム革命が起きる。
黒い気持ちで覆われたアクバルは革命に参加し、恨みを晴らそうとする。
それにより、ミナの父親は国王派の烙印を押されて捕らえられ、
反体制的な詩を書いたとしてサヘルとその妻ミナも逮捕される。
サヘルは国家転覆罪で禁固30年の刑、ミナも共謀罪で禁固10年の刑に。

夫婦離ればなれで獄中生活を送るサヘルとミナ。
新政府で実力者となったアクバルはミナに近づき、
自分ならばミナを自由の身にしてやれると言う。
しかしそれを拒絶するミナ。

ようやく解放されたミナは、サヘルと会える日を待ち望む。
ところがある日、サヘルの死亡通知が届き……。

30年の刑期を終えて出獄したサヘルは、ミナの行方をたどります。
ようやく彼女を見つけるも、彼女は少しも幸せそうには見えません。
彼女には娘が2人いて、獄中で授かった命とおぼしき年頃。
どうしてもミナに声をかけられないサヘルの今と、
ふたりがそれぞれに獄中で過ごした日々が交互に描かれます。

なんとしてでもミナを手に入れたかったアクバルの執念が怖い。
本作や『チャイルド44 森に消えた子供たち』のような、権力に物を言わせて女を手に入れようとする男を見ると、
やはり辻村深月のストーカーについての話を思い出します。
男性の自尊心を傷つけずに愛を拒絶することの難しさ。
自尊心がどうとかという話は本作の肝ではないけれど、
誰も彼もの自尊心を根こそぎ奪い取ってしまったのが革命の世界なのかなと思いました。

クルド人女性によって朗読される詩がとても良かったです。

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