夜な夜なシネマ

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『シュシュシュの娘』

2021年09月04日 | 映画(さ行)
『シュシュシュの娘』
監督:入江悠
出演:福田沙紀,吉岡睦雄,根矢涼香,宇野祥平,金谷真由美,松澤仁晶,三溝浩二,
   仗桐安,安田ユウ,山中アラタ,児玉拓郎,白畑真逸,橋野純平,井浦新他
 
ナナゲイにて3本ハシゴの3本目。
 
コロナ禍でミニシアターが苦境に立たされました。
そんな中で立ち上がった入江悠監督。
仕事を失った俳優やスタッフ、また、未来ある学生たちと自主映画を制作し、
全国のミニシアターで公開しようじゃないかと。
 
と謳っている作品って、その意図は素晴らしいけれど、
完成したものはイマイチだったりで、悲しいかな内輪受けに終わっている、
なんてことも大きな声じゃ言えませんが、ありがちだと思います。
でもこれは凄くよかった。こんな作品を撮ってくれてありがとうと言いたいです。
 
地方都市の市役所に勤める25歳の鴉丸未宇(福田沙紀)は、
ほぼ寝たきりの祖父・吾郎(宇野祥平)と二人暮らし。
市では「移民排除条例」を制定しようという動きが活発だが、吾郎はそれに断固反対。
おかげで未宇は上司・牟根田瞳(金谷真由美)から嫌味を言われっぱなし。
でも思う、移民排除条例って、つまりは差別条例じゃないの?
 
勤務先では四面楚歌のなか、ただひとり優しく接してくれていた先輩・間野幸次(井浦新)は、
未宇の亡き父親の友だちだったらしく、頻繁に吾郎のもとを訪ねてくる。
条例制定にも懐疑的な立場を取っていたが、ある日、市役所の屋上から飛び降りて自殺。
 
悲しみに暮れる未宇に吾郎は言う。
「爺ちゃんの余命はあとわずか。墓場まで持っていくつもりだった秘密をおまえに伝える。
鴉丸家は忍者の家系だ」と。ニ、ニンジャって、何よ。
 
吾郎が言うには、公文書改ざんに手を貸したことを苦にして自殺した間野は、
そのときの会談の模様を動画に撮ったはず。
どこかに必ずそれを隠しているから、未宇が見つけて来いと……。
 
吾郎の元の職業を聞いて思い出すのは当然のことながら新聞記者』(2019)。
公文書改ざんを苦に自殺したというのは赤木俊夫さんになぞらえていますし、
条例制定にこぎつけた市長が「来年は桜を見る会を開きましょう」と言うなど、
現実への皮肉バリバリで笑っちゃいます。
 
純血主義の日本。
そりゃ日本なんですから日本人ファーストは誰もが望むところだとしても、
移民を徹底的に排除し、彼らを守ろうとする日本人をも徹底的に痛めつける。
こんなことをする人たちは人間的に信用できない。
いくら今親しくても、少し意見の違うところが出てくれば、簡単に敵視されることでしょう。
 
怖かった。そして未宇のことが頼もしかった。
ふきだしてしまうシーンも多くて、劇場内のマスク越しに笑いが漏れていました。
 
コロナが終わったときにも、恥ずかしい人間になっとったらあかんと思う。

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