100円硬貨5枚と500円硬貨1枚とは同じ価値だということは誰しも分かる。だが、はたしてそうだろうか? …と考えるのが、経済学を志す者の立ち位置だ。確かに物を購入出来る価値は同じだが、その利便性は見えず異(こと)なる。そこが価値の分からない違いの面白さである。今日は、そんな馬鹿馬鹿しいお話だ[経済学の貨幣論とは違います ^^]。
とある町の商店街である。どこにでもいそうな中年男が店頭で何やら物色している。そこへ配達帰りの若い店員が戻(もど)ってきた。
「お客さんっ! 何かお探しですかっ!?」
「んっ!?いやなに、ちょいとねっ…」
中年男は煮え切らない返事で暈(ぼか)した。
「さよですかっ! じゃあ、ごゆっくりっ!」
店員は店奥へ消えようとした。そのとき、店員の背に中年男が声を投げた。
「あっ! タコ焼きの棒だけど、ないっ!?」
「? タコ焼きの棒(ぼう)? なんですか、ソレはっ?」
「だから、タコ焼きの棒だよ、棒! 分からないかなあ?」
「分かりません…」
「ほれっ! なんというかなぁ~。あるだろっ? 棒! クルッと回すっ!」
「ああ! 固まってきたところをクルッ! とやるやつですか?」
「そうそう、ソレっ!!」
「アレ専門の棒ってのは、ありません。あんなの、箸(はし)でも竹串(たけぐし)でも、なんでもいいんですっ!」
「そりゃ、ダメだろっ! タコ焼き専門の棒ってのがあるだろ? 箸とかとは全然、価値が違うっ!」
「価値の違いはねぇ~でしょう。クルッ! と回すだけですからっ」
「いやいや、それは邪道(じゃどう)だっ! タコ焼きはタコ焼き専門の道具で作らないとさっ!」
「そうなんですか?」
「ああ…」
このように、価値はその人その人で違い、決まるようだ。^^
※ タコ焼きの棒はタコピックとか千枚通しというそうです。^^
完
物事は思いどおりにはいかない。いかないと、こ自分の非力さを知ることになり、やる気を失(な)くす方もおられるが、こればっかりは事実、ご自分が非力なのだから致(いた)し方がない。^^ 力があるといっても、全(すべ)てが思いどおりになるというものでもないが、大方(おおかた)の事象は思いどおりへと靡(なび)く。「あなただけは、いくらお金を積まれたって、いやっ!!」という靡かない一例もあるが、その気持は女性に訊(たず)ねてみないと分からない。^^
とある財閥総帥の邸宅である。
「なにっ! 担当の執事(しつじ)がいないっ! じゃあ、仕方がないっ! 出来そうな別の執事を呼びなさいっ!」
「かしこまりました…」
執事長は軽く一礼すると、すごすごと退去した。
しばらくして、執事長は別の執事を従えて現われた。
「連れてまいりました。マトン専門の執事でございます。ラムの方がよかったのでございましょうか?」
執事長は自分の地位の危うさ感じていたから、ビクビクしながら言った。
「なにを言っとるんだっ、君はっ! 羊(ヒツジ)じゃないっ! 執事を呼べと言ったんだぞっ、私はっ!!」
「ど、どうも…」
語尾を暈(ぼか)し、執事長は従えた執事の手を引っぱり、ソソクサと退去した。
このように、力で威圧(いあつ)することで、返って思いどおりにいかないことも多々ある。その原因は、時と場合で異(こと)なるから、私には分からない。^^
完
最近の家電製品は機能が複雑で、操作する前に設定の一手間(ひとてま)を必要とする機械が増えている。設定が簡単ならいいが、複雑だとお年寄りにはよく分からない。そうなると、イライラしながらお年寄りは、日長一日(ひながいちにち)その機械とニラメッコをすることになる。^^ やはり機械は誰もがシンプルに購入したあと使えるに限る。^^
とある独居老人の家である。この家の老人が、今か今かと、注文した家電製品の到着を待っている。手動マッサージ機だ。
「毎度っ! どうしますっ! 設定しましょうかっ!?」
突然、入ってきた電気屋に軽く言われ、老人は見くびられた…と感じた。これでも若い頃は工場の技師長だった・・という自負がある。プライドにかけても、ここはっ! …と、老人は瞬間、思った。
「いや、いいよっ! それくらいは出来るからっ!」
「さよですか~~っ!? んじゃ! 支払いはいつもの月末で、よろしゅうございますねっ!?」
「ああ、そうしておくれ…」
電気屋はペコリ! と頭を一つ下げ、笑顔で帰っていった。
それから老人と機械の設定との格闘が始まったのである。^^ 言うまでもなく、老人は設定がさっばり分からない・・という理由からだ。
そして一週間、買われた手動マッサージ機は使われないまま部屋の片隅に放置され、見捨てられている。 設定が分からないと、機械は無用の長物(ちょうぶつ)になる恐れがあるから注意しよう。^^
完
私達が生活する三次元には、必ず! と言っていいほど、正しい解答、所謂(いわゆる)、正しい答(こたえ)がある訳だ。しかし、なぜそれが正しい答なのか? という疑問には誰も触れようとはしない。例えば、宇宙は膨張している・・などと、澄まし顔でそれが正しい解答のように話す学者がいるが、あんた! 本当に見たんかいっ! と突っ込まれれば、…そうなんですからっ! くらいにしか答えられないだろう、だいいち、宇宙が膨張している・・というんなら、その周囲はなんなの!? あんた、その目で見たんかいっ!! と突っ込みたくなるような疑問が湧く。このように、三次元科学では解答が出せない事実が、厳然(げんぜん)と存在し続けている。まっ! どうでもいい分からない疑問だ。^^
夏終盤のとある家庭である。子供部屋では、小学生五年の姉と弟が必死に夏休みの宿題をやっつけている。
「…どうも分からないなぁ? 牛と豚が50匹だろっ? ふ~ん、農家なんだな? だったら、農家で飼っている牛と豚が、と書きゃいいじゃないかっ! こういう問題はシラこいっ!」
と、弟が威張って不平を言っている。そこへ、隣(とな)りの机に坐(すわ)る姉が突っ込む。
「要するに、分からないのよねっ!」
「そんなことはないよ…」
一応、否定した弟だったが、解答が出せない・・という事実は拭(ぬぐ)えない。仕方なく、その問題はあと回しにして、別の科目の問題に進むことにした。
「… ふ~ん、川の上流で見られる石の写真の記号を書きましょう・・か? この写真は、日本のどの辺(あた)りかなっ?」
「なに言ってんのよっ! 牛と豚はどうなったのよっ!?」
「牛と豚? …ああ、牛と豚は、この川の上流の農家に飼われてんのさっ!」
「ったくっ! そんな訳ないでしょ!」
「放っといてよっ! 姉ちゃんは姉ちゃんの勉強、すりゃいいじゃないかっ!」
「まっ! そりゃ、そうだけど…」
このように、解答はなかなか出づらく、分からないのである。^^
完
よく分からないのが気分(きぶん)変化のタイミングだ。機嫌よく「ははは…」と笑っていた人が、あるコトを契機(けいき)に、急に気分を害し、「なにっ!!」と、不機嫌になる場合である。まあ、人によって気分変化の度合いは違うが、一つ言えることは、概(がい)して気分は得体が知れず、分からないということだろう。^^
とある家庭の居間である。ご主人が、小料理を肴(さかな)に気分よく一杯、飲んでいる。テレビ画面はプロ野球で、贔屓(ひいき)の野球チームが勝っているということもある。そこへ携帯音が突然、響いた。
「えっ! ははは…それは態々(わざわざ)どうも有難うございましたっ!」
電話内容は会社の上司からで、課長就任が内定した・・という朗報だった。ご主人の気分は益々(ますます)、よくなった。ところがテレビ画面は、贔屓(ひいき)チームが逆転サヨナラ負けを喫しところだった。ご主人の気分は複雑で、怒りながら笑った。^^
完
えぇ~~っ!! あんたがっ! …と、思ってもみなかった人の、とんでもない才能に驚かされることがある。人が生まれたとき、誰にも分からない先天的に持っている技量・・それが才能だ。外見上は見えず、分からないから、その人の才能を生かすチャンスは乏(とぼ)しい。本人すら自覚していない場合が多いということもある。^^
とある音楽事務所の社長とマネージャーの会話である。
「いや! あの娘(こ)はっ!」
「いやいや! そうとも限らんぞっ! あの娘の声には才能が見え隠れする…」
「しかし、ナニが今一(いまいち)…」
「… いや! そう見られんという面(ツラ)でもなかろっ? よ~~く見れば、なかなかチャーミングじゃないかっ!!」
「よ~~く見ればっ! でしょ!?」
「まあまあ、そう言うなっ! 歌は声だからなっ!」
「まあ、いいでしょう! と、なると、あとは曲ですがっ!」
「ああ、その点は抜かりがないっ! 超有名作曲家の幻(げん)先生にお願いしてあるからなっ!」
「あ、あの幻先生が、ですかっ!!」
マネージャーは、こんな小(ちっ)ぽけな事務所の仕事をあの大先生が…と、疑問に思えたが、社長の手前、そうとも言えず、それ以上は弄(いじ)らなかった。
そして数カ月が経(た)っていった。伊勢(いせ)海老美(えびみ)のCD♪江の電慕情♪は、才能ある味で有線放送を席捲(せっけん)し、売れに売れた。
才能には人では分からないナニか、が秘められているのである。^^
完
皆さんもよくご存知かと思うが、お不動さんという有り難い仏さまがおられる。仏さまというには些(いささ)か強面(こわもて)の憤怒(ふんぬ)の形相(ぎょうそう)をされておられるが、その実(じつ)、悪行を成す者以外には、たいそうお優しいそうだ。私は石仏としてお目にかかったくらいだから? よくは分からない。^^
とある夏である。どこにでもいそうな男二人が話している。
「今年も暑いなっ!」
「ああ、まあ夏だからなっ!」
「外では、とても動けんっ!」
「動けるさっ!」
「どうして?」
「よく冷えた外ならなっ!」
「クソ暑いのに、そんな場所あるかよ!?」
「ああ、あるっ! 冷凍倉庫の中っ!」
「馬鹿野郎っ! そんな中にいたら、氷になって死んじまわぁ~!」
「ははは…それは冗談だがなっ!」
「氷といやぁ~、氷の想い出はいいよなぁ~」
「ああ、いい想い出は、なっ! だが、水に融けて動きゃ、消えちまうが…」
「悪い想い出が水で流れりゃいい訳か?」
「ああ、よい想い出は不動の氷に残し、悪い想い出は動かして水に流しゃいいって訳さっ! まっ! 逆になる場合も、あるからなっ!」
「なるほどっ!」
動と不動は、この世で分からない関係にあるのに違いない。^^
完
成果(せいか)を得るには、それ相応の努力や算段(さんだん)がなければ達せられない。成果とは字義(じぎ)の通り、果実が成る[得られる]という意味だ。^^ 美味(おい)しい桃や林檎(りんご)、蜜柑(みかん)を収穫するには、やはりいろいろとケア[手入れや管理]が必要になってくる。桃の場合だと、二月の花芽が膨(ふく)らむ前に二度ばかり殺菌消毒をするのだが、これを怠(おこた)れば縮葉病、黒星病などが発生し、樹勢を損(そこ)なう。で、桃は実らない・・とかなんとかの分からない小難(こむずか)しい話は、どぉ~~でもいい訳だが…。^^
二人の年老いた男が宝くじ売り場近くのベンチに座り、なにやら談義をしている。
「どうです? 何か成果らしきものは出ましたかっ!?」
「いや、それがね。ムコウよりココで買った人の当たりクジが結構、多いんですよっ!」
「調査されたんですかっ!?」
「いやまあ、そんな訳でもないんですが…。ココで買った人にそれとなく訊(たず)ねた結果を集計したまでです…」
「ということは、ムコウよりはココの確率が高い・・ってことになりますが…」
「はあ、まあ…。訊(き)いた結果では、安いのがココは多かったですね。そんなことですから、高い額は出ないでしょうが…。まあ、当たりクジが出る確率は高い、と…」
「いや、高いのも分かりませんよっ!」
「はあ、こればっかりは分からないですが…」
宝くじの当選発表の日が巡った。ココではなく、ムコウで最高額の当選くじが出た。
成果を得るには、より確実な調査が必要となってくる。国会で問題になったデータが、それに当たるだろう。^^
完
なにもテレビ番組の宣伝をしている訳ではないが、骨董(こっとう)は実益と趣味を兼(か)ねた人々の楽しみである。実益とは万一の場合の財産になる意を示し、趣味は集める楽しみになる・・ということだ。^^ どうしてこんなものがっ! と思える品(しな)が重要文化財級の逸品(いっぴん)だったりして、なかなか奥深い世界だ。^^
早朝の、とある骨董屋である[この骨董屋は過去の短編集に幾度(いくど)か登場している]。店主が店奥(みせおく)から現われ、表(おもて)に陳列(ちんれつ)された品々(しなじな)の埃(ほこり)をパタパタと叩(はた)き始めた。そこへ、現われなくてもいいのに現われたのが、これもいつやら登場した客である。
「あの…」
「んっ? …おはようございます? ? いつやら、お見かけしましたねっ!?」
店主は振り返って訝(いぶか)しげに客を窺(うかが)った。
「ああ、はい。この前…」
「そうそう! 寒山(かんざん)の掛け軸を持ちこまれたお方ですね、確か…?」
「ええ、その客です」
「その後、どうなりましたっ!?」
「いや、それがねっ! 偉(えら)い騒(さわ)ぎになりましてっ!」
「どんなっ!?」
「私がペラペラ喋(しゃべ)ったのが悪かったんですがね。国の文化財ナントカの偉いお方が来られてまして、是非、お譲り願いたいと…」
「懇願(こんがん)された、と、こういうことですかっ!?」
「ええ、そうなんですっ! どうしましょう?」
「どうしましょうと言われましてもねぇ~。こうしましょうと、私の口からは申(もう)せません。お客さんのお気持次第ですから…」
「いや、ですから、アドバイスかなにか、お聞きしたいと思いましてっ!」
「さよですか~。そういや、そんなことが以前ありましたね、確か…。随分、前の話になりますが…」
「そ、その方、どうされましたっ!?」
「いや、後々(あとあと)の話なんですがね。なんでも、まだお考え中だとかなんとか…」
「ええっ!!? 今でも、ですかっ!?」
「はい、今でも…。どうしていいのかよく分からないそうで、先延ばしされているそうです」
「それって、かなり前ですよねっ!?」
「ええ、かなり前です。なんでも、最近は、国から余り来なくなった、とか言ってられましたねっ!」
「いいこと聞きましたっ! 私もそうすることにします。どうもっ!」
いつやらの客は、喜色満面(きしょくまんめん)にスゥ~っと風のように消え去った。
「なんだよ、朝っぱらからっ! ああ! 時間をムダに、しちまった!!」
店主は少し怒れたのか、パタパタパタッ…! と少し粗(あら)めに、ふたたび叩き始めた。
骨董はよく分からない価値を秘め、人を一喜一憂(いっきいちゆう)させるようである。^^
※ 寒山とは、私が創作したあの超有名絵師、猿翁寒山(えんおうかんざん)です。^^
完
生まれた以上、どう生きようとそれは本人の自由で、誰もどうしろ! こうしろ! とは言えない。どう生きるのが正解なのか…という生き方の答はない訳で、分からないまま誰もが生きているのである。かく言う私も、生き方など分からないまま生き続け、今に至った…と回顧しているようなことだ。^^ 子供の頃は、爪から先も今に至る人生を歩もうとは思ってもみなかったということである。まあそれでも、今に至ってしまった以上、どうしようもない。幼少期に自分に適した生き方が分かればなんの問題もないが、分からないまま生きていくのが私達の人生なのだ。「そうなのよぉ~、まさか私がさぁ~、オカマバーで働くなんて思ってもみなかったわよっ!」と言われる男性だっておられることだろう。^^
とある高校の進路指導室である。生徒と教師が机椅子で対峙(たいじ)し、話し合っている。
「そら、君がそうしたいっ! と言うんなら、そうすればいいさっ! 先生は止め立てはせんっ! 生き方は君の勝手だ。ただしっ! あとから後悔(こうかい)しって、先生は知らんぞっ!」
「はいっ! それじゃ、そういうことで…」
「しかし、東大が間違いない君がだっ、墓石(はかいし)を彫(ほ)りたいなんてなっ!」
「それが、子供の頃からの僕の夢ですからっ!」
「そうか…。それじゃ、俺のも頼んでおくかっ! ははは…」
「分かりました。予約ということで…」
教師は、おいっ! 冗談だっ! とは思ったが、そうとも言えず、笑って暈(ぼか)した。 どう生きようと生き方は自由だが、それが正解なのかは誰にも分からない。^^
完