今年11月にニコタッチズザウォールズが解散した。
正直な話、ニコが色々なもの(主にパブリックイメージ)と戦ってたのは、
外側から見ても伝わって来てたので解散のタイミングとしては仕方ないのかな、って思う
全体的に凄く器用貧乏なバンドだったけど、そこが逆に唯一無二の愛嬌として光ってたと思う
ただなんか、色々なものに振り回され過ぎて健全なバンド活動は出来てなかったのかな、という感想もある
まあそもそも終始健全だったらああいう解散の発表の仕方にはならないと思いますしね。
でも、ニコの魅力はそういうある種の人間味にあったのもまた事実
2019年が終わる前に、
初期からアマゾンでレビューを投稿して来た身として最後にこのバンドの好きだった曲をフックアップして置きたくなった
ものすごい個人的なチョイスになりましたが、ライブにも通って来たのでその辺の思い出も交えながらお送りする。
1.そのTAXI、160km/h
この曲で知った。
初めて聴いた時、ミッシェルかブランキ―かって思ったくらい音が尖ってた印象でしたが、
それらのバンドと比べて歌詞に意味がないと言うか、
いや実際意味はあったのかもしれないですが、
完全に互換重視の無意味なものに感じてそこが逆にハイセンスで好きだった憶えがあります
その辺は世代的に向井秀徳とかの影響もあったのかな。と思うと物凄く健全なスタートではある
勿論この頃からサザンみたいな歌い回しも健在でこう書いていくと当初からハイブリッドなバンドだったんですよね。
ただ、この曲は
ニコにとって1回しか作れない類の曲だったようにも思う
ここまで初期衝動剥き出しの曲は後にも先にもこの曲しかない
この曲は最初期の曲でしたけど、
個人的にライブでも後期の頃でも演奏してたイメージがあってある種バンドにとっても特別な曲だったのかも。
2.泥んこドビー
この曲が入ったミニアルバムで「ミュージックスクエア」ゲスト初登場だった記憶
この曲は、はっきり言って面白いですよね(笑
巨人戦がどうのとか、
渡る世は鬼ばかり~の下りって
よくよく考えればただの八つ当たりなんですけど、
妙に印象に残るというか、他にこういう事を歌ってる曲が無いので。
正直仕事の最中にふと思い出す事が多い曲ナンバーワンの疑いすらあります
タクシーと違ってこの曲は独特過ぎるせいかライブで聴いた覚えはあんまり無いんですけど、
幕張メッセのワンマンで突如セットリストに組み込まれててめっちゃ格好良かった記憶がありますね
この曲の時だけアリーナ公演がライブハウスっぽくなってた感覚でそこが最高でしたね。
「泥んこ」って表現がいかにもニコらしくて好みです。
3.アボガド
この曲も好きだった。
ライブでは・・・聴いたような聴かなかったような。
ニコは王道のJロックバンドだと捉えられてたイメージですけど、
この曲を聴いてるとあまりにも変態過ぎてそういうイメージが消えますよね
まさしくぶっ飛んだロックンロールの体現者というか・・・それは、
インディーズのまったく売れてない頃から聴いてたからメジャー以降のリスナーとは感覚が乖離してるんだと思うけど、
しかしこういう
よく意味が分からない、でも、なんとなく意味が分かる気もする、、、っていう
良い意味での曖昧さもまた個人的に考える“ニコらしさ”の一つでした。
焦燥感の表現も切羽詰まった余裕の無さも格好良い、
この曲もまた初期のニコを象徴するような楽曲に仕上がってるように思う。
人気になってから観た千葉LOOKのライブで演奏したのはきっとライブハウスに似合う曲だからでしょう。
その時の「あ、」の部分が格好良すぎて今でもふとした瞬間に思い出しますね。
4.(My Sweet)Eden
インディーズラストのシングル。
それまでのぶっきらぼうなロックンロール路線から、
一転して爽やかな歌ものにイメージチェンジしてた印象で、
解放感のあるメロディに伸びやかな歌声、洗練されたアレンジ・・・と
何もかもが一皮剥けた印象で当時はかなり夢中になって聴いてた覚えがあります
このシングルはプリミティブなんちゃら、とかいう形容で、
シングルに加えてライブシングルがもう一枚収録されている、というシングル2枚組という訳分からん仕様で、
でもその訳分かんない感じが凄くニコらしい気もする、振り返って考えてみると。
「このふざけた世界で」って歌詞が今でもめっちゃ大好きですね。
あらゆる意味でこの曲がニコの転機になった気もする。
5.レオ
一気に飛んで申し訳ないんですが、
所謂ニコが一番売れてた時期・・・に一番好きだったのがこの曲でした
この曲は当時売れ線に果敢に挑んでいたニコ、というか光村氏の精神的な苦悩が垣間見られる、
率直に書くと
「誰も自分のことなんか分かっちゃいない」
という心境をストレートに歌にした曲だと思う
こういう曲を平気で入れてしまっていたのがある意味器用貧乏の要因だったようにも感じますけど、
誰がどう聴いても孤独な心境をコアな表現方法で歌ってるだけの曲に聴こえるので、
この曲もまた剥き出しのニコが感じられる貴重な名曲だとはっきりと思う
何より、
「オーロラ」というアルバムがここからブレイクするぞ!っていう趣向のアルバムだったので、
そういうアルバムの中でまったくポピュラリティとかを無視しているこういう曲が入ってるのが嬉しかった気がする。
そして、個人的にも凍てつくくらいの孤独をストレートに表現しているこういう曲に弱い、というのもある
ライブではリリースツアー以外ではあんまり聴かなかったですね。それで良かった気もする。
この曲はファン人気云々を別として、個人的に大切に聴いている一曲です。
6.サドンデスゲーム
ポップなシングルやキャッチーな売り方を頑張ってる中で、
突如インディーズ時代のような吹っ切れたロックンロールのシングルを出して来た
それが当時嬉しかったし、
いやでも正直ポップな曲はポップな曲で好きだったんですけど(笑
でもこの曲は全然キャッチーな曲じゃないし、まあ古き良きロックンロールですよね
格好良いけどポップとは言えない、でもこの曲を出した事によってあの後のニコの方向性がなんとなく決まった気もする
要するに、ポップにも振り切らないしインディーズ時代の感触も保ったまま上を目指す音像ですよね
それが器用貧乏と称される決定打になった気もするけど、
でもこの曲及びシングルがニコをロックバンドに踏み留まらせた気もして。
あんまり語られる事とかないけど、純粋に美しくて格好の良いロックンロールだと思う。
この曲に関してはもう一つ思い出があって、
高校の頃の知人と一緒にカラオケに行ったときこの曲を歌ったら、
「ニコってこういうバンドだったんだ・・・。」と驚かれたことがあって、
その時
「あ、全然このバンドのこと世間に伝わってないんだな。」と痛感した覚えがある
そういう思い出もあってこの曲は忘れられないですね。
7.容疑者
この曲は前のブログで全曲レビューやってて、
その時のレビューが(自分の中で)凄く会心の出来だった記憶がある
あと当時の読者にこの曲がめっちゃ好きな人が居たのもいまだに覚えていて、
そういう意味でも忘れられない一曲
この曲は、
歌詞の内容が初期と比べて相当内省的だと思うんですが、
ある意味光村さんが大人になったからこういう歌詞が書けた気がして、
そういう意味だとこの曲もまたニコの「進化」を感じさせる一曲だったように思う
この曲は無価値な自分や過去の上手く行かなかった色々に想いを馳せつつ、
それさえも「これから」の正解にしていけたら・・・と願う、
そんな歌詞のテーマ性も見事で完成度の高い一曲だと感じる
こういう曲が外に広まって行かなかったのが個人的には結構残念に思っていて、
でも今からでも良いから名盤「PASSENGER」を聴いて欲しい、と思う自分もいたりする
あの時の自分が正直な気持ちで居たんなら、それはそれで正しい。っていうこの曲も唯一無二のテーマ性だと思う。
8.衝突
この曲は歌詞が暗い
というか、当時の光村さんの葛藤が込められてると思う
大体、「手をたたけ」の後に出すアルバムの歌詞ではない、とも思う(笑
だってこれ“自分は自分なのに、そういう自分が理解されないのは悲しい。”って曲ですもん
光村さんは器用そうでいて、素直過ぎたというか、不器用なのが伝わって来るある意味「らしい」曲
この曲が入ったアルバムには他にも「極東ID」とか「業々」とか色々葛藤してそうな曲が入ってるけど、
それらの曲と比べてこの曲は最後の最後までずっと悩んだまんま終わってしまうので、
良くも悪くも答えがないっていうか・・・でもそんなとこが現実的で大好きで、
当時も後にもよくヘビロテしてたなあ、って思う一曲
ライブでも割と演奏してた記憶がある
今は無き横浜BLITZで聴いたのが音源以上にバッキバキに尖ってて格好良かったイメージですね
個人的にもこの曲の歌詞は痛いくらい理解出来るというか、
誰に言ってもあんま同意を求められない類のパーソナルな心情が反映されていて、
まるで自分の心境を歌った曲のように感じてた思い出がある。楽曲としても小細工抜きのロックンロールで格好良い。
9.夢1号
この曲は、ニコで1番好きな楽曲です
圧倒的なメロディセンス、歌詞の意味の分からなさ、オルタナティブ溢れる演奏・・・
何もかもが魅力的で当時のレビューもめちゃくちゃ気合を入れて書いた記憶がある
でもこの曲は正直客観的に考えても売れてなかったですね(笑
でも、
しんしん雪が降るような繊細なアレンジと洗練された雰囲気、
絶望の中から光を見い出すような音像などどの要素もグッと来るもんしかなくて、
完全に
「ニコにしか作れない曲」に仕上がってると思う
例えば、
「夏の大三角形」も好きですけど、ニコにしか作れない~という感じはしない
どっちかと言えば「こういう曲も作れますよ。」という類の曲ですよね
でもこの曲はいかにも感動系のバラッドに思わせて歌詞は一見して意味不明、っていう
ロックバンドの訳の分からないエネルギーと曖昧の美学を注ぎ込んだ得体の知れない、実態の掴めない楽曲に仕上がっていて
ある意味ニコがニコを超えてしまったような・・・そういうレベルの大名曲だと当時から思ってました
簡単に形容させない、というプライドを感じさせる曲であり、
美しい曲にも悲しい曲にも聴こえる自由さも好き
個人的にはNICO Touches the Wallsナンバーワンの名曲だと思ってます。
10.渦と渦
後期の楽曲
この曲はアレンジがインディーズ時代を想起させるただただ初期衝動のまま駆け抜けるロックンロールという印象で
アニメの主題歌とは思えないくらいバッキバキに尖っていて尚且つ必死で、力強い焦燥感を味わえる名曲
正直言ってこの頃のニコはもう中堅からベテランの域に入るくらいの感じだったんですけど、
そういう中でまだこんな闘志むき出しの曲を作れるんだな。って感動した覚えがある
歌詞の内容もアレンジも余裕を持った大人のエッセンスがまるでしなくて、
ただただ「何か」を得たくて必死に足掻いている諦めの悪い少年性を感じるのが素敵
こうして振り返ってみると、
やっぱりニコはずっと色々なものや悔しさと戦い続けていたバンドだったんだな、と感じます
この曲なんて何一つ満たされてる感じが一切しないのが様々な意味合いで象徴的です
同時期のシングル「天地ガエシ」もそういう趣向の曲で正直どっちを選ぶか迷ったんですが、
ただ純粋に格好悪く足掻いてるという泥臭いイメージからすると個人的にはこっちのがよく聴いてた覚えがあります
でもどっちも良い曲ですけどね・・・ただ、この曲は久々に剥き出しのまま泣き叫ぶ素直なニコを垣間見た気がしました。
結構、
10曲と言いつつも、
みんなが知ってるような代表曲を外してたりもするんですが、
でも自分はインディーズで最初に全国流通した作品から聴いてるので、
どうしてもその時のエッセンスが含まれている楽曲を好んでしまう癖があるようです
でもこれもまた数あるパターンの内の一つに過ぎない、とも思います
そういう中で一番好きな曲が割と後の方の「夢1号」っていうのが個人的に(手前みそですが)いいな、と(笑
寂しい気持ちも勿論ありますが、精神的に限界だったんだろうなあ、とも思うので
複雑な気持ちなのが正直なところです
でも、そんな風にずっとジレンマを隠さずありのままを曝け出す生き様が好きだったんだろうな。とも思います
屋号が障害になる、というのは規模は違いますが自分もちょっとは理解出来るつもりです
ま、どちらにせよ記憶も曲も残っていく、今言えるのはそれだけですね。