夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

映画館が出てくる本

2015年08月28日 | 映画(番外編:映画と読み物)
あまりに暑いから、ヘヴィーな読み物は手に取る気が起こらず、
ついスイスイ読めるものを選んでいた真夏。

マイブームの作家は現在3人いて、
1人目は高野秀行、2人目は三羽省吾、3人目が山本幸久
1人目と2人目の著作すべてを「大人買い」してしまったのが6月。
その直後に読んだのが山本幸久の『ある日、アヒルバス』でした。

バスガイドのデコこと秀子は、東京の観光スポットをめぐるバス会社に就職して5年。
彼女の毎日がおもしろ可笑しくて、またしても著作を全部、大人買い。
別に出版された順に読む必要もなかろうと、
次に読んだのが『男は敵、女はもっと敵』でした。

連作短編集の本作、1話目の主人公はフリーの映画宣伝マン、藍子。
2話目以降、彼女が関わる人たちが数珠つなぎ的に主人公として登場します。
藍子の不倫相手やその妻子、不倫相手への腹いせに結婚した男の再婚相手と、
見る側が異なる楽しみが味わえて面白い。
この繋がり方は『セレモニー黒真珠』とも似ています。

小説として楽しいだけでなく、嬉しいのは映画の話いろいろ。
映画好きが高じて宣伝マンとなった藍子は、
自分が気に入った映画に客を呼ぶために体を張ります。
そんな彼女の姿にシビレる若手宣伝マンや、女好きの長老評論家、
東映まんがまつりでしか映画を観たことがなさそうな配給会社のオッサンなど、
映画関係の登場人物がたくさん。

もう1冊は、まだ大人買いしていないけれど、大人買いしてしまいそうな、
(そしてこれをUPした時点ではすでに大人買い済みの)
吉田篤弘の『それからはスープのことばかり考えて暮らした』。
初めて読んだのですが、『つむじ風食堂の夜』(2009)の原作と併せて読むべき本らしい。

路面電車が走る町に住む主人公の青年は映画が大好き。
だけど、家から映画館までが近すぎても味気ないと、
お気に入りの映画館「月舟シネマ」がある隣町にわざわざ引っ越してきました。
古い映画の脇役の女優に恋をして、彼女の出演作をくりかえし観ています。

青年が住むアパートの大家さんはその名も「オオヤ」というマダム。
商店街のはずれにあるサンドイッチ店「トロワ」の店主は「アンドウ」さん。
そう、アンドゥトロワ。その親父のセンスを許せない小学生の息子。
月舟シネマのポップコーン売りのお兄さんと、街の情景が目に浮かぶよう。
くすっと笑いながら時には涙。実に温かいお話です。

映画も楽しい。本も楽しい。映画が出てくる本があれば一石二鳥。

ちなみに『ある日、アヒルバス』は、NHK BSプレミアムにてつい先日まで放映されていました。
放映前、藤原紀香が出演すると聞き、へ~、誰の役なのかなと思っていました。
だって原作の主人公デコは23歳。
藤原紀香が出演するとすれば、まさかそんな年齢の役はないだろうし、
ならばデコが尊敬する先輩バスガイドの役かなと。
そしてビックリ、40歳の新人バスガイドの話だとぉ。原作の設定無視にもほどがある。
で、観ずじまいだったのですが、面白かったんですかね。

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