アメリカの若年層失業率は好景気の影響で改善してきたが、2年前までは14%であった。日本が5%未満であることと比べると、就労そのものが厳しかった。働いて奨学金を返済しようにもできない現実が、若者の前にある。それでも奨学金ローンの金利は下がらない。
これらは何を意味するか。金融資本に主導されたグローバル経済は、あらゆるものを金儲けのビジネスにするということである。これらを正当化するために彼らは「自由競争」「市場原理」「自己責任」を主張する。
ちなみに日本にも、この言葉が溢(あふ)れかえった時代がある。いまもこれを声高に口にする政治家や経済学者がいる。安倍首相をその仲間に数える向きもある。
たしかに安倍首相の経済政策に問題や疑問がないわけではない。しかし首相は「再チャレンジ」できる社会を掲げて財界のトップを回って給与のアップを要請している。これはアメリカにはないことである。
環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)に反対する立場でトランプ氏は大統領になった。日本では「自由市場の経済ルール」を主導するためとして国会で条約案を批准(ひじゅん)したが、これは当初構想されたようなかたちでは成立しないだろう。安倍首相は今一度日本の何を守るのかという根本に立ち返って経済政策を考えてほしい。
アメリカの問題に戻ると、国を支える中核の人々がグローバリズムによって疲弊(ひへい)しながら、アメリカの軍事費は2015年で5960億ドルにも上る。円に換算すれば約72兆1160億円である。
先にアフガンからの駐留米軍の完全撤退を断念したことに触れたが、なぜアメリカ人の命が失われ、なぜアメリカ人の財貨が失われるのか。もっとアメリカ国民を大切にしろ――となる。トランプ氏が「米国第一」を訴えたのは国民感情として自然である。
トランプ氏のキャラクターを承知したうえで、過激な言葉の表層に踊らされるのではなく、中身を見ていかなければならない。当選後、彼が過激な物言いを封印し、現実と自説のあいだにある正誤を確認しようとしていることを見過ごすべきではない。
---owari---
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