電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

デュマ『モンテ・クリスト伯』を読む(3)~ダンテス、ファリャ神父に出会う

2006年09月29日 06時48分31秒 | -外国文学
アレクサンドル・デュマの大作『モンテ・クリスト伯』、ダンテスは無実の罪を着たまま、シャトー・ディフ(イフ城)(*)の牢獄に幽閉されてしまいます。初めは待ち、不審をいだき、怒り、絶望し、ついには緩慢な衰弱死を決意しますが、牢獄の壁の向こうにかすかな物音を聞きます。それは、イタリア独立を画策し、ナポレオンによって幽閉されたイタリア人のファリャ神父でした。脱走の通路とすべく掘り進んだ地下道が、計算の誤りで海へ通じずにダンテスの土牢に到達したのでした。
気も狂わんばかりの孤独に陥っていたダンテスは、ファリャ神父の驚くべき工夫を見、その人柄と学識に打たれます。ダンテスの境遇を聞いたファリャ神父が導いた結論は、「密告により利益を得る者を思え」でした。ダングラールとフェルナンとカドルッスの三人が飲んでいたテーブルには、ぶどう酒のほかに紙とインクとペンがあった。そして、検事代理ヴィルフォールが密かに焼却したナポレオンからの手紙は、ノワルティエ・ド・ヴィルフォール、すなわち検事代理の父親にあてたものだったのです。
真相はあまりにも単純でした。復讐を誓ったダンテスは、神父の元で学問に励みます。

デュマの『モンテ・クリスト伯』、今新刊で求めようとすると、子供用をのぞけばなんと岩波文庫の七冊本しかないのですね。古い訳で、こんなサイト(*2)を辞書がわりにしながら読んでいる人もおられるようで。私は集英社の世界文学全集の中の、松下和則・彩子訳を呼んでいますが、こちらは訳が新しく、よみやすいです。古書店などで文学全集の分売があれば、そのほうが入手しやすいのかもしれません。しかし、こういう古典的名作は、「図書館に行って読め」ということなのか。文化として理解しがたい状況でありますな。

(*):シャトー・ディフの遠景~Wikipediaの「モンテ・クリスト伯」解説より

(*2):岩波版「モンテクリスト伯」を読むための用語集
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