今日も国際関係アナリスト・北野 幸伯さんのメルマガからお伝えします。
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全世界のRPE読者の皆さま、こんにちは! 北野です。
(@本のPRがありますが、依頼されたわけではありません。)
先日は、「トランプ有罪!アメリカ内戦勃発までのシナリオ」というお話をしました。
これに関して、読者の平野さまからメールをいただきました。
以下転載。
北野様
いつもRPEを拝読しています、平野です。
今日の配信(★トランプ有罪!アメリカ内戦までのシナリオ)で、バイデン氏が大統領選に勝った場合は内戦が起きる可能性があるとの指摘がありました。
ここで北野さんが仰って(念頭に置いて)いる内戦とは、どの程度のものなのでしょうか。
私は内戦に詳しくないのでまずはネット検索してみたところ、辞書的には単に「一国内における、同じ国民どうしの戦い」とありました。
また、「毎年少なくとも 1,000人以上の戦争関連の死亡者を出す圏内の紛争で、(以下略)」とするものもありました。
いずれにしても内戦となるとトランプ支持勢力vs米軍ということになるでしょうが、トランプ支持勢力が米軍に打ち勝って政権を奪い取れるとは思えません。
もしくは、正攻法ではなく、ゲリラ戦やテロ活動に転じていくということなのでしょうか。
このような感じで、北野さんが指摘される「内戦」の意味をはかりかねています
ご解説頂けますと幸甚です。〉
―――
私のイメージする「内戦」は、要するに、「アメリカ人とアメリカ人が殺し合う状況になる」ということです。
内戦は起こるのか?
起こるとしたらどの程度の規模になるのか?
それについては、状況がとても流動的なので、正確に予測できる人は一人もいないでしょう。
ただ私が言いたいのは、「アメリカは、内戦が起こってもおかしくない状況だ」ということです。
なぜ?
最近、天才地政学者、天才戦略家・奥山真司先生の
◆『新しい戦争の時代の戦略的思考』
詳細は↓
を読みました。
この本の中で奥山先生は、カリフォルニア大学バーバラ・ウォルター教授の研究が紹介されていました。
彼女によると、「内戦が起こりやすい体制」があるのだそうです。
ウォルター教授は、政治体制を大きく三つにわけました。
一つ目は、「デモクラシー」(民主主義)。
民主主義国家では、内戦は起こりません。
というのも、何か不満があれば、選挙で争うことになるからです。
二つ目は、「独裁体制」です。
独裁体制でも、内戦は起こりません。
たとえば、習近平の中国とかプーチンのロシアで内戦は起こりにくいのです。
問題は、三つ目です。
三つめは、「アノクラシー」(=民主制と独裁制を混合する体制、部分的な民主主義)です。
ウォルター教授によると、「アノクラシー」は、「もっとも内戦が起こりやすい体制」なのです。
そして彼女は、アメリカはもはや民主主義国家ではなく、内戦が起こりやすい「アノクラシー」だと断言しています。
では、いつアメリカは、「デモクラシー」から「アノクラシー」に変化したのでしょうか?
2016年、大統領選でアウトサイダーのトランプが勝利したとき、アメリカには確かに民主主義が存在していました。
(ロシア政府の高官たちも、「アメリカって、マジで民主主義が存在していたんだ!」と驚いていました。)
ところが2020年、トランプが選挙結果を認めなかったことで、「アノクラシー」になってしまったのです。
ここでのポイントは、「選挙不正が行われたかどうか?」ではありません。
トランプが、「選挙結果を認めなかった」ことで、民主主義制度にヒビが入り、アメリカが「アノクラシー」に転落したということなのです。
ご理解いただけるでしょうか?
選挙があった。
自分が負けた。
すると、「選挙で不正が行われた。私はこの結果を認めない。私が勝ったのだ!」と主張するのは、民主主義のシステム自体が相当揺らいでいるのです。
私は昨日のメルマガで、以下のように書きました。
〈問題は、選挙でバイデンが勝って、トランプが負けたときです。
トランプは、ほぼ確実に、
「大統領選挙では大規模な不正が行われた。ほんとうに勝ったのは私だ!」
と宣言するでしょう。
そして、アメリカ全土で大規模なデモが起こります。
そして、大規模なデモが大規模な暴動に発展していく。
大規模な暴動が、内戦に転化していく。
こういうシナリオです。
アメリカの弱体化を望む勢力、具体的にはプーチン・ロシアと習近平の中国が、トランプ勢力を支援するでしょう。
今まで、「アメリカで内戦が起こる」といえば、「トンデモ陰謀論」でした。
しかし、
「バイデンが勝ったらトランプはその結果を認めない」
というのは、「めちゃくちゃありそうだ」と、皆さんも思うでしょう?
なぜなら、彼は2020年の選挙で、すでにそうしたからです。
次に、「大規模なデモが起こる」というのも、「あり得る」と思うでしょう。
それが「大規模な暴動」に発展するのもイメージできると思います。
2021年1月には、「米議会議事堂襲撃事件」が起こりました。
今回、「同じことが繰り返されない保証」はなく、「それ以上のことが起こる」可能性は十分あるのです。
では、「大規模な暴動」は内戦に転化するのか?
はっきりわかりませんが、「可能性はある」と言えるでしょう。〉
―――
残念ながら平野さまのご質問には、明確な回答をすることができません。
なぜなら、それは「不確定な未来」だからです。
しかし、トランプがバイデンの勝利を認めないこと、大規模なデモが起こること、暴動が起こるかもしれないことは、イメージできます。
なぜなら、それは2020年、2021年にすでに起こったことがあるからです。
今回、トランプがまた負ければ、「前回以上のこと」が起こるかもしれません。
▼「内戦勃発」の可能性は、北野の妄想ではない
「前々から思っていましたが、北野さんはやはり『トンデモ陰謀論者』でしたね!」
と思われた方はいるでしょうか?
そんな人のために、一つ記事を紹介しましょう。
『CNN.co.jp』3月25日付。
『米国は新たな内戦の瀬戸際にあるのか』
です。
〈トランプ前大統領は、恐らくこれまでで最も声高に叫ぶ予言者だろう。
もし自分に対する刑事告訴が24年大統領選の敗北につながることがあれば、「国に混乱が起きる」と警告している。
最近では、見たところありふれた政治上の手続きでさえも、結果として暴力の兆しになることがある。
米連邦最高裁が1月にバイデン政権の側に立ち、連邦政府の国境監視員に対してテキサス州が設置した蛇腹形鉄条網の撤去を認めた時には、選挙で選ばれた公職者の一部から
内戦の前触れだ
と指摘する声が上がった。
24年に向けた脅威に関する声明の中で、国土安全保障省は他の脅威と共に、同年の選挙が「潜在的暴力の重要事象」になると予想している。〉
―――
トランプさんは、
〈自分に対する刑事告訴が24年大統領選の敗北につながることがあれば、「国に混乱が起きる」と警告している。〉
とのこと。
「国に混乱が起こる」というのは、「大規模な反政府デモが起こる」という意味でしょうか?
それとも「大規模な暴動が起こる」という意味でしょうか?
それとも・・・。
〈22年の著書「アメリカは内戦に向かうのか」の中で、名高い政治学者のバーバラ・F・ウォルター氏は米国の状況について、誰が想定するよりも内戦に近づいていると主張する。〉
―――
高名な政治学者ウォルター氏は、
〈誰が想定するよりも内戦に近づいている〉
と主張しています。
彼はなぜ、「アメリカは内戦に近づいている」と考えるのでしょうか?
〈原因は政治的過激主義と分極化、社会的及び文化的部族主義、大衆による陰謀論の受容、銃器並びに重武装した民兵組織の拡散、政府とリベラル志向の西側民主国家に対する信頼の衰えといった事象の有害な混在だ。〉
―――
いろいろ要因があがっていますが、ここでは
「大衆による陰謀論の受容」
ついて。
トランプさんの公約「アジェンダ47」には、
〈President Trump’s Plan to Dismantle the Deep State and Return Power to the American People〉
(=トランプ大統領のディープステイト解体とアメリカ国民への権力回復計画)
というのがあります。
@映像で確認してみよう。
トランプさんは、「ディープステイト解体」を公約に選挙戦を戦っている。
その彼を、アメリカ国民の約半数が支持している。
そして、熱狂的トランプ支持者は、彼が有罪評決を下されても、その「信仰」にいささかの揺らぎもないのです。
トランプが選挙で負けた。
彼らは、「ディープステイトがインチキした!」と心の底から信じることでしょう。
そして、数%の人は、「合法的手段(選挙)によって勝つことが難しいのなら、力でディープステイトを打倒し、アメリカを救うしかない!」と立ち上がるかもしれません。
アメリカと覇権戦争を戦う習近平、ウクライナ戦争に勝利したいプーチンは、喜んでトランプ勢力を支援することでしょう。
ウォルター氏は、加速主義にも言及しています。
〈重要な要因の中で、ウォルター氏は加速主義に言及。
それは「現代社会はもはや救いようがなく、終焉(しゅうえん)を早めなければならないという終末論的な信念、あるいは新秩序を実現するためにこそ終焉を前倒しすべきとする考えを意味する」。
加速主義は白人至上主義者、白人ナショナリスト、人種差別主義者、反ユダヤ主義者、外国人嫌い、反政府の民兵といった層に支持され、革命を高らかに呼び掛ける思想と捉えられている。〉
〈西側が崩壊の崖っぷちにいるとされる中、加速主義の支持者らは、民主主義を追い詰めて忘却の淵に落とし込むには暴力的な反乱が必要だと主張する。
破壊を前倒しすることによってのみ、白人の支配する社会と新秩序の出現が可能になる。
それが彼らの思考だ。
対立と分極化を扇動するため、暴力的な攻撃を人種的少数派、ユダヤ人、リベラル派、外国人の侵入者、権力エリートに仕掛ける。
そして既存の秩序に地殻変動的な崩壊を引き起こし、2度目の内戦を誘発するのが加速主義の常套(じょうとう)手段に他ならない。〉
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加速主義、ヤバすぎですね。
ちなみに、これも奥山先生の本に書いてあったのですが、
「米議会占拠事件」で逮捕された人の90%は、白人男性だったそうです。
しかも、「中年以上」が7割だった。
彼らの動機は「白人の権利が奪われる」という恐怖だったそうです。
〈国家安全保障会議(NSC)の元メンバー、スティーブン・サイモン氏とジョナサン・スティーブンソン氏は、北アイルランドと中東における宗派間の争いについて深い知識を有する。
彼らも同様に、米国が簡単に内戦に突入する恐れのある状況を説明している。〉
〈最も陰鬱(いんうつ)な評価はしかし、カナダ人ジャーナリストのスティーブン・マーシュ氏が22年の著書「The Next Civil War:The Dispatches from the American Future」の中で行ったものだろう。同氏は
新たな米国の内戦は避けられない
と主張している。
「米国は終わりつつある。問題はどのようにして終わるかだ」
(マーシュ氏)。〉
―――
というわけで、「アメリカで内戦が起こる可能性がある」と主張しているのは、「北野だけではない」という話でした。
もちろん、私自身はアメリカの内戦を望みません。
日本の同盟国アメリカが内戦で弱体化すれば、一番喜ぶのは、
「日本には、尖閣だけでなく沖縄の領有権もない!」と主張している中国でしょう。
アメリカ大統領選挙後の混乱は不可避だと思いますが、内戦に発展しないことを祈ります。
以上です
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追加の情報です。
「米議会議事堂襲撃事件」はディープステイトが仕掛けた自作自演とアメリカの元FOXニュースの看板キャスター・タッカーカールソンが暴露しています。
2023年03月16日
*お急ぎの方は、動画の11分25秒付近をご覧ください。
---owari---
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