どういう訳か? は分からないが、物事をやり遂(と)げることで、何とも言えない晴れやかな気分が訪(おとず)れる。これが達成感と呼ばれる気分である。人はこの気分を求め、他人から見れば馬鹿馬鹿しいことに、ひたすら没頭する訳だ。^^ 例(たと)えば、模型の組み立て、ジグソーパズルの完成とかがある。どうだっ! 俺がやったんだぞっ! と、自慢したい心が見えなくもない。^^
とある町の普通家庭である。夏休みの宿題なのか、早朝から小学校五年の聖司(きよし)はイソイソと工作に励んでいる。
「キヨちゃん、御飯よぉ~~!」
母親の友美が大声で聖司を呼んだ。
「はぁ~~いっ!!」
ここは愛嬌(あいきょう)を振り撒(ま)いて、母親を安心させることが大事…と閃いた聖司は可愛いこえで返した。これで十数分は稼(かせ)げる…と踏んだ訳だ。工作は早朝から始めた効を奏し、あと少し・・というところまで出来上っていた。出来上れば、達成感が得られる上に、両親に自慢もできるのだ。さらに加えて夏休みの宿題は熟(こな)せたことになり、正に一石二鳥(いっせきにちょう)どころか三鳥(さんちょう)にもなるのだ。聖司は頑張った。頑張ったのはいいが、頑張り過ぎて、肝心の材木の心棒がポキッ! と折れた。
「あ~~あっ! やり直しか…」
聖司は溜め息を吐(つ)き、ガックリ! と萎(な)えた。
「何してんのよっ! 早く食べなさいっ!!」
そこへ友美がふたたび現われ、窘(たしな)めた。聖司にすれば、目論(もくろ)んだ一石三鳥どころか、一石マイナスニ鳥となった訳だ。
よくは分からないが、達成感を得るには、下心(したごころ)は抱かない方がいい・・という結論が導(みちび)ける。^^
完