夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『野火』

2015年08月14日 | 映画(な行)
『野火』
監督:塚本晋也
出演:塚本晋也,リリー・フランキー,中村達也,森優作,中村優子,
   山本浩司,神高貴宏,辻岡正人,入江庸仁,山内まも留他

昔は「天使の輪ができてる」とか「緑の黒髪」と言われるほど、
自慢だとは思っていなかったけどよく褒めてもらえる髪でした。
何も気にしなくても大丈夫だったから、
シャンプーもただ香りが好きなものを選ぶだけで髪への影響を考えなかったし、
乾かすのが面倒で濡れた髪のまま寝ることがほとんど。

そんなふうに気を遣わなかったせいもあるのでしょうが、加齢ゆえにどんどん劣化。
髪の毛が痩せてくるのは仕方がないけれど、ずいぶん出てきた白髪。
これはそろそろちゃんと美容院へ行って染めなければと、
前述の『ジュラシック・ワールド』を観終わってから徒歩15分ほどの美容院へ。
人生初のカラーリング後、そこから20分ぐらい歩いて箕面駅へ行くつもりでいたら、
5分ほど歩いたところでタイミングよくバスがやってきて飛び乗りました。

で、梅田まで出て3本ハシゴ。
3本目に観るつもりの作品のみ、シネ・リーブル梅田の席をオンライン予約済み。
その前の2本を観るべく、テアトル梅田へ向かうつもりが、暑い、とにかく暑い。
どこかでお盆のお供えも調達しなければならないし、
買い物のあとにテアトルとリーブルのハシゴはしんどすぎる。

とてもテアトルに向かう元気はなくなって、まずは阪急三番街でお供えを買い、
地下をそのまま歩いてルクア方面へ。
『ジュラシック・ワールド』を観る前にパンを食べたきりだったことを思い出し、
空いたお腹を満たそうと、バルチカの“旧ヤム鐵道”でひとりごはん。
アルコールを摂るのは我慢して、シネ・リーブル梅田までテクテク。
別の日に観る計画を立てていた本作を観てしまうことにしました。

1951年に発表された大岡昇平の同名小説。
1959年にも市川崑監督によって映画化されていますが、私は未見。
今回は監督・脚本・主演とも塚本晋也によるもの。
海外にもカルト的ファンを擁する塚本監督ながら、
構想に20年を費やした本作には出資者が集まらず、自主製作映画として公開。
二度と観たくはないけれど、一度は観なくてはならない作品です。

太平洋戦争末期、日本の劣勢が固まりつつある頃のフィリピン・レイテ島。
戦線にいた田村一等兵(塚本晋也)は肺病を患い、上官(山本浩司)から病院行きを命じられる。
わずかな食糧を携えて田村が到着した野戦病院は死にかけた患者だらけ。
肺をやられたぐらいで来るなと、食糧だけ取り上げられて追い返される。
戻っては上官に怒鳴られ、再び病院へ行けば医者から怒られ、どこにも行きようのない田村。

原野をさまよううち、田村は別部隊の3人と出会う。
民間人が隠し持っていた塩をくすねてきた田村に、
伍長(中村達也)は塩をくれるならついてきてもいいと言い、行動を共にすることに。
島の西海岸パロンポンまで行けばセブ島まで船で連れて行ってもらえるらしいと、
一行はパロンポンを目指して歩きだす。

途中、野戦病院付近で見かけた安田(リリー・フランキー)と永松(森優作)と再会。
足の悪い安田を父親のように慕って肩を貸す永松に声をかける田村だったが……。

熱帯の山野を意識朦朧として迷走する田村。
地獄絵の中で狂人と化していく姿が恐ろしい。
砲火を浴びて積み上がる死体を見るとき、心が押しつぶされそうになります。
美談などいっさいないこの作品は絶望的で凄まじく、
本作の前ではどんな戦争映画も綺麗事に見えるのではとすら思いました。

この狂気から目をそむけることなかれ。

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