電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

童門冬二『小説・田中久重』を読む

2013年04月26日 06時03分53秒 | 読書
集英社文庫で、童門冬二著『小説・田中久重』を読みました。何のことはない、村上もとか著『JIN~仁~』に登場した「からくり儀右衛門」がきっかけです。幕末に精巧なからくり人形が発達し、お茶を運んできたり持ち帰ったりする動作をこなすことは承知していましたが、ロボット技術華やかな現代に、からくり人形への興味があったわけではありません。むしろ、無尽燈や電信機の開発等、後の東芝の祖となる後半生への興味でした。

作者は、どうやら田中久重を、エジソンと同じくアスペルガー傾向の気質ととらえているようです。職人の家に生まれたのが幸いして、見よう見まねで腕を磨き、久留米絣のお伝に頼まれて模様の美しい絣の織り方を工夫します。これは、平面上の模様を直線の糸に写し取ること。言わば、二次元のデータを一次元に変換し、それを再び二次元に戻す方法です。「なるほど!」でした。

時計の技術も優れたものであったそうで、空気砲の開発と応用なども、興味深いものです。同時に、銃や大砲なども作っていたのですね。当時の技術者としては当然のことかもしれませんが、特定の政治的立場に強く与しなかったことが、身の安全を保証したのかもしれないと思います。「八重の桜」などに見る限り、幕末のテロルはそうとうにひどいものだったようですから。

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