水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

分からないユーモア短編集 (54)才能

2020年09月15日 00時00分00秒 | #小説

 えぇ~~っ!! あんたがっ! …と、思ってもみなかった人の、とんでもない才能に驚かされることがある。人が生まれたとき、誰にも分からない先天的に持っている技量・・それが才能だ。外見上は見えず、分からないから、その人の才能を生かすチャンスは乏(とぼ)しい。本人すら自覚していない場合が多いということもある。^^
 とある音楽事務所の社長とマネージャーの会話である。
「いや! あの娘(こ)はっ!」
「いやいや! そうとも限らんぞっ! あの娘の声には才能が見え隠れする…」
「しかし、ナニが今一(いまいち)…」
「… いや! そう見られんという面(ツラ)でもなかろっ? よ~~く見れば、なかなかチャーミングじゃないかっ!!」
「よ~~く見ればっ! でしょ!?」
「まあまあ、そう言うなっ! 歌は声だからなっ!」
「まあ、いいでしょう! と、なると、あとは曲ですがっ!」
「ああ、その点は抜かりがないっ! 超有名作曲家の幻(げん)先生にお願いしてあるからなっ!」
「あ、あの幻先生が、ですかっ!!」
 マネージャーは、こんな小(ちっ)ぽけな事務所の仕事をあの大先生が…と、疑問に思えたが、社長の手前、そうとも言えず、それ以上は弄(いじ)らなかった。
 そして数カ月が経(た)っていった。伊勢(いせ)海老美(えびみ)のCD♪江の電慕情♪は、才能ある味で有線放送を席捲(せっけん)し、売れに売れた。
 才能には人では分からないナニか、が秘められているのである。^^ 
 
                               


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