水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

分からないユーモア短編集 (58)思いどおり

2020年09月19日 00時00分00秒 | #小説

 物事は思いどおりにはいかない。いかないと、こ自分の非力さを知ることになり、やる気を失(な)くす方もおられるが、こればっかりは事実、ご自分が非力なのだから致(いた)し方がない。^^  力があるといっても、全(すべ)てが思いどおりになるというものでもないが、大方(おおかた)の事象は思いどおりへと靡(なび)く。「あなただけは、いくらお金を積まれたって、いやっ!!」という靡かない一例もあるが、その気持は女性に訊(たず)ねてみないと分からない。^^
 とある財閥総帥の邸宅である。
「なにっ! 担当の執事(しつじ)がいないっ! じゃあ、仕方がないっ! 出来そうな別の執事を呼びなさいっ!」
「かしこまりました…」
 執事長は軽く一礼すると、すごすごと退去した。
 しばらくして、執事長は別の執事を従えて現われた。
「連れてまいりました。マトン専門の執事でございます。ラムの方がよかったのでございましょうか?」
 執事長は自分の地位の危うさ感じていたから、ビクビクしながら言った。
「なにを言っとるんだっ、君はっ! 羊(ヒツジ)じゃないっ! 執事を呼べと言ったんだぞっ、私はっ!!」
「ど、どうも…」
 語尾を暈(ぼか)し、執事長は従えた執事の手を引っぱり、ソソクサと退去した。
 このように、力で威圧(いあつ)することで、返って思いどおりにいかないことも多々ある。その原因は、時と場合で異(こと)なるから、私には分からない。^^
 
                               


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