夜な夜なシネマ

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『ブライズ・スピリット 夫をシェアしたくはありません!』

2021年09月29日 | 映画(は行)
『ブライズ・スピリット 夫をシェアしたくはありません!』(原題:Blithe Spirit)
監督:エドワード・ホール
出演:ダン・スティーヴンス,レスリー・マン,アイラ・フィッシャー,ジュディ・デンチ,
   エミリア・フォックス,ジュリアン・リンド=タット,エイミー=フィオン・エドワーズ他
 
大阪ステーションシティシネマにて。
 
原作はイギリスの作家ノエル・カワードが1941年に発表した戯曲『陽気な幽霊』。
1945年にもデヴィッド・リーン監督が映画化しています。
デヴィッド・リーンといえば『アラビアのロレンス』(1962)や『ドクトル・ジバゴ』(1965)の監督。
彼がまだ駆け出しだった頃の本作をTV版『ダウントン・アビー』のエドワード・ホールがリメイク。
 
ベストセラー作家のチャールズは目下スランプ中。
大物プロデューサーを父親に持つ妻のルースに発破をかけられるが、
何を書いていいのやらまったく思いつかない。
 
そんなある日、夫婦で霊媒師マダム・アカルティのステージを見に行き、
そのイカサマぶりにこっそり大笑いしていたところ、
不備が生じてマダム・アカルティは大勢の観客の前で醜態を晒す。
客たちの怒号が飛ぶなか、興行主は慌てて後始末に走り出す。
 
これこそが執筆のネタになると考えたチャールズは、
マダム・アカルティの控え室へ立ち寄り、
我々の自邸で降霊会を催してほしいと依頼する。
 
さっそく意気揚々とやってきたマダム・アカルティ。
チャールズとルース、それに友人夫妻のジョージとヴァイオレットも同席。
芝居がかったマダム・アカルティの言動に4人とも笑いを抑えられない。
霊など降りてくるはずもなく辞去したマダム・アカルティだったが、
翌日、チャールズの目の前に亡くなったはずの前妻エルヴィラが現れて……。
 
批評家の評価は芳しくないようですが、普通には面白いです。
 
チャールズを演じるのはダン・スティーヴンス
この人を初めて見た作品は何だったか、イケメンだなと思ったのですが、
その次に見た『ザ・ゲスト』(2014)のシリアルキラーぶりが怖すぎた。
その後なんとなくイケメン度が下がったと思っていたら、
こんなコメディまでこなすのですね。なかなか面白い役者です。
 
故人である妻エルヴィラと現在の妻ルースの板挟みになったチャールズ。
ちゃらんぽらんな男ならいい気味だけど、浮気したわけでもなんでもない。
ただ、チャールズの人気著作を書いていたのはエルヴィラで、
しかしチャールズに世間を騙すつもりはなかったし、
エルヴィラも自分が書いたのに夫の手柄になって悔しいなどとも思っていません。
この辺りの描写は、女が作家になっても売れないと言われていた時代の反映かなと思います。
 
降霊会で呼ばれて戻ってきてみたら、夫は別の女と結婚していた。
ショックを受けるエルヴィラは最初こそ気の毒ですが、
途中からは嫉妬に狂う醜い女と化し、やることなすこと全部ひどい。
たとえ嫉妬の向かう先が高飛車な女ルースであっても可哀想。
 
マダム・アカルティ役のジュディ・デンチはさすが。
彼女もイカサマ霊媒師などではない、実に真面目な霊媒師。
亡き夫に逢いたい一心であれやこれやと試しています。
それがやっと実ったのに、降りてきたのは他人の妻で、しかも送り返し方がわからない。
 
ちょっと悪趣味に過ぎる感があります。
しかも最後はチャールズひとりがすべての不幸をかぶる形で。
これまた「女は怖いよ」というひと言に尽きそうで、
もう少しどこか幸せなオチのほうがよかったかな。

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