水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

分からないユーモア短編集 (46)いつもの

2020年09月07日 00時00分00秒 | #小説

 よく分からないが、いつものがないと妙に心寂(こころさみ)しくなるのはなぜだろう。^^ お金はもちろんそうだが、手元不如意なのは困りものだ。というのは個人の見解で、世の中は何もその人個人を中心に回っている訳ではないから当然、そういうことだって起こり得る訳だ。いつものがなくったって、適当な代りの物で満足しよう! ^^
 お盆シーズンのとあるスーパーマケットの一(ひと)コマである。
 一人の客が店員に訊(たず)ねている。
「あれっ!? 毎年、ここにあった落雁(らくがん)のバックはっ!?」
「あの、どういった?」
「落雁のパックだよっ、落雁のっ!」
「落雁? なんです、それは?」
「落雁、知らないのっ!? 落雁は菓子だよっ! 昔のっ! お盆で見るだろっ!? いつものっ!」
「ああ、アレですか…」
「去年は、ここにあったよっ!!」
「ちょっと、お待ちくださいっ! 他の店員に訊(き)いてみます…」
「早くしてよっ、もうっ!」
 しばらくして、他の店員が客に近づいてきた。
「あの…いつものは、今年は無いようです…」
「なかったら、いつものじゃないじゃないかっ!」
「はあ、それはまあ…。レギュラー出演ではなくなる訳ですから」
「ったくっ! ゲストでもいいからさぁ~!」
「はあ、そう伝えます…」
 結局、満足感はないものの、客は代替え品で済ますことにした。
 いつものは、いつもあるとは限らないから、分からないなぁ~、なけりゃ別のをっ! くらいの軽い気分で買い物に出かけよう。^^ 

                               


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