水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

分からないユーモア短編集 (65)物流(ぶつりゅう)

2020年09月26日 00時00分00秒 | #小説

 世の中の物には全(すべ)て流れがある。物流(ぶつりゅう)と呼ばれるその流れは、無論、誰の目にも見えず分からない流れである。この流れが滞(とどこお)ったり加速したりすることで物の過不足が生じ、物価が変動する・・と、まあ経済学の理論的にはこうなるが、現実的には、あっ! みたらし団子パックがねえやぁ~…チェッ! くらいの話である。みたらし団子が売り切れ、そのあとの入荷が遅れて物流が滞ったのだ。^^
 とある町の定食屋である。
「おばちゃん! いつもの味噌煮込みうどん定食っ!?」
「ごめんなさいね、顎川(あごかわ)さん! いつもの味噌がねっ! 長雨で入ってこないのよっ!」
「長雨で入ってこないって、どういうことっ?」
「それがね…。話せば長くなるからっ!」
「語れば短い話だったとか…」
「ふふふ…馬鹿、言ってんじゃないわよっ!」
 そこへ別の客が戸を開け、空(あ)いたテーブルに座った。
「らっしゃい!!」
「ちょいと寒いなっ。しっぽく出来るっ!?」
「はいっ! しっぽく一丁!!」
 奥の厨房(ちゅうぼう)へ威勢(いせい)のいいおばちゃんの掛け声が響(ひび)く。 
 顎川は、味噌は滞ってしっぽくは滞ってないんだ…と、ふと物流を思った。そのあと、味噌しっぽくってあるんだろうか? と、空腹による分からない物流を思った。^^ 
 
                               


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