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時間の問題だった中国の減速

2021年01月26日 | 政治・経済
一方、一時期は世界の工場と化して、金が貯まったと威張っていた中国が、これまた景気が落ち込み、ついに習近平国家主席も李克強首相も「中国経済は新常態(ニューノーマノル)に入った」と口にせざるを得なくなりました。早い話が「もうこれまでのような経済成長は不可能だ」「中国は中進国だ」と認めたようなものです。

まぁ、あの国の国民はまじめに働かないし、政府も具合の悪いことはすべて先送りする国です。空気は汚し放題、汚水も流しっ放し、農村から出てきた人をこき使ったあげく使い捨てにしていたのですから、こうなるのは時間の問題でした。

上海あたりは高層マンションが立ち並び、いかにも近代化したように見えていましたが、それは日本の技術や金で厚化粧していたに過ぎませんでした。

世界の工場と言われて浮かれていましたが、つくっているものは日本をはじめとする先進国のコピー製品ばかりでしたし、特権階層が地方からの出稼ぎ労働者(農民工)を低賃金でこき使い、安さを武器に輸出で利益を上げているに過ぎませんでした。

また、大学卒業者の就職率は100%だと言っていましたが、「就職できたら卒業させる」という手段で就職率を100%にしていました。そんなメッキが剥がれて地が出てきたというのが現在の状況です。

政府が発表している失業率は4%台まで上がっていますが、実態はもっとひどく、都市部では実は20%を超えているとも言われていますし、新卒大学生の80%の就職先が決まらない状態になっているとも言われ、「蟻族(ありぞく)」と呼ばれる若者が急増しています。高学歴なのですが、働くところがなく収入もないので、安アパートの一室に6~7人で暮らしている。その姿が、まるで「巣の中の蟻のようだ」というわけです。

結局、中国が経済力をつけてきたと言っても低賃金で支えられていただけで、マーケットとしても中流でしかなかったのです。だから、中国に進出した外国企業はあっという間に、より賃金の安い東南アジアの国々に逃げていきましたし、今では国有企業さえ、外国に逃げている状況です。

また、中国政府は外貨準備のドルを多く持ったことで、アメリカに揺さぶりをかけようとしました。「自分たちの力を認めなければたいへんなことになるぞ」と脅(おど)しをかけられると思ったわけです。

しかし、それはあくまで平時の話です。アメリカにはいざというときには、それに対抗する手段があります。

そもそも中国が国際間取引するとき、中国の通貨である元で決済されることはほとんどと言っていいほどありません。周辺国や地域で少しずつ元での決裁も行われるようになっているものの、まだまだ信用度の低い元は国際通貨としては通用していません。

そのため、中国企業が外資企業と貿易取引をする際には、貿易取引に関わる入出金専用に使用される外貨預金口座(外貨決済口座)を開設して、元をドルに、ドルを元にして取引を行っています。だから、いざとなればアメリカはその口座を凍結して、ドル決済ができないようにすればいいのです。あるいは新ドル札を出して旧ドル札を使えないようにするという手もあります。

そうなれば中国の他国との取引はたちまちストップして、中国は壊滅的な打撃を受けることになりますから、それが中国政府に対する強い切り札になるというわけです。

そんな中、中国は前述したように、自ら「中進国」であることを認めざるを得なくなっているのが現状で、今後、その影響力はますます落ちていくのは間違いありません。

(日下公人著書「『日本大出動』トランプなんか怖くない(2016年6月発刊)」から転載)

---owari---
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