皆さんもよくご存知かと思うが、お不動さんという有り難い仏さまがおられる。仏さまというには些(いささ)か強面(こわもて)の憤怒(ふんぬ)の形相(ぎょうそう)をされておられるが、その実(じつ)、悪行を成す者以外には、たいそうお優しいそうだ。私は石仏としてお目にかかったくらいだから? よくは分からない。^^
とある夏である。どこにでもいそうな男二人が話している。
「今年も暑いなっ!」
「ああ、まあ夏だからなっ!」
「外では、とても動けんっ!」
「動けるさっ!」
「どうして?」
「よく冷えた外ならなっ!」
「クソ暑いのに、そんな場所あるかよ!?」
「ああ、あるっ! 冷凍倉庫の中っ!」
「馬鹿野郎っ! そんな中にいたら、氷になって死んじまわぁ~!」
「ははは…それは冗談だがなっ!」
「氷といやぁ~、氷の想い出はいいよなぁ~」
「ああ、いい想い出は、なっ! だが、水に融けて動きゃ、消えちまうが…」
「悪い想い出が水で流れりゃいい訳か?」
「ああ、よい想い出は不動の氷に残し、悪い想い出は動かして水に流しゃいいって訳さっ! まっ! 逆になる場合も、あるからなっ!」
「なるほどっ!」
動と不動は、この世で分からない関係にあるのに違いない。^^
完