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元気な国が見当たらないヨーロッパ

2021年01月24日 | 政治・経済
ヨーロッパに目を向けても元気な国はありません。
だいたいヨーロッパは第二次世界大戦後、戦争でどの国も経済は崩壊していましたし、冷戦で東西に二分されてしまいました。さらに、それまでヨーロッパ経済を支えていた植民地が目を覚まし、次々と独立していきました。

つまり、ヨーロッパはボロボロの状態から再出発しなければならなかったのです。
当然、新しい産業を興して立ち直っていかなければならなかったのですが、あまりにも荒廃していたため、それもうまくいきませんでした。

そこでヨーロッパはEU統合という道を選びます。ユーロという単一通貨をつくり、アメリカ、ソ連、および日本に対抗する経済圏を構築していこうというわけです。

しかし、もともとヨーロッパ大陸では国境を接する国同士が絶えず戦争を繰り返してきた歴史があります。国の歴史も文化も違いますし、産業構造も違います。それが一緒になろうと言っても簡単なことではありません。だいたい無理なことだと言ってもいいかもしれません。

1958年のローマ条約(欧州経済共同体設立条約と欧州原子力共同体設立条約)の発効から1993年の欧州連合の創設を定めたマーストリヒト条約の発効を経てやっと誕生したEUですが、参加国の足並みがなかなか揃わない状態が続く中、2008年のリーマン・ショックで大きな打撃を受け、その後も経済の低迷は続いています。

2010年には、ギリシャを発端とする欧州ソブリン危機に見舞われましたが、今もスペインやイタリアなどの金融破綻が心配されています。

また2015年11月13日にはパリ同時多発テロ事件が、2016年3月22日にはブリュッセル連続テロ事件が発生して世界に大きな衝撃を与えました。

観光客は激減し、EU各国はそれまで自由だった国境警備を厳格化したため、経済活動にも大きな支障が出ています。

そして中東から押し寄せる難民問題が重くのしかかっています。
難民を受け入れるには莫大(ばくだい)な金がかかります。その原資はそれぞれの国の国民が納める税金です。ただでさえ、収入が減って生活が苦しいのに、難民救済のために自分たちの税金が使われることに大きな不満を覚え、難民に対して排他的な行動をとる人たちも増え、不穏な空気に包まれ始めています。

また、EUの中で唯一元気のよかったドイツもフォルクスワーゲンの排ガス不正問題や投資している中国経済の減速問題などを抱え、金融機関への影響が心配されています。

(日下公人著書「『日本大出動』トランプなんか怖くない(2016年6月発刊)」から転載)

---owari---
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