電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

モーツァルト「弦楽五重奏曲第2番」を聴く

2013年04月08日 06時05分49秒 | -室内楽
この春、通勤経路は大きく変わり、時間帯によっては大渋滞が予想されるルートを通過しなければなりません。そこで、長距離通勤だった従来と変わらない時刻に出発しております。この時間帯ならば、比較的スムーズに通過でき、通勤の音楽も心安らかに聴くことができます。先週は、ヨセフ・スークがヴィオラで加わるスメタナ四重奏団の演奏で、モーツァルトの弦楽五重奏曲第2番ハ短調K.406(516B) を聴いておりました。

Wikipedia によれば、この曲は、1782年に作曲された管楽セレナードK.388(384b)を、5年後の1787年に弦楽五重奏曲に編曲した作品なのだそうです。基となった管楽セレナードは、歌劇「後宮からの誘拐」との縁が深い作品のようで、2本ずつの Ob,Cl,Fg,Hrn という編成で、実質は五声の、暗く深刻で緊迫した曲風であったとされています。作曲時の年齢は26歳、編曲した時期の年齢は31歳、父レオポルトが死去し、歌劇「フィガロの結婚」「ドン・ジョヴァンニ」などを作曲し、オペラ作曲家として活躍していた時代です。

第1楽章:アレグロ・ディ・モルト、ハ短調。暗く重苦しい主題で始まります。まるで悲劇の幕開けか、あるいは囚われの淑女が運命を嘆くアリアを歌う場面を想像してしまうような雰囲気です。チェロの活躍も顕著で、LP添付のリーフレットで、大木正興氏は、「プロイセン王のチェロの演奏の喜びを考慮にいれている」と考えています。そして、CDに添付のリーフレットでは、結城亨氏が「暗く激しいドラマ」と表現していますが、まさにそんな雰囲気です。
第2楽章:アンダンテ、変ホ短調。曲調は一転して優しい叙情的なものになります。木管アンサンブルによく似合いそうな音楽です。
第3楽章:メヌエット・イン・カノーネ、ハ短調。「カノン風のメヌエット」という意味でしょうか。カノン風に追いかけながら繰り返される音楽は緊張感のあるもので、カーステレオでこの楽章だけをリピートしていると、ふしぎなぐるぐる感にとらわれそうです。トリオ部は、明るいハ長調に変わります。
第4楽章:アレグロ、ハ短調。暗い主題と八つの変奏、コーダという構成を取り、ヴァイオリンとヴィオラが互いにリードを交替しあうような形で曲が進み、ハ長調のコーダで明るく結ばれます。

この曲が弦楽五重奏に編曲された理由として、第3番・第4番と一緒に出版するためではないかとされている記述もあり、「後宮からの誘拐」で割愛した音楽を流用し、ドラマティックで充実した弦楽五重奏曲に生まれ変わらせたのかもしれません。

CDはクレスト1000シリーズ中の1枚で DENON COCO-70514、LPのほうは OZ-7064B という型番のものです。1981年の6月に、プラハの芸術家の家でデジタル録音されており、制作はエドゥアルト・ヘルツォークとクレジットされています。チェコのスプラフォン社との共同制作になる録音です。

参考までに、演奏データを示します。
■スーク(Vla)、スメタナ四重奏団
I=9'16" II=4'29" III=4'47" IV=6'07" total=24'39"

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