人と人との間には信用力(しんようりょく)という目には見えない力が介在(かいざい)する。目に見えないのだから当然、私達には分からない。^^ その信用力は相手が変わると変化し、A→B、A→C、A→Dの場合では、それぞれ異(こと)なってくる訳だ。Aが抱いているB、C、Dという相手への信用力は違うのである。当然、同じことが相手側のBやC、Dにも言える訳で、Aに対する信用力の度合いも異なることになる。
二人の男が、炎天下のさ中、氷屋でかき氷を食べながら汗をふき、語り合っている。
「いや、それはダメだっ! まあ受け取ってくれっ!」
「今さらいいさっ! 俺も奢(おご)ってもらうこともあるんだし…」
「いやいや、それはそれっ! これはこれっ!」
「じゃあ、ここの払いでチャラってのはどうだっ!?」
「たかが、かき氷代でかっ!?」
「ああ、それでいいさっ!」
近くで二人の話を聞いていた、かき氷屋の親父(おやじ)は、たかが、かき氷代とはなんだっ! と怒れたから、注文もないのにガシャガシャ!! と、機械のハンドルを回し、氷を削(けず)った。その音に二人は会話を止め、親父を見た。二人と親父の目と目が合った。
「ははは…暑いですなぁ~。こう暑いと、私も体を冷やさんと…」
「年代物のかき氷機ですね、親父さん!」
「ああ、こいつですか? こいつと私とは親子のようなもんでしてっ! もう、50年以上にはなりますかねぇ~」
「信用力が違うんですねぇ~。俺とこいつくらいのもんじゃねぇ~んだっ!」
「ははは…。なにせ、修理して修理して50年以上ですからねぇ~」
「俺とお前はっ?」
「出会って20年近くかっ?」
「聞きました? 親父さん。やっぱ、全然、違いますわっ!」
三人は、暑さを吹き飛ばすように大笑いした。
信用力は目に見えず分からないが、期間の長さがモノを言うのである。^^
完