ヨーロッパに目を向けると、2016年6月に英国が国民投票を行い、欧州連合(EU)から離脱する選択をしたことが日本に衝撃を与えた。ほとんどの国内メディアがトランプ氏の米大統領当選の報と同じく、「世界に混乱が起きる」という見通しを述べ、「英国は誤った選択をした」と報じた。
主要新聞の社説の見出しを拾ってみよう。
・『読売新聞』英国EU離脱へ 世界を揺るがす残念な選択だ
・『朝日新聞』英国がEU離脱へ 内向き志向の連鎖を防げ
・『毎日新聞』英国EU離脱へ 混乱と分裂の連鎖防げ
・『産経新聞』英国のEU離脱 欧州統合の理念失うな
・『日本経済新聞』は上下の二回に分かれ、「英EU離脱(上)世界経済と秩序の混乱拡大を防げ」「英EU離脱(下)大欧州の歩みをもう後退させるな」
である。各紙横並びの報道、社説で、内容的に大差ない。
そもそもEUの誕生は、加盟各国の主権国家としての権利を制限するが、同時に「欧州」という歴史的な共同体を復活させ、アメリカという大きな極に対峙するための決断だった。その象徴がユーロという統一通貨である。
この中で英国は、独仏が主導する欧州統合の構想には懐疑的だった。ユーロも導入せず、独自の路線を歩んできた。英国はEU域内で輸出の五割を占めるが、域内各国の最大の輸出相手も英国であり、相互に利益はあった。
しかし一方で、多額のEU運営資金を負担し、ギリシャなどの金融危機が起きると援助を求められてもきた。それに加えて、年間約30万人にも達する移民や難民が、英国民の雇用や社会の安定を脅(おびや)かしかねない状況に「英国第一」を選択した。国家主権を制限してまでEUに留まる必要があるのかと考えても不思議ではない。
これに対し、たとえば『日本経済新聞』の社説はこう訴える。
英国民のあいだに<主権をとりもどせ、といった扇情的な声も聞かれた>とし、<国民投票の結果が示したのは、反移民や反EUの感情が経済合理性をはるかに超えて強い、という現実だ>と述べつつ、<経済のグローバル化そのものは止まらない。「国境」をかつてのように復活させて市場を分断すれば、成長の機会をみすみす逃してしまう>という。『日本経済新聞』によれば「国境」は成長の機会を逃す障壁となる。
しかし、経済成長が必要だとしても、それは「誰のための、何のための成長」であるかが問題である。「経済成長」はとどのつまり「経世済民(けいせいさいみん):世を治め、人民を救うこと」につながらなければ空しいものでしかない。
---owari---
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