世界に進出すると言えば、すぐに、「武力をもって相手を押さえつける」「資本力をもって相手を圧倒する」、あるいは、「相手より優れた技術をもって支配する」という構図を思い浮かべる人が多いようですが、それはアングロ・サクソンの発想です。
アングロ・サクソンは大航海時代から、力をもって海外に進出し、相手に仕方なく思わせるように仕向けることで植民地を広げ、そこに住む人々を支配して富の収奪を繰り返してきました。
その構図は、第二次世界大戦終結から70年以上が経った今も形を変えて続いています。たとえば多国籍企業の存在がその典型です。
多国籍企業は、冷戦後の世界経済の中で、インターネットの発展と共に大きく成長してきましたが、その存在理由の最上位に位置づけられているのは利益の追求――まさに金を儲けることが正義だと言わんばかりの存在です。
グローバルスタンダードと称して、自分たちがつくったルールを、より力のない国や企業に一方的に押し付けることは当然だと考えています。また、嘘(うそ)をつくのも騙(だま)すのも平気です。相手国やそこで暮らしている人々の生活や文化などまったく気にかけません。金儲けのためには手段を選ばないのです。
その結果、世界規模で貧富の差が拡大し、新たな紛争の火種やテロの脅威が生み出され続けています。
それがまた、世界の国々にいわゆる国家主義を台頭させつつあります。
たとえば、「メキシコとの国境に、メキシコに金を出させて万里の長城をつくってしまえ」という過激な発言で、アメリカの有権者を熱狂させている大統領候補のドナルド・トランプ氏はその典型です。
あるいは、ヨーロッパでは、中東から押し寄せる難民に対する激しい排斥運動も起きています。「とにかく自国さえよければいいんだ。他国のことなどかまっていられない」という動きが広がっています。
しかし、世界経済がこれだけ一体化してしまった今、自国のことだけに目を向けていては何ひとつ解決できません。多くの人は、そのことに気づき始めており、支配より理解と協力という安倍首相と日本が示す方向に期待を寄せ始めています。
およそ、日本のメディアでいろいろ発言しているインテリを自称する人は、様々な都合の良い数字を並べ立てて日本経済は悪化の一途を辿っていると騒いでいますが、彼らはアングロ・サクソンの発想に毒されており、数字以外の現実が見えていないのです。そもそも、その数字の見方も怪しいものです。
たとえば、日本は休日だらけの国になりましたが、それでも国民所得が横ばいであれば、休みの増加が成長率です。休み時間に若い人がしていることは新しい勉強ですが、古い人には遊んでいるとしか見えません。
では、力による支配の時代の後に来るのはどんな時代なのでしょうか。
それは、もっと人間的な価値観に重きを置いた時代です。
それを主導できるのは、柔よく剛を制する力を持った日本だけです。
だから私は、自信を持って「日本が世界に出勤する時代がやってくる」と言っているのです。
(日下公人著書「『日本大出動』トランプなんか怖くない(2016年6月発刊)」から転載)
---owari---
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