電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

山形新聞社編『藤沢周平と庄内』を読む

2020年12月04日 06時01分50秒 | -藤沢周平
図書館から借りてきた本で、1997年にダイヤモンド社から刊行された単行本、山形新聞社編『藤沢周平と庄内〜海坂藩を訪ねる旅』を読みました。「あとがき」によれば、山形新聞鶴岡支社に赴任した寒河江浩二支社長(当時、現在は社長)が、作家が逝去した後の平成9年2月から「その風景を探して」と題して朝刊に連載した20回分と、同年4月から連載した「第2部 ゆかりの人々」と題する10回分を中心に編まれたもののようです。
構成は次のとおり。

第1部 なつかしい風景を探して
1.【ただ一撃】 小真木原、金峯山  お役に立つなら、お試しなさいませ
2.【又蔵の火】 総穏寺、湯田川街道  始末をつけねばならん
3.【春秋山伏記】 櫛引町の赤川  庄内弁の美しさ溢れて
4.【三年目】 三瀬、小波渡  耐える女、一途な女
5.【龍を見た男】 善宝寺・貝喰ノ池、加茂  助けてくれ、龍神さま
6.【夜が軋む】 越沢、摩耶山  「山の精」を呼んだ淫蕩な血
7.【義民が駆ける】 鶴ヶ岡城  百姓といえども二君に仕えず
8.【暗殺の年輪】 五間川(内川)  ずいぶんと愚かなことを
9.【潮田伝五郎置文】 赤目川(赤川)  再開した盆踊りの夜
10.【唆す】 青龍寺、播磨  八十万人の「お粥騒動」
11.【臍曲がり新左】 金峯山周辺  年頃の娘を持つ父の心情  
12.【隠し剣孤影抄・邪剣竜尾返し】 金峯神社  俺の女房だ、あの女は
13.【隠し剣秋風抄・暗黒剣千鳥】 致道館  謀られた藩校の若者
14.【用心棒日月抄・凶刃】 寺々  青江又八郎の歳月
15.【三屋清左衛門残日録】 日本海  日残リテ昏ルルニ未ダ遠シ
16.【秘太刀馬の骨】 千鳥橋(大泉橋)  さあ、早く帰って旦那さまのお夜食を
17.【蝉しぐれ】 城下や近郊の村々  青春の「思い」叶って
18.小鯛の塩焼きやハタハタの湯上げ  心を許した女がもてなす旬の味
19.古里の方言への愛着  言葉と喰べものぐらいは残ってもらいたい
20.ペンネームと海坂の由来  吐き出さねばならなかった無念の気持ち
第2部 ゆかりの人々
1.兄・小菅久治さん  こぶしの木を切っていた
2.幼友達・五十嵐久雄さん  少年時代のつらい思い出
3.幼友達・石川弘さん、石川今朝太郎さん  作文
4.夜間中学同級生・三村千吉さん  飄風も朝を終えず
5.師範学校の同級生・小松康祐さん  テーマは「悪」の登場人物
6.師範時代の同級生・小野寺茂三さん  未発表詩「死の準備者」
7.教え子の1人・大滝澄子さん  好きだった馬酔木とサンシュユの花
8.荘内文学同人・富塚喜吉さん  私もまた人生の失敗者だった
9.句会主宰・畠山弘さん  「大山庄太夫」の一件
10.恩師の娘さん・松田静子さん  吐き出さねばならなかった無念の気持ち
付録 庄内ところどころ

新聞への連載という性格上、1編1編は短く読みやすいものです。新聞記者という職業柄、文章の上手い人が多いのではないかと思いますが、それにしても無駄のない簡潔で明快な文章は流石です。原作をまた読みたくなります。ある意味、この企画が、同紙の藤沢周平関連企画の原動力の一つになっていたのかもしれません。

※本書の本文は、山形新聞社ホームページにある「藤沢周平文学の魅力」中で読むことができるようです。


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