夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『ドライブ・マイ・カー』

2021年09月05日 | 映画(た行)
『ドライブ・マイ・カー』
監督:濱口竜介
出演:西島秀俊,三浦透子,霧島れいか,岡田将生,パク・ユリム,ジン・デヨン,
   ソニア・ユアン,アン・フィテ,ペリー・ディゾン,安部聡子他
 
上映時間179分って。長っ。
派手な動きはなさそうな作品だと予想していたので、
もしかすると寝てしまうかもと思いながらTOHOシネマズ伊丹へ。
 
第74回カンヌ国際映画祭で脚本賞を受賞しました。
濱口竜介監督の代表作のひとつが『寝ても覚めても』(2018)。
例の東出昌大唐田えりかの不倫のきっかけとなった作品でした。
『スパイの妻』(2020)の脚本を担当したのもこの人。
東大文学部卒の超インテリだということはこのたび知りました。
 
原作は村上春樹の短編集『女のいない男たち』に収載されている1編。
『トニー滝谷』(2004)、『ハナレイ・ベイ』(2018)、『バーニング 劇場版』(2018)などなど、
村上春樹の短編は映像作家の心を掻き立てるものがあるのでしょうか。
 
舞台俳優であり人気演出家でもある家福(かふく)悠介(西島秀俊)。
妻の音(霧島れいか)とふたり、満ち足りた生活を送っている。
 
しかし、飛行機の都合で出張が1日延びた日、自宅に舞い戻ってみると、
音が若い男を連れ込んで情事に及んでいた。
そのままこっそり自宅を出てホテルに宿泊した家福は、
目撃したことを音に打ち明けられず、その後も普段通りに振る舞う。
 
ある日、思い詰めた表情の音と晩に話す約束をして出かけるが、
帰宅すると音がくも膜下出血で倒れており、目覚めることなく息を引き取ってしまう。
 
2年が経ち、演劇祭で上演される『ワーニャ伯父さん』の演出を任された家福は、
愛車のサーブ900ターボに乗って広島へ。
宿泊先と会場との往復も自分で車を運転するつもりだったのにそれは許されず、
主催者側が雇う運転手・渡利みさき(三浦透子)にサーブを運転させるのだと言う。
不満に思いつつも従うと、みさきの運転は素晴らしく快適。
 
翌日、さまざまな国からやってきたオーディション参加者の中には、
当時の音の浮気相手である高槻耕史(岡田将生)の姿もあり……。
 
きっと眠くなると思っていたのに、意外や意外、3時間平気でした。
すごく好きかと聞かれると私は微妙なのですが、概ねよかった。
これが日本語の通じない海外で上映されたら、より高評価になるのはわかる気がします。
 
言葉が通じなくても高評価になるぐらいだから、
登場人物の心情の言葉による説明はほとんどありません。
それでも心の裡がひしひしと伝わってくる。
 
妻の浮気現場を目の当たりにしたのに、何も見なかったことにする夫。
その後に妻が死亡したときには、『永い言い訳』(2016)を思い出しました。
「もう1ミリも愛してない」という台詞が印象的だったから、
本作も実は妻はそんな気持ちだったのかもなんて思ったりして。
でもそうじゃなかったらしい。浮気は浮気。
お互いがいない状況なんて考えられなかった夫婦。
 
一転して終盤は説明しすぎなのではと思わないこともない。
高槻があれこれしゃべるところでは、こりゃ日本語が言葉として耳から入ってくるよりも、
字幕で観るほうが受けるイメージがいいかもと思いました。
 
芝居の本読みにとても興味が湧きます。
何の感情も入れずにただ棒読みすることの意味。なるほどなぁ。
 
ちなみに原作では黄色のサーブ900コンバーチブルのところ、
映像化するには赤のほうが映えるということでこれになったそうな。
また、原作の舞台は東京だけど、ロケ時の車の通行量の加減で広島に。
ロードムービーを撮るには日本はいろいろと大変っぽい。

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